第2章 第5話 大戦
遅くなりました!
この回で、新キャラ何人か登場させます!
それでは、お楽しみください!
昨夜のユーキとアカネの出来事から数時間後、EDF本部には、緊急事態警告のサイレンが鳴り響いていた。
遅起きのウルズが目を覚ました。
『……っんだようるせぇなぁ…………』
そのとき、ヘラの放送がはいる。
《緊急事態発生!緊急事態発生!直ちに隊員全員は注射器持参でエントランスホールまできてくれ!》
『……まじかよ……まだ朝5時半だぞ……?』
ウルズは、注射器のケースを手に取り、部屋から飛び出した。
ウルズが着いた時には、エントランスホールには、大勢の隊員、そして大量のビットが既に戦闘中だった。
他のリーダーも到着したところのようだ。
まだ日も登らない時間だ。
隊員たちの中には、すでに倒された者もいる。
だが、ウルズをはじめとするリーダーたちの目に最初に止まったのは……
『なんだ……?あの人型のヤツ……』
正確には頭がない人型だが、その容姿は、完全に人間を模したものだ。
『……少し引っかかるが……行くか……』
リーダーたちは、戦場に向かって行った。
『人型か……』
ウルズは人型と対面し、なおも不審がった顔だ。
『まぁいい、早速はじめるか!』
ウルズは腰につけた注射器のケースに手をかけようとした。
そのとき!
ビュッ…………
横側に風だけを感じたウルズ。さらに……
『ケースがない……?』
すぐさま後ろを向いた。そこでウルズの目に映ったものは、あまりに衝撃的なものだった。
『なっ………!ケースが………!』
そこには、ケースを注射器ごと握りつぶした人型のビットが、こちらを向いて立っていた。
『てんめぇ……!』
だが、さすがのウルズであっても、薬なしで戦いを挑むのは無謀である。
『グホッ……!』
いつもなら痛くもなんともない敵のパンチが、一度くらっただけで倒れそうな程の激痛を与えた。
『く……そが……』
一方こちらはイズミ。
少し向こうには軍長とアカネとユーキが。
久々の登場なのでお忘れの方も多いだろうが、彼女の得意技は居合である。見えない速さの刀で斬りつけるのだ。
もちろん、今回も例外ではない。
イズミのまわりには、まっぷたつにされたビットが大量にころがっていた。
そこへ、もう1体ビットが。
(……やけに無防備だな…………)
もちろん速攻で斬りつけた。そして、イズミが他の場所へ行こうとしたときだった。
『えっ…………!なっ……んで……!』
斬ったはずのビットが、下半身だけで動き出したのだ。よく見ると、上半身も動いている。
下半身が、動揺しているイズミに蹴りをくらわして壁へと吹っ飛ばした。
そして、ビットの体が、くっつくわけではなく、単体で再生し始めたのだ。
そして、イズミに歩みよってきた。
そのとき、彼女の目の前に、突如影が……
その人影は、二体のビットを蹴りつけ、イズミのところへと歩み寄ってきた。
(…………?)
『軍長、彼は?』
ユーキが尋ねる。
『アイツか?アイツはなぁ……』
ヘラの口元がニヤリと笑った。
『新しい戦力だ♪』
『強いん……ですか?』
『うちの隊員は現在進行系で募集中だからな。強いの入ってくればそのぶん戦力になるってわけだ。もちろんアイツも結構な強さだ。何人か優秀なのが入ってきたからな。』
『彼の名前は?』
『アイツの名前はトリコテセン。もう既にOTCまで済ませたから能力も二つ使えるぜ。』
『イズミさん、休んでおいてください。』
『……あ、ありがと……』
トリコテセンは、OTCの薬を射った。
『さ、て、と……てめぇ、復活したな。ただのビットじゃねぇんだな。』
彼はかなり頭脳明晰なようだ。
『……プラナリアとかそのへんか?復活ってことは。』
『プラナリアって……!倒せないんじゃ……』
プラナリアは、有名な方だろう。
切っても切っても再生する奇妙な生物だ。
『イズミさん、任してください。絶対勝ちま……!』
ビットの拳が、トリコテセンの腹にくいこんだ。
『トリコテセン!』
『……心配いらないですよ』
『……えっ?』
トリコテセンは平気な様子でビットの腕を掴んだ。
『ドンマイ♪』
トリコテセンがニヤッと笑った。
その瞬間、ビットがその場に崩れ落ちた。
『なにが……起きたの……?』
トリコテセンの体が赤く染まり始めた。
『カエンタケ、って知ってます?』
トリコテセンの、あまりにいきなりの質問に、イズミは一瞬うろたえた。
『それが俺の能力っす。』
そう言うと、トリコテセンはもう一匹の方に近づく。
ビットが繰り出してきた拳を受け止めた。
『……終わりだな』
そのビットも、その場に崩れ落ちた。
『苦手な敵は倒しましたよ。もう立っていいですよ。』
『……なんだ、気づいてたの?』
『もちろん』
『よっ……!』
イズミは、何事もなかったかのように立ち上がり、辺りを見回した。
ちなみに、トリコテセンの能力"カエンタケ"についての説明もしておこう。
名前を見ればわかるように、キノコである。
その"火焔茸"の名の通り、色は真っ赤だ。
一説には、世界一強力な毒キノコである。
弱い人なら、触っただけでかぶれるほどの強力さだ。
そんなのを、人間大でコピーしてしまえば、ビットなどそれこそ手で触れて少し毒を出すだけで倒せてしまうのだ。
『そういえばさっき"何人か優秀なのが"っていってましたよね。他のはどこにいるんです?』
『あぁ、一人はウルズのとこ、あとの二人はペア組んでやってもらってるよ。』
『ウルズて……いらないでしょ。』
『ま、念のためだよ。』
数々のビットの残骸、その中にたたずむ一人の大柄な男。
すると、どこからかパチパチと拍手の音が。
『すごいね……これじゃあ来る必要なかったね。』
高い声。ニコッと微笑むその顔は、まだ幼さの残る顔。背は低く、ざっと150cmぐらいだろうか。短めの髪を髪留めで留めている。目はパッチリで二重。
……なんというか、女子がこうなりたいって思う感じの人物だろう。
作者は男だからホントかどうかわかんないけど。
『…………誰だテメェ……』
ウルズが振り返る。その目は、もとの彼の黒く、澄んだ目とは違い、青く、邪気の見え隠れする目だった。
『名前?アオイっていうの。よろしくね。』
『……おう』
ウルズの目が、徐々にその澄んだ黒色を取り戻し始めた。
『初めて見る顔だな……』
『最近来たばっかだからね。それより……』
アオイは注射器を取り出した。
『はい、あげる。』
『……ありがと。で、お前は既にどっちも射った、と。』
『そのとーり!じゃ、協力だよ!協力!』
『はいはい。』
ウルズは生返事を返し、薬を射った。
『で?そのアオイって人の能力は?』
ユーキが疑問を突きつけた。
『あぁ、アイツの能力は…………』
アオイの能力を目の当たりにし、ウルズは驚きを隠せなかった。アオイがビットに触れただけで、そのビットは破裂して粉々になったり、炎に包まれて焼け焦げたり、体をまっぷたつに切断されたり、とにかく様々な状態で倒されるのだ。
『どしたの?ウルズ君?』
『……なあ、お前の能力ってなんなんだ?』
『あぁ、それはねぇ……』
『"エネルギー"だ。』
ヘラが言った。
『エネルギー?』
聞き慣れてはいるが、意味を詳しくしらない人が多いだろう。
ユーキも首をかしげている。
『"熱"とか"光"とかそんなの?』
アカネが聞いた。さすがは───────
『さすがは頭脳トップなだけのことはあるな。』
……先に言われちゃいました。
『その通り。アイツの能力はそのエネルギーを自由に操ることができるというものだ。"核エネルギー"の作用でビットのコアを破裂させることだって、"熱エネルギー"の作用で燃やすことだって、"光エネルギー"の作用でまっぷたつに切断することもできる。』
『おぉ……って最強じゃん。』
『そうだ。だからこそウルズと組んでもらった。』
それはなぜか。
『なにがあるかわかんないからだ。』
『……まぁね。』
『"油断"は死を招くからな。』
『ウルズならありえますね。』
『それもしウルズがやられたら絶対ヤバいでしょ』
『まあな。だが、"油断"の他にもに死を招くことはある』
『えっ……?』
アオイとウルズは未だ戦闘中だった。
『調子はどうだぁ?』
『絶好調だよっ!』
倒しても倒しても次から次へと湧き出てくる。
そして、アオイが光エネルギーで一体のビットをまっぷたつに切った、その瞬間だった。
ドッ……!
『えっ…………は……ッ……?』
アオイの腹を貫いたのは、ビットの手だった。
『……"無知"、要するに"知らないこと"もまた、死を招く。』
『どういうことですか?』
『たとえば、アオイが光エネルギーでプラナリアを切って、そのまま他の方に集中を向ければどうなる?』
『あっ……!』
『そういうことだ。』
"敵を知り、対応できる"───これが他の生物にはない人間の強みである。となると、やはり知らないことに対しては、どこかスキができることになる。
『だが…………』
ヘラは、まだ何か続けている。
『それは同時に、敵の側にも言えることだ。』
『……えっ?』
『あいつらは、敵のビットたちは、まだアオイという人間の本当の強さをしらない……』
アオイの薄い胸板を貫いたのは、紛れもなく今切ったはずのビットの手だった。
『アオイ!』
ウルズの叫び声が響く。だが、そんな心配など無用だった。
アオイは、ビットの上半身と下半身の両方をつかみ、そのまま焼き尽くした。
『アオイはAMSOの能力も充分強力だが、OTCの能力も、かなりの強力さだ。』
それは────────パワー、スピード、硬さ、しぶとさ、この全てを兼ね備えた、世界一の"嫌われ者"─────
『─────ゴキブリだ。』
『…………お前すげぇな』
『そう?』
アオイはニコッと笑顔を見せた。
二人は背中合わせに座り、話をしていた。
ウルズの側のビットは、ボコボコに殴られて死んでいるだけで、形は判別できる程度だ。
それに対してアオイの側は、粉々の者、黒焦げの者など、形の判別がしづらい。
だが、どちらの側にも共通するのが、その数がとてつもない、ということである。
そして、二人の体中の傷からみて、いかにこの戦いが凄まじかったかがわかる。
『まっ、とにかくおつかれさん。』
『はい!』
『そういえば……』
ユーキは何かを思い出したかのように言った。
『他の二人の能力は……?』
『あぁ、そーいや忘れてたな。』
もう戦いも終わり、自分たちの部屋にもどる途中の三人。
『アオイの能力のゴキブリは、総合的に見れば最強だが、その性能ひとつひとつについては……他にも最強がいる。』
『へぇ……』
『まず硬さ。』
ヘラは、質問の答えとは全く関係のなさそうな話をし始めた。
『硬さでは、イズミの能力が最強だ。』
『おーー!』
横で聞いていたアカネが小さく拍手をした。
『そして、速さ、脚力、この二つの最強が、さっき言っていた二人だよ。』
『ホントに優秀なのが入ってきたんですね。で、名前は?』
『速さの方がザック、脚力は……』
このとき、ヘラはなぜかアカネの方を見た。
『?』
このとき、まだアカネは意味がわからなかった。
『クレナイってゆーんだ。』
そのとき、アカネ、そしてユーキもハッとした。
『やっぱりな…………』
『……今夜あたりに突撃だ。』
『『『『はい。』』』』
『じゃあ……準備しとくんだぞ。』
満天の星空は、今日も輝いている。
もうすぐ…………戦いは始まりを告げるだろう…………
あの人対あの人の戦いは次号の次号ぐらいになりそうです。
だいぶかかると思われますが……
楽しみにしておいてください。