第2章 第4.5話 星に願いを
第4話の数日後のお話。
アカネのユーキを描いた短編です。
とってもロマンチックですよ!
ではお楽しみください!
研修会の事件の数日後、OTCは、すでに実用化されていた。隊員たちはいつもながらトレーニングに励んでいた。ヴァンパイア、イズネの2人がやられたことにより、班体制は解体され、現在組み直されるところだ。
リーダーたちは、軍長室に集められていた。
『ここ最近何も起こってないが、油断はしたらダメだぞ。いつ来るかわからないから怖いんだ。で、班体制はどうするか……』
『ランキングの順位的には今んところアカネが1番下だからネ!』
『俺1番上!』
『まぁたしかにそこは重要だね。』
『ウルズ一人でいいんじゃない?』
『なんでですか!』
『ハハハ、冗談冗談。』
みんな口々に喋っている。
この会話だけで誰が誰かわかる?わかればすごいよ。
『まぁお前ら落ち着け。だいたいは俺が決めたから、それを基準に入れ替えたりしな。』
『『『『はーい!』』』』
なぜか今日はみんなテンションが高い。
とかいって話し合っている間にあっという間の日没。
『よし、今日は解散!じゃ、また明日!』
リーダー達をはじめとする隊員全員は、自分たちの部屋へ戻っていった。
みんなが寝静まった、深夜ちょうど0時ごろのEDF本部前の広場。噴水の脇にあるベンチには、誰かが座っていた。するとそこに、もう一人の人影が。
『…………おう、アカネじゃんか。』
『あれ?ユーキ?どしたの、こんなとこに座って。』
『いやぁ……ちょっとな……』
アカネは、ユーキと一人分ほどの間を空けて座った。
少しの沈黙が続いた。木々や草花は、冬の夜のつめたい風に吹かれて揺れている。
噴水とその音以外は無音の世界。そこはまるでどこか他の世界のような、そんな場所だった。
頭の上には星が輝いている。
『……星……きれいだね…………』
アカネが沈黙をやぶってユーキに話しかけた。
『……そうだな……まるで……この前までの戦いが嘘みたいだ…………』
『……ユーキ……』
『なんだ?』
アカネは少し間を空けて言った。
『怖いの…………?』
ユーキは黙ってうなづく。
『……だよね……アカネも眠れなかったんだ……いつ終わるかも……いつ死ぬかもわかんない戦いだから……』
『みんなそうなのかな…………?』
『多分……そうだと思うよ…………』
再び沈黙が続いた。
静かな、とても静かなその場所は今、二人だけの場所。
今なら………………
『…………ね、ねぇ……ユーキ……』
アカネがゆっくりと口を開いた。
『…………ん……?』
アカネの胸の鼓動が、徐々にはやさを増していく。
『あのね…………』
もう胸の鼓動は、ユーキまで聞こえるほどにまで大きく、はやくなっている。
その瞬間、風が一瞬強くなり、木々のざわめきが増す。
『ユーキは…………アカネのことどう思ってるの……?』
あまりに唐突すぎる質問に、一瞬言葉を失ったユーキ。
だが、アカネと同じくはやくなっていく胸の鼓動をおさえ、落ち着いて答えた。
『い、いい人だと思うよ。優しいし、勉強も運動もできるし、明るいし…………』
『そーゆーことじゃなくて!』
アカネが少し大きな声で、叫ぶように言った。
『…………え?』
『だから……その……』
お互いの鼓動はピークに達している。
『一人の……女として……ってこと……』
『……え…………』
何と答えればいいか、ユーキは戸惑った。
『正直に答えて……』
アカネはユーキを見つめ、いつもと違う真剣な眼差しで言った。
『ぼ、僕は…………』
大きくなる鼓動、荒くなる吐息、熱くなる顔、果てしない緊張がユーキの体中に込み上げてきた。
『アカネが…………ずっと好きだった……』
『それを聞けて嬉しいよ……』
『アカネ……』
『ユーキ……』
二人は静かに目を閉じる。
二人の間の隙間は、いつのまにかなくなっていた。
お互いの唇は、磁石のように引き合った。
そして……
『……んっ……』
二人は抱き合い、それぞれの唇を触れ合わせた……。
────────どれくらい時間が経っただろうか。
まだ二人は、ベンチに座って話していた。
『……で、そこで僕が一発かましたわけよ!』
『アハハッ!そのタイミングで!?』
『そそ!ほんとに驚いてたよ!』
かなり話は弾んでいるようだ。
『ハァ、笑いすぎてお腹痛い!』
『笑いすぎだな!』
『なんかありがとね!おかげで怖かったのなんか吹っ飛んじゃったよ!』
『おぉー!そりゃよかった!』
『でもほんとありがとね!』
『こちらこそ……その……キスまでしちゃってさ……』
『今思い出すとちょっと照れるね』
『ヘヘッ、なんならもう一回……?』
『……じゃあ…………』
二人は再びゆっくりと抱き合い、甘い口付けを交わした。
『……んっ…………プハッ……じゃ、そろそろ部屋に戻って寝ないと……体力が……アハハ』
『そうだな、ありがとな、アカネ』
『うん……明日も……何もなければいいけど……』
『そうだな……』
そのときだった。
二人の頭上をいくつもの流れ星が。
『おぉーーーっ……』
『願い事した?』
『うん!早くこの戦いが終わりますようにって!』
『……願い、叶うといいな』
『ユーキは?』
『僕?ぼくはね……』
ユーキはそらを見上げて話した。
『世界が……いつかまた……昔のように平和になりますように、って……』
『いつか…………叶うといいね……』
『戻ろっか、いいもの見れたし。』
『うん、おやすみ。』
このときまだ誰もしらない。
次の朝、多大な被害がでることを。
このときまだ誰もしらない。
ビットの本当の怖さを。
このときまだ誰もしらない。
彼の……行先を……
では、次話ではいよいよあの人との戦いかもです!
あくまで予定ですが。
お楽しみに!