第2章 第1話 新たな仲間と新たな戦い
『ここがEDF軍総本部か……。』
本部の前に、がっしりとしたカラダをもつ、どこか見覚えのある顔の男が立っている。
『父さん……あんたの仇は……俺が必ず…………』
そう言い、彼は本部へと歩を進めるのであった……
ヘラたちEDF軍の活躍で、ひとまず危機は去った。人々は普通通りの生活を取り戻しつつある。
『ふあぁあ、ねみぃな。』
『おはようございます。軍長。』
『おう、調子はどうだ?』
『お陰さまでだいぶよくなりましたよ。』
『そうか、よかった……』
─────ヘラには、まえの事件以来、気になっていることがあった。メイダーが、意識をなくす前にこんなことを言っていたのだ。
『機械兵が……やられ…たって……まだ次がある……。これで終わりだと……思うな……。』
次ってなんだ。また機械兵か?いや違うな、なんだ?ヘラがいくら考えても、わかりそうになかった。
『やっぱ気になってるんすか。』
このことは、生き残った隊員全員が知っている。ヘラが全員に、極秘情報として話したのだ。
『軍長、お客さんですよ。』
『わかった、すぐ行くよ。』
ヘラは部屋をあとにし、軍長室へと向かっていった。
ガチャリ……部屋のドアが開く。そこには、一人の男性の姿が。カラダも、全体的にガッシリとしている。いかにも戦闘向きのカラダつきだ。そして、顔を見ると……かなりイケメンである。
……いや、言いたいのはそんなアホらしいことじゃあない。どこかで見たことがある。そんな気がしてならない。ヘラにはそう感じた。
そのとき、頭の中のある人物像と姿が重なる。
─────感覚は、気のせいではなかった。
『お……お前……イース……か?』
そっくりなのだ。13年前に死んだはずの戦友に。ヘラは、自らの目を疑った。
彼は、それに応えた。
『違います。俺の名はウルズ。イースの…息子、EDF軍の志願者です。』
ヘラは一瞬なにがなにかわからなかった。全てを理解ししたとき、ヘラの目には涙が浮かんでいた。
『あの……イースの息子が……今俺の目の前に……!』
ヘラは目を擦り、1つ咳き込むと、再び口を開いた。
『よく来たな、ウルズ君。じゃあまずはここのシステムの説明をしよう。』
ヘラは冊子を一冊渡す。
『では、最初のページを開いてくれ。ここに書いてあるのは………………』
説明が続く。その後ろには、ヴァンパイア、イズミ、イズネの3人が、その様子を眺めていた。
『さ、さっき軍長泣いてなかったか?』
『切り替え早すぎでしょ!ねぇ?お姉ちゃんもそー思うよね!』
『フフフッ、まぁね。でも───────』
イズミは続ける。
『軍長、嬉しそうね。』
『そらぁ昔の戦友の息子が来たんだ。嬉しいだろうな』
『ねぇねぇ、これでもっとここも賑やかになる?』
『フフッ、なるかもね。』
『やったぁ!』
『元気だなぁ、お前』
『エヘヘヘ』
すると、ヘラとウルズが立ち上がる。
『いきなりだけど、これから例の手術をするからな。』
『はい。』
ウルズは、そのカラダつきの割には、かなり冷静な様だ。手術室へと向かう。
手術室に着いた。
『さぁここだ。』
『……あの、成功率ってどれくらいなんですか?』
誰もが気になる、当然の質問である。
『うーん……詳しくはわかんねぇけどだいたい20%ぐらいじゃねぇか?』
『えぇっ!?ほぼ助からないじゃないですか!』
ウルズは相当焦っている。
『ハァ、冗談が過ぎますよ、軍長』
イズミが言った。
『ほんとは70%ぐらいでしょ。』
『えっ……さっきの嘘だったんですか?』
『ハハハハ!すまんすまん!冗談がキツすぎたな!』
『もお……やめてくださいよ……本気でビビっちゃったじゃあないですか。』
『緊張がほぐれたろ?さあ、行ってきな』
『はい!』
ウルズが手術室に入り、手術が開始した。
『……………………ハッ!ここは……』
『病棟だ。手術は無事、成功だ。ほら、これがお前の能力の説明書きだ。』
『それって最初からわかるもんなんですね。』
『最近になってだよ。前は使ってみるまでわからなかったんだがな。高性能になったもんだな。』
ヘラはそう言うと、病室から出た。
『あとでまた来るよ。クスリは一応置いといたよ。体調良くなったら訓練も参加していいからな。まぁくくれぐれも無理しないようにな。』
『ウイッス。じゃあ、またあとで。』
『おう、またあとで。』
『調子はどうだ?』
B352号室、フレイの病室である。
『まぁいいにはいいんですけど……』
『ん?なんか変わったことでもあったか?』
『なんか……胸の辺りがさっきから痛いんですよ。』
『大丈夫かよ。』
『ゴホッゴホッ、グッ……胸が張り裂けるみたい……』
『おい……おい!大丈夫か?』
返事はない。気づけば、フレイの息はなかった。
『な……なんで……』
急に、フレイの胸が裂ける。
『……は?』
ヘラは目を疑った。当たり前だ。彼の目の前では、現実では、普通、決してありえないことが起こっているのだから。
割れたフレイの胸からは、真っ黒の、怪物が……
『緊張事態だ!』
ヘラは、通信機で伝える。放送が、建物中に響く。
その怪物は、首がない人間のような姿で、腕は異常に細く、先にいくにつれ、徐々に太くなり、手は、人間と同じ形だ。そして、真っ黒なカラダに目が二つ。大きさはかなりの大きさがある。完全に化け物である。
『くっそ……やるしかねぇか……』
ヘラはクスリを取り出した。
だが、目の前の敵は、後ろの壁を突き破り、出ていった。
『なんだったんだ?』
ヴァンパイアたちが駆けつけた。
『逃げられたか。』
ヘラの背筋に寒気が走る。
──────────あの言葉が頭をよぎる。
《これで終わりだと……思うな……》
──────────メイダーの言葉だ。
『やな予感がする……』
『軍長のやな予感はあたるものね……』
『また戦争するのぉ?もーやだよおーー。』
『軍長、戦力はそろってます。どします?』
ヘラは、少し考えて答えた。
『大丈夫だ。今はまだ、戦うときじゃない。』
ヘラは通信機の電源を入れ、放送を始めた。
『みんな、敵は逃げやがった。 訓練に戻っていいぞ。』
隊員たちはまた、いつもの訓練に戻った。
────────だがこのとき、知るものはいなかった……
────────戦いがすでに、始まりを告げたことなど……