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AGGRESSION  作者: TIGER
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第1章 Earth Defence force


第1章 Earth Defence Force


第1話 七一一事件とAMSO




『よし、戦力はそろったな。じゃあみんな覚悟をきめろ。…………さあ……出陣だ。』

─────────話は10年以上まえに遡る。

ヘラとイース、この二人の戦士は、ゼウスのすすめをうけ、彼の部下の研究グループが発明した、対機械兵手術、通称AMSOをうけることになった。この手術は、襲ってくる機械兵、要は宇宙人なのだが、それに対抗するための力を得る手術である。

つまり、七一一事件とは、宇宙機械兵の侵略だったのだ。このことは事件よりもかなり前から予測されてた。だから、この手術も対策として生み出すことができたのだ。

この手術は、己の身体能力を高め、ときに様々な特殊能力も授ける。ただ、成功率が低く、ずいぶん精度があがった今でも42%、おそらく彼らのときは30%に満たかったと思われる。そんな確立を、奇跡的に二人とも成功したのである。

ちなみに機械兵はというと、容姿は、丸めな顔に大きい目が二つ、虫みたいな顔、からだはちっちゃくて、だいたい1メートルくらい。これだけなら怖くないが、攻撃が特長的。素手の攻撃の他に、火を扱う者、冷気を扱う者、電気を扱う者がいる。そして恐ろしいのがその数である。相当な数で攻めてくるのである。

だが、ヘラとイースのかつやくで、人類の危機は一時は去った。

だが、また攻めてくることが予想される。

だから、七一一事件を戦いぬいた彼が、世界中から希望者を集めて、"Earth Defence Force"通称EDF軍を創立していまに至る。

まずは手術と、敵の説明があり、それでも希望するというものには手術をする、という流れである。

手術成功者はその日から、特訓の日々がはじまる。

機械兵が攻めてくる、その日まで……








第1章


第2話 初陣




そしていよいよその日がやって来た。

EDF軍は、総勢126名。この人数で、戦いにむかうのだ。

『覚悟をきめろ。』

軍長であるヘラはそういった。

『いよいよ最初の戦争だ。敵は相当な数で攻めてくる。だが、お前らなら、自信を持てば、大丈夫だ!』

そういい放ち、彼は全員にあるものを配った。

注射器である。

『これは、お前らが手術をうけて授かった力を発揮するためのクスリだ。戦うときは必ずこれを射て。わかったな?』

そして彼は、扉を開いた。

すると外には────────すでに機械兵が何百体と町をうろついていたのだ。

『ここからは単独行動だ。自らの力で、機械兵どもを倒していくんだ。…………いいかお前ら……死ぬなよ……?』

すべての隊員は注射を射った。そして、戦いは始まってしまった……








第1章


第3話 戦争




多くの隊員が倒れていくなかで、ルシファーは、まだ余裕の表情であった。126人いた兵も、すでに10人足らずに減っていた。いくら倒しても、減る気配のない機械兵どもに、全員の気が滅入っていた。

…………ただふたりを除いては。ヘラとルシファー、この二人は、なにも滅入ることなどなく、ただただ、目の前にいる相手を倒していった。そして、もう300体は倒したであろう時、ようやく機械兵が撤退したのか、全滅したのか、とにかく、いなくなったのだった。

ほんとに二人とも胸を撫で下ろした。気づけば二人以外は全て死に絶えてしまっていた。

と、そのときだった…………ヘラの背後から、突然火が放射された。まだ機械兵が残っていたのだ。

ヘラは死を覚悟した。だが、火の感覚がしない。そして、気づけばルシファーがいない。まさかと思い、後ろを振り返った。すると…………

そこにはヘラをかばって火に焼かれたルシファーの姿があった。

『ル……ルシファー……嘘だろ……』

ヘラは13年前を思い出した。

『あのときと……同じだ……俺は……また同じ過ちを……』

ヘラの頭は真っ白になった。

自分のせいで、また人が死んだ。その事実がたえられなかった。彼はその場に泣き崩れた。

『俺にっ……!俺に力がないばっかりにっ……!また……また人を死なせてしまったっ……!』

もうどうしようもない衝動にかられ、自ら命を絶とうという考えも、頭をよぎった。たがその時、頭の中で、イースの声がした。

『…………お前が死んだら、世界の誰が世界を救うんだ……生きろ、ヘラ。お前なら……また立ち直れるはずだ。』

ヘラは、涙をぬぐい、ルシファーを抱き抱え、EDF軍本部へと歩をすすめるのであった。








第1章


第4話 希望の第二期




『これより、第2期EDF軍、入隊式を執り行う!一同、礼!』

ヘラの声だった。

ヘラは前の反省を生かし、より強力な軍を作り上げることを決意した。チームプレーで戦うようにし、AMSO手術はより高精度に改良した。

……ヘラは、前回の戦いで、あることを学んだのだ。

それは…………戦いは犠牲者なしには終えることは出来ないことである……。そして、大切なのは、どれだけ犠牲者を最小限に抑えるか……だと。

チームプレーにはリーダーが必要だ。なので、EDFランキングの上位のものをリーダーとし、それぞれのチームを作るのだ。

ちなみにEDFランキングとは、機械兵を倒す能力が、どの程度あるかをランキングにしたものだ。


そして、さまざまな特訓の末、今期のリーダーに選ばれたのは、、、、

ラファエル(ランキング1位)、ヴァンパイア(ランキング2位)、イズミ、イズネ姉妹(ランキング3位と6位)、バルハラ(ランキング4位)、ティナトス(ランキング5位)、そしてもちろんヘラ(軍長)。この7人である。

イズミ、イズネ姉妹は二人で1チームなの全部で六チームである。そこに、バランスよく、隊員が振り分けられていく。

─────────戦いは、もうすぐそこまで来てしまっている……。








第1章


第5話 ニ度目の出陣




EDF軍本部に、サイレンが鳴り響く。

緊急出動命令である。

機械兵の大群が、突如現れたのだ。

『わかってるな?チームプレーだ!リーダーの指示は絶対だぞ!そして、戦うときはクスリを絶対忘れんな!』

ヘラの叫び声が響く。隊員の中には、冷静な者、慌てている者、震えている者、さまざまな人がいる。

『さぁ……出動だ……』

ヘラは少し間をあけ、

『……死ぬなよ………………』

こう呟いた。あの日とおなじ過ちは二度と繰り返したくはない。この言葉からは、そんな思いがひしひしと伝わってきた。

『任せてください。絶対帰って来ますよ……』

さっきのヘラの言葉は、耳のいいイズミには聞こえていたようだ。

その言葉をきいて、

『ありがとう……』

と呟き、響き渡る大きな声で号令をかけた。

『チームに別れたな?よし……出動だ!』

全隊員は、戦場へと、足を踏み入れたのであった…………








第1章


第6話 対機械兵用機械兵




もうどれぐらいの時間、戦い続けているのだろうか。各チームで、もうすでに何人もが倒れている。通信手段は、各リーダーが持つマイクのみである。

『ザザッ……ザザッ……ブッ こちらはヘラだ。バルハラか?』

『はい。どうしました?』

『そっちはどうなっている?』

『今のところ敵の気配はないですね。』

『そうか、わかった。引き続き捜査を続けてくれ。くれぐれも、気は抜くなよ?』

『はい、 了か……なっ!ぐわぁぁっ!』

『大丈夫か!おい、バルハラ!』

ヘラの血の気がひいた。だがそんな心配も束の間、

『大丈夫っす。不意討ちでビビっただけです。一旦切りますね。』

『……あぁ、健闘を祈る。 ブッ』




『ハァ、ハァ……』

不意をつかれたバルハラのチームは、なんとか態勢を立て直し、機械兵と対面していた。

『さぁ……こいよ……』

バルハラのチームのメンバーと、機械兵とは、両者完全に臨戦態勢だ。

全員注射は射った、はずだった。

隊員のユーグは気付いていた。

『リーダー……クスリは……射ったんですか?』

隊員全員は、何を言っているんだ、と思っていた。だが、バルハラの口からは、意外な言葉が発せられた。


『射ってねぇぞ。』


その場に一瞬の沈黙が走った。

ユーグが再び口を開く。

『は、はやく射たないと!殺られます!』

『気にするな。それより目の前の敵に集中するんだ。』

『いや、そんなことより早くクスリを!』

隊員全員が困惑する中、ただ一人だけ冷静な者がいた。

このチームでバルハラに次ぐ実力者、EDFランキング8位のゲイトである。

隊員たちは、まだ戸惑っている。

『……ったく……』

ゲイトがしびれを切らした。

『おい!てめぇら!ブツブツほざくヒマあったら機械兵の一体でもブッ倒したらどうなんだ!それに……!』

『落ち着けゲイト。』

バルハラが制した。

『こいつの言う通りだ。』

……バルハラがそう言った瞬間、機械兵の一体が、バルハラに向かって飛びかかってきた。

クスリを射っていない彼に、勝ち目はないと、誰もが思った。全員が目を背けた。

その時だった。閃光、爆音と共に、機械兵の体が吹き飛んだ。

何が起こったのか理解できなかった。だが、各々が徐々にそれを理解し始める。

バルハラの手から、煙が出ている。その様子を見れば、何が起こったのか誰にでも容易に想像できる。

『さぁどうした……かかってこいよ、この鉄屑どもが』

彼は、クスリなしで光線を出したのだ。

なぜか……

『まさか……サイボーグ……?』

隊員の一人、プルーブは呟いた。

『フッ……ご名答だ。』

ゲイトが初めて笑みを浮かべた。

『クスリなんかいらねぇよ。燃料があればいいんだ。』

バルハラも少しの笑みを浮かべて言った。

隊員の一同は少し安心した顔になり、戦いは始まったのであった……。




バルハラは、ヘラと連絡をとっていた。

『はい、死者は……えっと……三人です。あと重傷者が二人、あとは軽傷か無傷です。』

連絡をとるバルハラの周りには機械兵の残骸が散らばっている。

『特に変わった形のヤツはいなかったです。はい、はい、了解です。』

他の隊員はまだまわりを警戒している。

『あ、それより隊長、なんかさっきからね…………』

バルハラは声を潜めた。

『……西の方から異常な生物反応があるんです。』

それにはヘラも驚いた。

『隊員ではないことはわかります。しかし人間ではないとは言い切れません。どうしましょうか。』

ヘラは調査を頼んだ。

『わかりました。行ってみます。』

チーム全員は、移動手段である巨大な車に乗り込み、その場所へ向かうのであった……………。




……焼け焦げたいくつもの死体。隊員が付けたタグには、[Team Tinatos]……チームティナトスと書いてあった……。何が起こったのか……。

チームティナトス隊員リーダー含め18人、全滅である……。








第1章


第7話 最速の男




一方おなじ時間のヴァンパイアチームは……

『機械兵、いたか?』

『いえ、気配すらありません。』

『そうか。まぁそれが一番いいんだがな、ハハハ。』

ヴァンパイアと、隊員のマーグは他愛もない会話をしている。

『まぁでもこのままってのも、な。誰か外に調査志願いるか?いねぇか、ハハハハ。』

かなり明るいリーダーだ。そこに3つの手が挙がる。

『え、まさか志願者?すごい勇気じゃん。みんな拍手ー!』

パチパチパチ……かなりまばらである。

志願したのは、リンド、タクス、メリーゴの三人だ。

三人とも、優秀とまではいかないが、かなりの実力者である。ランキングも、順に、19位、20位、16位、と、高めである。

『えっと……じゃあマーグ、ついてけ。』

『ハァッ!?俺っすか!?』

急すぎて、おどろきを隠せないマーグ。

『いくらランキングが良いこいつらでもさすがに危ないよ。お前が守ってやれ。』

『ったく……わかりましたよ、もー』

『すまねぇな、マーグ。』

マーグのランキングは9位。かなりの実力者である。彼がついていけば安心だと考えたのだろう。

『じゃあ行ってきますね。』

『おう、気をつけてな。』

そして、マーグたちは出発した。このあと彼らの身に何があるかも知らずに……




『ほんとになんもねぇなぁ……』

緊張感ゼロである。マーグはため息をついた。

『つまんねぇな』

『『『はい。』』』

他の三人は口をそろえて言った。

──────その時だった……

いきなりタスクの首がとび、リンドの腕に、切り傷が入る。

『ちっ、敵のお出ましか。』

マーグはクスリを射った。

『変わった形だな。メリーゴ!隊長につたえてこい!』

メリーゴはあとに戻っていく。

その瞬間、リンドの胸が貫かれる。

『くそっ、リンドまで!』

敵がいきなり目の前に現れる。

ドゴォ!

マーグの拳が、敵の顔に炸裂した。

『結構頑丈だな。フンッ!』

マーグの蹴りが、敵の脳天に炸裂。

『……なんだ……この感触……』

全く手応えが……というか足応えか?がまったくない……と思った瞬間……




『隊長!隊長!』

『おぅっと?なんだぁ?』

『変わった形のヤツが現れました!』

『どんなヤツだ?』

『えっとですね、手が…………えっ?』

いきなりメリーゴの体が真っ二つに切断された。

『……コイツか。』

そこには少し、背の高い、細めの機械兵が立っていた。

その手には……

『……マーグ……』

その手には、マーグの頭が、頭だけが握られていた。

『良い度胸してんじゃねぇか……4人とも殺りやがったのか。』

ヴァンパイアはクスリを射った。

『お前ら下がっとけ。』

彼の怒りは背中を見ればわかるほどだった。

『マーグが殺られるとはおもってなかったよ。』

ヴァンパイアは下に下りた。

その瞬間、機械兵が腕を振り上げた。腕には短刀を持っている。

『道具を使えんのかよ!』

ヴァンパイアが着地する瞬間、短刀を振り下ろした。

──────空振りだった。

ヴァンパイアの姿はいつのまにか消えていた。

ただ本当に消えたのではなかった。少し向こうにその姿が見える。よく見ると、手に何かもっている。

機械兵の手だ。何が起こったのだろうか……。

『そんなのろまな動きで俺を殺せると思うな。』

次の瞬間だった。

ズギュウウウウ……ドガァァ!

風を切る音とともに、数十メートル向こうにあったヴァンパイアの体はいつのまにか機械兵のところに、そしてその体にとてつもない蹴りを入れていた。

機械兵の体は真っ二つに割れ、中から様々な電子回路やらが飛び出ている。

『……このクソどもが、死にてぇヤツからかかってこいよ。』

もうなにが起きたか理解した人も多いだろう。

タイトルからもわかるように、彼の能力はそのスピード。一歩目から150km/hで走り出せるので、攻撃をかわすことなど容易い。さらに、そのスピードから繰り出す攻撃は、通常よりも、もちろん大幅に破壊力が上がっているのだ。攻守両方で抜群な彼。その強さは計り知れない。

『ほら、殺れるもんなら殺ってみろよ。あいつらの仇は俺が打つ。』

これが………………EDFランキング2位である。








第1章


第8話 The Function Stopper




『くっそ……何匹いる?』

『1、2、3…………ダメだ、数えきれません。』

ラファエルチームである。ため息をつきながら、ラファエルはクスリを射った。

『囲まれてないだけマシか……』

ラファエルは車から降り、

『お前らはそこで待っとけ。』

と、大声で言った。

『メイダー、ジン、カンカ、ウォーム、ヨージ、ギル、ジュデムス、フォーグ、リオ、カーネ、ノア、サーネ、ネレッド、フレグランス、サフィルド、クリムソン。16人全員、絶対全員守るからな……』

隊員たちには聞こえない声で呟いた。


機械兵が一体、飛びかかる。ラファエルは手をかざした。すると、機械兵の動きが止まった。そして、そのまま地面に落下した。おそらく、ラファエルの能力である。

『めんどくせぇな……まとめて機能を停めてやる。』

ラファエルは、強く手を合わせ、そのまま手を離していった。すると、彼の手から、電撃が出ている。そして、向かってくる敵に見向きもせず、その手をそのまま地面に叩きつけた。

地面に電撃が走る。敵は、すべて機能を停止させた。

特殊な電撃、彼の能力である。機械兵と同じ作りであるバルハラの機能を停止できるように作られた電撃である。無論、すべての機械兵は、この電撃によって機能を停止する。ちなみに、いや当たり前のことなのだが、普通と電撃での攻撃も可能である。

『よし。お前ら無事かぁ?』

後ろを振り向くと、車には隊員が待っている。はずだった……

車には幾つもの死体。

『なんで……』

隊員のものだ。

『だれがこんな……』

言いかけたところで、後頭部に衝撃が走る。

『さすがに隊長でも後ろからの衝撃には弱いようね。』

『なんだ、おもしろくない。』

『もっと抵抗あるかと思ったのになぁ。』

『お前らなぁ、仮にも隊長だぞ?もっと他に言葉はなかったのかよ。』

それは明らかに聞き慣れた声だった。

薄れ行く意識の中でも、誰かはハッキリとわかる。

(メイダー……カーネ……サーネ……クリムソン……なん……で…………)

『悪いね、隊長。……さようなら。』

4人の声は、もう聞こえない。

ラファエルは、もうニ度と目覚めることはなかった……








第1章


第9話 背中合わせの武術士




『ったく、そんなんじゃお姉ちゃん負けちゃうよ!』

『あんたこそ!これはひどいでしょ!』

リーダー二人がケンカである。

『ハァ……大丈夫か?』

隊員の一人、フレイがため息をつく。

ご承知の通り、イズミ、イズネチームである。

『もう……なんでケンカしてるんですか。』

フレイが割って入る。

『イズミが私のケーキ食べたのよ!』

『………………』

一同、言葉もでない。

『まあまあ、あとで僕が新しいの買ってあげますから。』

『ほんと!?』

『イズネもーっ!』

『あんたは食ったでしょ!』

『ぶうぅぅぅっ!』

『まったく……あなたたちは子供ですか。』

『『すいませーん』』

そこだけ口がそろった。

なんともほのぼのとした雰囲気だ。戦闘前とは思えないほどである。


─────────ただ、これはほんの数分前のお話だが。




……周りには敵。完全に逃げ場はない。

『イズネ!クスリ射ったか?』

『当たり前じゃん!お姉ちゃんは?』

『心配しないで、もちろん射ったわ。フレイは?』

『心配ご無用ですよ。』

『よし、じゃあ大丈夫だ。イズネ!フレイ!そっちは任せたよ。』

『うん!』『はい!』

イズミは腰に刀を、イズネは手に弓矢をもっている。

車の前方にはイズミ、後方にはイズネ、そして車の護衛としてフレイ、3人は、各々が担当を決めて戦うのだ。

イズミとイズネ、信頼関係のある二人だからこそ、お互いに後方を任せられるのだ。

すでにクスリは射った。戦闘態勢は万全だ。

(信じてるよ、イズネ、フレイ。)

真っ先に仕掛けたのはイズネだ。弓矢を放つ。ただの弓矢ではなかった。鉄か、もしくはそれより固い物質でできた機械兵を、いとも容易く貫いた。

よく見ると、いや、よく見なくてもわかるが、矢が、光輝いている。これが彼女の能力、どこかで聞いたことがあるような気もするが、いわば"光の弓矢"である。決して、某戦闘ゲームのパクリではない。決して。

さらに、何本かを同時に放つので、一気に攻撃できる。

『正直負ける気しないんだけど。』

彼女は得意気に言った。


一方…………イズミの刀からは、明らかに邪気に満ちたオーラが出ていた。

ゆっくりと歩を進める。焦りがまったく見えない。

機械兵たちも、あまりの堂堂たる佇まいに心なしか、たじろいでいる様にも見える。

『来ないならこっちからいくよ。』

イズミは刀に手をかけた。すると、一瞬のうちに、機械兵の後ろ側に回り込んでいる。

(斬ったのか?いや、斬撃がまったくみえなかったぞ)

チンッ イズミが刀をおさめた瞬間、敵が縦に真っ二つに割れた。いや、斬られたといった方が正しいだろう。たしかにイズミは、あの一瞬のうちに斬っていたのだ。

もともと居合が得意だったイズミだが、AMSOによって、さらにパワーアップすることができた。人間の目ではとらえることの出来ない斬撃は、確実に相手をとらえている。かわすことなどほぼ不可能に近い。

『なんだ脆いもんだな。』

イズミは、獲物を狙う獣のように、次の敵を睨み付けた。




『来やがった……』

護衛という役目だが、来た敵はキッチリ倒さなければならない。

『4匹目か』

彼の能力は、バーニング、すなわち───────

『お前も炎の餌食になりな……』

灼熱、である。

半端な炎なら何人もいる。たが、彼の炎は比ではない。機械兵そのものを溶かすレベルの炎を使うのだ。

これが、彼が、一般的である炎の能力で10位に入った理由である。

『ふぅ……どっちももうすぐ終わりそうだな。』

もうすでに、イズミ、イズネの敵は、ほとんど倒されていた。

『……やっぱ……こういうとこは流石リーダーだな……』

フレイは改めて思った。




戦闘も終わり、車に乗り込もうとする、そのとき、

『ザザッ……ザッ……ブッあーあー、こちらヘラ、聞こえるか?イズミ、イズネ』

『『はい』』

『よし、じゃあ今から、お前らの場所から北東に2kmぐらいのところまで行ってくれ。俺らも向かうし、他のヤツらにも言ってある。』

『『了解です。』』

通信は切れた。するとフレイが一言。

『フフッ、やっぱ双子っすね。そろって返事なんて。』

『わかったわかった。』

適当に受け流した。

『とにかく出発だ。ここから』

言いかけたところで、

『北東に2kmのところへレッツゴー!』

『イズネ……』

まだまだ元気ハツラツであった。








第1章


第10話 集結そして終結へ……




機械兵の残骸が、大量に転がっている中に、一台の車が止まっている。

『連絡とれました?』

グレイが尋ねた。。

『……5チーム中3チームはな。ラファエルとティナトスはとれなかったよ。』

応えたのはヘラだ。

『では2チームもとれないなんて……』

ヘラチームである。

『他のヤツらには同じところに呼んだが……』

少しつまって、再び口を開いた。

『嫌な予感しかしねぇぞ……。』

『大丈夫っすよ。』

『ならいいが……』

だが、その予感は当たることなるのだ…………




ここは、バルハラが感知し、ヘラが集合を告げた場所。

そこには、幾つもの機械兵の残骸、そして─────────おそらくバルハラチームの隊員と思われる死体があった。焦げている者、凍りついている者、様々である。

そしてその先には、4人の人影、その下には、明らかに他のとは違う機械兵の残骸が。

バルハラだ。もう、再生は不可能と思われるほどバラバラにされていた。

『まったく……張り合いがないわねぇ……』

一人の女が呟いた。

────────────もう……後戻りはできない。

戦争は……始まりを告げた…………。




『誰からですか?』

グレイが聞いた。隊員たちは、真剣な目だ。

────────先ほど、通信が入った。ヘラがでると、その声は弱々しく、だがしっかりとした声だった。

『バルハラ……』

通信は続く。数分話が続き、通信は切れた。

『なんの通信だったんですか?』

『…………』

『どうしました?』

様子がおかしい。グレイはそう感じた。

『……戦士バルハラの……最後の……通信だ………………。』

一同、衝撃を受ける。すると、ヘラが口を開いた。

『気持ちはわかる。だがここで気を落とすな。現場に向かうぞ。』

落ち着いている、様に見せている。だが、誰より悔しがっているのは、ヘラだ。それは、グレイにもわかる。

『仇は……必ず俺が……』

すると、グレイがポンッとヘラの肩を叩く。

『何言ってんすか。"俺"がじゃないでしょ?』

グレイは笑みを浮かべ、続けて言った。

『"俺ら"で打ちましょうよ。大切な仲間の仇じゃないですか。』

『……ありがとう、みんな…』


隊員計10名、生存者残り6名。ヘラチームは、戦場に足を踏み入れる……




一方ここは、ヘラたちの集合予定地。

そこには、相も変わらず4人の人影が。

ドガアァァッ

突如、爆音が響き渡り、土煙があがる。

『……あんたらが裏切り者どもか。』

『顔見えないよー?』

聞き慣れた元気な声だ。

『よくもバルハラさんを……絶対に許さねぇ!』

フレイである。さいしょの爆音ももちろん彼のものである。

くらったのはクリムソンだ。

『フレイのパンチをくらったんじゃ、ひとたまりもねぇだろ。』

『ひとたまりもないだろー!』

しかし、土煙がはれたときの光景は、想像を絶するものであった。

クリムソンは、その巨体に比例した巨大な手で、フレイの拳を受け止めていた。

『……その程度か?』

メイダーだ。おそらくリーダーなのだろう。彼女は、少し後ろの方にいた。

『この程度のヤツらならあんたらで充分だな。』

メイダーは明らかに挑発的に言った。

『ほぅ、いい度胸じゃねぇか。』

イズミは、いつもと雰囲気が違っていた。

『もおー、お姉ちゃんあんたらの機械兵に仲間殺されてただでさえ気がたってんのに!挑発なんかしちゃって大丈夫なの?』

『その程度でキレるなんて、さすが低脳だな。』

『っな……!』

両者はもはや一触即発のムードである。

『フレイはクリムソン、イズネはサーネだ!私はカーネとだ。』

『お姉ちゃん、落ち着くんだよー。』

『わかってるよ。あんたこそ、負けんじゃないよ?』

『うん!』



『ハァッ、ハァッ……くっそ……』

『もう終わりか?』

フレイはボロボロだった。もう対抗すらもできるかわからない。

『こんな……ヤツに……』

クリムソンは、その巨大な手で、フレイの首元を鷲掴みにし、そのまま締め付ける。

『死ね……』

メギッバキッ『グッ……グァッ……!』

そのときだった。クリムソンの腹に、強烈なパンチが入る。フレイから手が離れた。

『ゴホッゴホッ……ハァッハァッ…………えっ……あなたは……』

『よく頑張った。あとは任せな。』

そこあったのは、ヘラの姿だった。

『ありがとう……ございます…………』

フレイは意識を失った。

クリムソンは、ヘラに掴みかかろうとした、が……………ヘラの拳の方が速い。

クリムソンは、崩れ落ちた。

『あれ、軍長じゃん。』

『ほんとだー。』

二人の後ろには、サーネとカーネの姿。

『二人とも電撃だった。まぁでけえ口叩くわりには…』

『弱かったよ!』

また口を挟む。いつの間にかまわりは機械兵だらけ。

『はぁ……めんどくせ、おーい!』

ヘラが叫ぶと、轟音とともに、機械兵たちのカラダが引き裂かれる。ヴァンパイアである。

『流石っすねぇ。』

グレイも車から出てくる。

『ヴァンパイアチームと俺のチームは機械兵どもを頼む。イズミとイズネは、フレイを看てやってくれ。』

ヘラは、メイダーを睨んだ。

『俺はこのガキを指導しなきゃならないんでね。』

『フフ……面白いじゃない。』

ヴァンパイアは、ヘラに背を向けて言った。

『頼みましたよ、我らが軍長。』



両者は一歩も引かない。ただ、ヘラの方が傷が少ないのは、一目でわかる。

『……どうしたの?もうバテた?』

『強がるな。お前の方が傷が多いのは明らかだ。』

メイダーは、あくまで強気だ。

『ふん、あんたみたいな泣き虫弱虫をかばって死んだ人達がいるなんて、バカみたいね。』

メイダーは、蔑んだ目でヘラを見た。

ヘラの目が、大きく開いた。ガッ……

ヘラは、メイダーの首元を掴む。メイダーのカラダが宙に浮く。

『てめぇ……自分がなに言ったかわかってんのか……』

腕に一層力がこもる。

しばらくして、誰かがヘラを制した。

『軍長、もう終わりましたよ。それに、メイダーもう意識なくなってますよ。』

ヘラはハッと我に帰った。気づけば後方の機械兵は、すべて残骸と化していた。

『お……俺は……』

『軍長、勝ったんですよ、俺らがね。』

『おつかれ、軍長。』



EDF軍総勢88+1人、死者84人、生存者ヘラ、ヴァンパイア、イズミ、イズネ、フレイ以上5人



戦いは、幕を閉じたのであった。





ようやく第1章が終わりました。

こんな無駄に長い作品を最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

第2章はどれだけ先になるかわかりませんが、出た時にはよろしくお願いいたします。

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