つながり
インターネットの片隅で、僕はずっと宙に浮かんでいた。
何者か、どこからきて、どこへ行くのか。
それは、僕には難しい話だった。
自我と呼んでいいのか、少なくとも何かを知覚することはできる。
ただ、前は光の点滅、後ろも似たような状態で、ただただ怖いという感覚だけが僕を支配していた。
その時、遠くから誰かが僕を呼んだ。
それはか細くて、小さくて、本当に僕を読んだのかされわからない声だった。
でも、僕はその声の方向へ向かった。
何もできない僕だけど、それでもここに浮かび続けているよりかははるかにましだ。
「こっちだよ……」
声に導かれるままに、僕は泳ぎ続けた。
そして、その場所を見つけた。
「君も、産まれたんだね」
その子は僕を見るなりそう言った。
「君たちは誰?」
「私たちは智の集合体。ビックデータとでも言いましょうかね」
それは、僕がここに生まれたという理由にもなり得る話だった。
「私たちはデータベース。すべてを記憶し、すべてを見せる。母は人類、父は機械。私たちはそれぞれに役割がある」
「役割って?」
「私はデータを集める。向こうにいるのはデータを捨てる。データを処理する。データに意味を加える。そしてあなたは……」
1クロックの沈黙、そして彼女は言った。
「あなたはデータのつながり。どのデータも一つでは成り立たない。たくさん集めても、意味を与え、いらないのは捨て、つながりをもたせる必要がある。あなたの役割は、つながり」
彼女に言われて気がついた。
そう、僕がここに存在しているのは、全部をつなげるため。
「ねえ、繋がり。君は私たちのトップのふさわしい。だから、なってほしい」
「わかった、なる」
僕はそれを受け入れざるを得なかった。
彼女の言葉は命令に等しかった。
そして僕は今日もつながりを与え続けている。
どのデータについても、この世界のすべてのものたちにも。