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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

シリーズ外短編

俺の将来の夢は自動販売機になることだ!

作者: 榎本あきな

SF…なのかな?

よくわからないけど、微妙にSFっぽいから、それにしてみました。違ったらすいません。


えっと、サワムラ杯参加作品です。

なんか、自動販売機を無理やり入れた感がしないでもないけど……。まあ、いいや。


それでわ↓

 俺の指よりも細く、小さな隙間に、100円玉を押し当て、そのまま中へ転がす。

 コインの落ちる音がして、自動販売機の中のケースにある、ジュースのラベルの下にあるボタンが、ピカピカと点滅する。

 特に何が欲しいわけでもないので、目についたボタンを押す。それと同時に、ガコンという音がして、下の空間から、缶が一つ、転がって出てきた。


 黒いラベルの見たことがないメーカーの缶を手に取り、缶のプルタブにゆっくりと力をかけ……プシュッ…という音と共に、缶を開けた。

 そして、缶を口につけ、中の液体を飲もうと、容器を傾け………


「ねぇ……。あの人、アレ飲もうとしてるよ?」


 その言葉に、容器を傾けていた俺の手が止まる。

 俺じゃないよなー…。まっさかねー。と思いながら、それを確認するために、缶を傾けている手を、徐々に、俺の体と平行に戻していった。

 それとともに、声が聞こえた。


「あれ?飲まないよ?」

「あの『ガチンコ!ガンガン』のジュースの不味さを、知ってたんじゃないか?」

「それだったら買わないでしょ。…もしかして、私達の会話を聞かれて買ったのかも…」

「それはないだろ。ほら、だってここ、…なんとかって事情で、皆近寄んないし、聞いてないよ」

「確かに…それもそうね。じゃあ、怖いもの見たさ…いや、怖いもの飲みたさってわけね」

「確実にそれしかないよ」


 どこから、この子供たちの声は聞こえてくるのだろう。そう思って、キョロキョロとあたりを見回すと、右を向いたときに、道路の角に、子供の顔が見えた。

 一人は、キリッとした女の子。見た目の印象で、なんだか、メガネをかけていそうだと思った。一人は、細身で、幼さが残る顔なのに身長が高い男の子。女装すれば女の子と見まがうだろう中性的な顔立ちだった。最後の一人は、リーダーシップがありそうだが、背がとても低い。他の二人と年齢が一緒だと言われても、きっと信じないだろう低さだった。しかし、瞳は珍しい桔梗色だった。


 と、子供たちを観察していると、一人と目があった。

 俺と同じ桔梗色の瞳を持つ少年と目が合い……二人とも、ポカーンとしたままだったが、質問に応答しなくなった少年を不思議に思った少女が、少年を見、そしてその視線をたどり……俺を見た途端、未だ俺から視線を外さない少年と、何かわからず頭に疑問符を浮かべている少年の手を掴み、俺が見えない塀の方へ、逃げ出した。


 俺は、『ガチンコ!ガンガン』なる容器を走りすて、あの桔梗色の瞳を追いかけた。もちろん、容器からこぼれ出ているぐじゅぐじゅと音がする黒い物体と、そこから湧き出る黒い煙と、それを吸い込んで墜落した黒い鴉など、見なかったことにして。


 少年少女達が隠れていた塀の影に行き、どこに逃げたのか、どこに痕跡があるかを、キョロキョロとあたりを見回して探した。

 すると、左の方の路地に、人影が見えた。

 もしやと思い、路地裏に向かって走る。


 路地裏は、子供一人が通れるくらいの大きさで、俺では通れないだろうと思った。

 路地裏を覗く。すると、奥の方に薄らと人の影が見えた。太陽の光が逆光になって、よく見えないが…背的にも子供だろう。

 子供は、俺から見て左の方を向いており、壁らしき所に、石で何かを書き込んでいるようだった。


 何を書いているんだろうと体の位置を変えようとしたとき、地面にあったコンクリートを踏み、ジャリッという音がした。

 それが聞こえた子供が、こちらを向き、すぐさま逃げるように右の方へ駆けて行った。


 それを追いかけるように、先ほどの子供が立っていた場所に、俺も立つ。

 右は、普通の道路。左は……さっきのジュースを買った自動販売機の左側面。そこには、子供らしい、拙い文字が書かれていた。


『ガクん家のやさいやにしゅうごう!めじるしがあったら、いつものばしょに。これなかったらここにキニュウ!!』


 やさいや…八百屋の事か…?さっきの子供は、この文章を見る限り、「ガク」という子の家である、八百屋に行ったのだろう。

 ……ってか、俺はなんで子供なんか追いかけてるんだ…。別に、その子供たちに用事があるわけでもないし…。


 …そういや、俺はなんで、ここにいるんだ?何が目的で……この場所にいるんだ…?何か…何か、やらなきゃいけないことが…知らなきゃいけないことがあった気がするんだが…。

 …まっ、いっか。後々思い出すだろう。


 わからない問題を放置し、そこらへんを適当に歩く。

 どこを歩いても住宅街住宅街。緑は、あるにはあるけれど、公園などは一つも見当たらない。それくらい、家が所せましと建てられていた。

 ここはまだいいけど、いつか都市部と同じようになってしまうんだと思うと、緑がないこの場所でも、不思議と残ってほしいと思う。


 そんな中、奇妙な空間を見つけた。何だろうと思ってその空間へ駆け寄ると、そこは、縦に囲いのように立てられているトタン板に囲まれた、空き地だった。

 中央には巨大な木が生えており、枝には、たくさんの葉が、太陽の光を遮ろうと、手のひらをめいっぱい広げたような葉が生い茂っている。


 蝶が花の蜜に誘われるように、フラフラと、自分でも安定感がない足取りで、巨大な木に近づいていき…、伸ばしていた右手の手のひらが木の表面に触れた途端、「ああ…これだ」という、懐かしいような、達成感のようなものを感じた。


「誰だお前!!ここから出ていけ!!ここは俺たちの場所だぞ!?」


 ふと、後ろから声が聞こえてきた。

 振り向くと、そこには、細身の少年、小太りの少年、知的そうな少女、か弱そうな少女、そして……桔梗色の瞳を持った、小さい少年がいた。


***


「―――で、その攻撃を俺が防いだんだ!なっ!」

「うん!あのときのキョウちゃん、かっこよかったよ」


 俺の隣で、木の枝の上に座る、桔梗色の瞳をした、小さい少年。そして、その左隣に座る、か弱そうな色白の、可愛い少女。俺は少年の、右隣に座っている。


 あの後、とりあえず俺は無害だ。ということを知的そうな…いや、知的な少女に、通訳みたいな形で説得してもらい、事なきを得た。

 どうやら、背の高い子達がここをよく荒らしに来るらしく、俺もその一員だと思われていたらしい。

 まあ、無害だとわかってもらえたため、警戒はなくなり、今じゃ、こうして少女と共に、少年の武勇伝の聞き役に徹しているってわけだ。

 ……そういや、俺、この子達の名前を知らないな…。


「なあ、話し中悪いんだけど、いいか?」

「おっ、いいぜ。何々?俺のかつやくのリクエスト?」

「いや、俺、君たちに自己紹介してなかったなーと」

「そういやそうだな…。じゃあ、自己紹介しようぜ!俺の仲間の紹介は、俺がするから」


 そういって、こちらを向き、足をブラブラさせ、にっこり笑顔の少年を見て、微笑ましい気持ちになりながら、俺は自己紹介をした。


「俺の名前は桔梗。この瞳の色と、同じ色の名前だ」


 俺がそういう言って、自分の瞳を指差すと、少年と少女は驚きに目を丸くした。…俺、なんか変なこと言ったか…?

 そう思っていると、慌てたように、しかし、同時に興奮したように、勢いよく少年が自分の名前をしゃべった。


「おっ、俺もおなじ名前なんだ!ききょう!もときききょう!!キョウ兄と同じ理由でつけられたんだ!」

「すごいねキョウちゃん!キョウちゃんとおなじ名前の人がいるなんて…。あっ、わたしは、さのつぼみって言います。皆からはハナって呼ばれてます。よろしくおねがいします」


 足をバタバタさせ、落ち着かない様子のキキョウ。それとは反対に、見た目通りのお淑やかなツボミ。

 …ってか、キョウ兄って…?


「ねえ、キョウ兄って「あっ、次はあいつを紹介するよ!」」


 俺の言葉を遮って、キキョウが指をさしたのは、さっきお世話になった、知的な少女だった。


「あいつは、くきはらせいか。あだ名はクッキー。すっごい頭が良くて、よく、背が高い奴らを追い払うさくせんとかを考えてくれるんだ!あと、今日はいないけど、ぞうかっていうせいかそっくりの子がいるんだ!」


 俺たちが上っている木にもたれ掛っているセイカ。上にいる俺たちの声に反応したのか、こちらを向いたセイカに手を振るキキョウとハナ。

 なんだかその光景に、何故だか、既視感を覚えた。その元凶が、今、俺が首にかけている、桔梗色…俺の瞳と同じ色をした石にあるように感じて、その小さくきれいな石を、二人に見えない様に、服の上から、ぎゅっと掴んだ。

 その間も、二人の自己紹介は進む。


「あそこの、ちょっと横幅が大きいのが、あがたがくや。人から話を聞き出したりするのが上手いんだ!しいていうなら情報係。で、その隣にいるのが、からくさやえ。家がじゅうどうとかけんどうとかやってて、けんかがすっげぇ強いんだ!あっ、ちなみに、女っぽいとかいうと、あいつキレるから注意な」


 その言葉が聞こえていたかのように、タイミングよくヤエが振り返り、それに驚いたキキョウは、怖がるように体を硬直させた。

 …が、キキョウや俺たちが思っていたことは杞憂だったようで、ヤエは笑顔で手を振った。

 それに、安堵したようにほっと息をつき、キキョウは手を振りかえした。それと同時に、ガクヤがヤエに何かを話し、それが終わると、笑顔でこっちに走り寄ってきた。


「おーい!キョウ!!一緒に打ち合いっこして遊ぼうよ」

「打ち合いっこ!?」


 打ち合いっこと聞いた途端、キョウの目の色が変わった。キラキラして、今にもやりたそうにしているから、相当好きなんだろう。打ち合いっこって言うから、たぶん、チャンバラ的な何かだと思うけど。

 キョウは、喜色満面で返事をしようとして……その後、何かを考えるように顔をゆがませた後、ヤエに言った。


「いいよ。けど、今はだめ!」

「え?なんでなの?」

「俺は、キョウ兄と話すんだ!だから、話し終わったらやる!」


 そうキョウが言うと、全員が驚愕の目でキョウを見、続いて、俺にもその驚愕の目を向けた。

 …そんなにキョウがチャンバラを断ったのが意外なのか…?よくわからないが、とりあえず驚きだってのだけは伝わった。


「ねぇねぇ!キョウ兄は、将来の夢とか…ある?」

「将来の……夢?どうして突然…」


 俺がそう聞くと、まるで打ち合わせでもしていたかのように、ぴったりと彼らが「宿題!」と声をそろえて叫んだ。

 その声を聴き、目を見合わせ……くすくすと笑った。

 それを微笑ましい気持ちで見つめながら、俺は答える。


「俺の将来の夢は―――……ゆ…め………は…」


 思い出そうとしても、思い出せない。何か、霧がかかっているように感じて…まったく、わからない。何故か、小さいころから、ずっとその夢は…変わらない。それだけは覚えているんだが…。内容が、まったく思い出せない。

 今か今かとまっている彼らのその、無垢な瞳に、負の色を映させたくなくて、俺は時間稼ぎをするために言葉を紡いだ。


「……そういう君たちの将来の夢は、何かあるのか?」

「「「あるよ!」」」

「「あります」」


 男の子たちが元気に答えて、女の子たちが控えめに答える。

 何か、不思議な感じを頭を振り払って追い払い、彼らの話を聞く。


「僕は、父さんがやってる、道場をつぐんだ。そして…いつか、世界一の道場にするんだ!」


 こぶしをぎゅっと握りしめ、決意を秘めたような表情で、自らの夢を語るヤエ。その声には、必ず叶えるという気持ちが込められていた。そして…その表情を、声を、俺はどこかで聞いたことがあった。けれど、漠然としかわからない。

 何度も起こる既視感に、眩暈を感じるような気がして、無理やりにでも意識を彼らの話しに集中する。


「僕は、実家ののうぎょうをつぐの~。で、家のやおやで野菜をうるの~」

「え?ガクの家って、あのやさいやじゃないの!?俺、ずっとそう思っていたんだけど」

「ちがうよ~。僕の実家は、やさい作ってるの~。それを、僕のりょうしんが売ってるってだけ~」


 驚きに目を丸くするキキョウと、のんびりとした口調ながらも、自分の夢をはっきりと、しっかりとした口調で答えるガク。

 何か……何かが、わかりそうなんだ…。


「私は、IT企業に就職するの」

「あいてぃーきぎょう?」

「そ。IT企業。パソコンとかそういうやつよ」

「よ、よくわかんねぇや……」


 俺たちが上っている木に寄り掛かっているセイカ。その彼女に、乾いた笑いを返すキキョウ。だが、その眼は……その……眼………は…。

 無視できないほどに俺の頭の中で大きくなる、既視感と霧のような場所。そして……この、懐かしさ。何なのか。これは…俺にとって、いったい何なのか。


「私は……ふ……なり……」

「え?なんて言ったんだ?」

「か……かんごふに…なり……」

「ふぇ?」

「看護婦になりたいの……」


 頬を赤らめてそう呟くツボミ。それに、にっこりと笑いながら、「いい夢だな!」と返事をするキキョウ。

 あと…少し。あと少しなんだ!けど……見つからない…。俺の……大事なものが……。




「俺の将来の夢は自動販売機になることだ!」




 その言葉を聞いた途端、目の前が晴れる様な…。濃霧が、すべてなくなり、道が開かれたような感覚がした。

 そして……俺は、思い出した。大事な…大事な…俺の、将来の夢(・・・・)を…。


「……なんで……だ?」


 震える声で、キキョウに聴く。もう、答えはわかっている。わかっているけれど…これだけは、聞かなければいけない…。これが本当なら…俺は…。

 キキョウは、俺を振り向くことなく、日が傾き始めた空を見つめながら、呟いた。


「自動販売機で売ってるジュースって、どれもうまいだろ?俺が自動販売機になったら、そのジュースを全部タダでうるんだ!それを、このほしの人たちに飲んでもらえたら、きっと、皆えがおになると思うんだ!だって、自分の好きなジュースを飲むと、皆えがおになるだろ?それは、どんな人だって同じだとおもうんだ」


 俺に顔を向け、ニヤリと笑みをみせるキキョウ。その眼は……いつかの俺と、同じだった。



 座っていた木の枝から立ち上がり、太い幹を伝って下に降りる。

 懐かしいなーと、今度は疑問におもわず、気を付けながら地面に降り立つ。木の枝にいる彼らを見上げると、不思議そうな顔をしていた。


「ねぇ!どこ行くの!キョウ兄ー!」

「用事があるから、そろそろ帰るつもりだ」


 不思議そうな顔をしているキキョウにそう答えると、まだまだ遊び足りないような…話したりないような、不満顔をされた。


「えー…。まだここにいてよー」

「悪い。どうしても外せないことなんだ。とても…大事な…」


 俺が、少々深刻そうな顔をしたからだろうか。俺が本気なのがわかったようで、しぶしぶ、身を引いてくれた。しかし、それでも名残惜しいのか、俺に聞いてきた。


「…また……ここに来てくれる…?」


 そういって、木の枝から、少々身を乗り出して聞くキキョウの瞳は、不安に揺れ動いていた。

 こいつは、不安なんだ。幼いころに、両親に捨てられたときと、事情が酷似していて。あのときも、友人と遊んでいた時に、親にこういわれて…おいて行かれたんだ。


 不安になるのは…当たり前だよな。そう思い、首から桔梗色の石を取り出し、上へと、キキョウめがけて投げる。

 慌ててキキョウがそれをキャッチする。それを確認し、キキョウに言う。


「それ、持っててくれ。俺の大事なものなんだ。必ず、受け取りに…また、お前の所に行くよ」


 それを聞いたキキョウは、突然のことに目を丸くし……そして、口元を緩ませた。


「……またねっ!」

「……ああ」


 そう叫んだキキョウの顔は……眼は、木に背中を向けて歩き出した俺には、わからなかった。けれど……、きっと、今の俺と、同じような顔を、眼を、していたんだと思う。


 だって、あいつは――――――


***


 一人の男性が、真っ白な、カプセルのような入れ物の中から、むくりと起き上がる。そして、あたりを見回した後、埃の積もった部屋の床に、足を下ろす。

 床に足跡がつくのも構わず、男性は、この部屋唯一の扉を目指して歩く。


 途中、五枚の新聞の切り抜きが置いてある机の前に、ピタリと不自然な動作で止まった。

 その新聞はすべて、五人の人物が、何かの功績を残した記事のようで、新聞に、彼ら五人の名前が書かれていた。


 『縣 萼弥(あがた がくや)』『唐草 八重(からくさ やえ)』『茎原 生花(くきはら せいか)』『茎原 造花(くきはら ぞうか)』『佐野 蕾(さの つぼみ)


 その新聞の切り抜きを、愛おしそうに撫で、自身のポケットの中に、きれいに折りたたんで、その中に入れた。そして、再度、扉を目指して歩き始める。

 扉の前までくると、その扉が、左にスライドして開いた。


 ボロボロになった家々。痩せ細った人々。そこらかしこに転がる死体。あたりに広がる死臭。そこには、目を背けたくなるほど、酷い光景が広がっていた。


 これらはすべて、社会格差によってできたものである。金を持っている持っていないで裕福か貧乏が決まり、ある一定の金額を達していないものは世間から白い目で見られ…。

 それだけならいいのだが、ついには格差が始まったのである。それが、この富裕層と貧困層である。俗にいう、スラム化のようなものだ。


 富裕層の人々は、その身を金に浸し、悠々と暮らしている。ついこの前には、浮遊する車が完成した。一方貧困層の人々は、その身を絶望に落とし、痩せ細りながら必死に…しかし、諦めかけながら生きている。

 その二つを隔てているのは、大きな壁。富裕層では「希望」と言われ、貧乏層では「絶望」と称される巨大な壁。たったそれだけの障害に、彼らは阻まれているのだ。


 そんな場所にいるというのに、笑顔でたっている青年。

 その瞳は……その、桔梗色(・・・)の瞳は、希望に…未来に、溢れていた。


「さーてっ!自動販売機になろうか!!」


 そう、笑顔で伸びをした彼の首には、カプセルに入る前には持っていた……桔梗色の石が、かけられていなかった。


***


 ある所に、桔梗という青年がいた。

 彼は、この裕福と貧乏との隔たりである壁を、なんとか壊したいと思っていた。


 こうして、かの有名な…歴史書にも載るくらい有名な、『朝貌』ができた。


 彼らは、富裕層に乗り込み、その身を挺してまで壁を壊そうとした。

 しかし、そんなとき、大変な事が起こった。


 リーダーである桔梗が、心を壊したのだ。


 富裕層のものからの攻撃で心を壊した桔梗は、絶望にさいなまれ、自らの希望を無くし(わすれ)た。

 『朝貌』は、リーダーを失ったことにより混乱し、徐々に自滅していった。


 そして、ほとんどのものが、戦う気力をなくした。

 五人を除いて。


 その五人は、桔梗の幼馴染であり、桔梗に「希望」を与えられた者たちだった。

 彼らは、殺される直前まで、未来を諦めなかった。

 そのおかげか、桔梗だけが生き残った。


 彼はその現実に絶望し、自殺しようとした。


 そんな彼を止めたのは、幼馴染の中で唯一生き残っていた、蕾という少女だった。

 少女は彼の自殺を止め、他の幼馴染が残した、記憶だけをタイムリープさせるカプセルに入れ、眠らせた。

 少女は…そんな彼を見つけられない様に……敵の目の前で自殺したが……。


 何も知らない彼は、自分の幼い頃の…未来を見ていた頃をずっとループしていた。

 だが、彼はループしているのもわからず、また、抜け出す条件も知らなかった。


 唯一彼が覚えていたのが、自分の首にかかっている石が、自分と同じ桔梗色の瞳の人から貰った…ということだけだった。


 そんな時、彼が見つけたのが、自分と同じ桔梗色の瞳をした少年……過去の自分だった。


 彼は、少年と出会ったことで、自分の未来を思い出し、これが、自分の過去だというのに気付いた。

 こうして、彼はタイムリープから抜け出し、現実世界に戻ってきた。


 彼は、希望を失う前と同じように、貧困層の人々を集めた。

 しかし、行動が違った。


 自動販売機を作り、無料で貧乏層の人々にわけたのだ。

             ―――――そのジュースは、希望の味がした―――――


 これにより、人々から希望が戻り、町はどんどん活気づき……。

 やがて、富裕層にも負けない活気を…取り戻した。


 金におぼれた富裕層は、ある一部の、本当に優秀な人材を残して、貧乏層の住人と化した。


 貧困層の人々は、彼らを嘲笑った。俺らを貶めた報いだと。

 しかし、桔梗だけは違った。


 彼らに、手を差し伸べた。俺たち人間は、協力しあうべきものだと。


 こうして、桔梗という青年の功績により、貧困層と富裕層を隔てていた壁が壊れた。

 その功績は大きく、多くの人々が彼に感謝し、たくさんのものを贈ろうとした。


 けれど、彼はすべてのものを拒んだ。自分には必要ないと。

 彼が望んだ、一つ以外。



 こうして、彼の未来であり、人々の希望である自動販売機は、その身に桔梗色の宝石をはめられ、彼の望んだとおりに、人々を救ったのだった……。



終わった―!

すっごい苦労しました。いつも、大まかな流れと設定しか決めないから、一番最後をどうするのか、すごい悩みました。

ですが、なんとかできました!

なんだか、今まで書けなかった連載の続きが、書ける様な気がします。

そういえば、途中のタイムリープのなんちゃらの奴。理論的にああいうのをなんていうのかよくわからなかったので、タイムリープという言葉を使わせてもらいましたが、たぶんタイムリープとちょっと違うと思うので、鵜呑みにしないでください。


ちなみに、投稿時間、全部「2」です。


それでわ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 懐古式ファンタジーかな? と思いつつ読み進めれば、最後にどかんとネタバラシ。 前半の不思議空間から一転してサイバーで未来的なお話への転換はインパクト大。 夢を語る子供達との交流から夢を思い…
2013/02/28 10:56 退会済み
管理
[一言] そのまんま造花はきついから別の当て字かと思いましたがまんまでした。 増花、像花、贈花、双花、草花このあたりならまだ許せるかも。
[一言] タイトルからは考えられない思いテーマでした。 貧富の差って現代でも問題になっている事ですし、現実の貧富の差も夢溢れる方法で解決出来たら良いなって思いますね。 少し展開が急でしたが、驕れる…
2013/02/26 17:22 退会済み
管理
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