平行宇宙編AMラジオ「Amikana & Mika」:第31回「若いままって、怖い?」
<次のお便りです。ラジオネーム『午前零時の観測者』さんから。いつもありがとうございます>
「ありがとうございます」
<『アミカナさん、ミカさん、こんばんは』>
<「こんばんは!」>
<『アミカナさんは、ミカさんが年を取っていくことについて考えたことがありますか?』……ということですが>
「あー、これは……」
<どうですか?>
「あのー、これ、真面目な話になるけど、いい?」
<いいよ>
「これ、凄く怖くて」
<怖い?>
「うん。何ていうか、世界から取り残される感じなの」
<そうなの? 私からすれば、ずっと若いままで羨ましいけど>
「まあ、それはそう」
<そうなんかい!>
「シミはそもそも心配ないけど、皺とか増えないし。肌がカサカサになるとかもないし。あと、きっと胸も垂れない」
<こっちが気にしていることを、悉く言うね。でも、胸は揉まれるときっと垂れるよ>
「嘘?!」
<心当たりあるの?>
「……え?!……」
<……簡単に引っ掛かり過ぎ……>
「……う……」
<……で、じゃあ何が怖いの?>
「……その、若いことはいいんだけど、若いままっていうのがね……」
<どういうこと?>
「何ていうか、時間が止まってる感じがするじゃない。自分だけ」
<ああ、まあ、何となくは分かるけど>
「自分以外の人達は、経験を重ねて少しずつ歳を取っていくのに、自分は全然成長できていないような……」
<経験はしてるじゃない。まあ、精神的に成長してるかどうかは知らんけど>
「ちょっと?!」
<見た目が変わらないことと、成長してるかどうかは別のことでしょ?>
「それはそうなんだけど……私はアンドロイドだし……何ていうか、本当に経験してるのかなって思うこともあって……」
<どういうこと? 経験はしてるでしょ?>
「あ、いやまあ、そうなんだけど……私が感じたり考えたりしたことは、本当なのかなって思うことがあって。そっから、自分で成長した、って思ってるだけなのかもって……」
<……そんなこと考えてるの?……>
「はは。まあ、夜眠れないからさ。ミカより時間があるわけ。だから、ミカの寝顔を見ながら、『ああ、また皺が増えたな』って」
<ちょっと?! どういうこと?!>
「だから、毎晩、優越感に浸りながら、『この優越感は本物なのだろうか?』って悩んでるわけ」
<そんな毎晩皺増えてる?!>
「いや、そっちかよ! 増えてはいるよ。ミクロなレベルで」
<嘘?! 乳液変えようかな?>
「……いや、私の悩みは?」
<……えーと、つまりどういうことだっけ? 私が老けることに優越感は感じてるけど、その優越感が本物かどうか分からないっていう、どうでもいい悩みを抱えてるわけね>
「どうでもいいってどういうこと?!」
<感じるんでしょ、優越感>
「え……まあ……うん」
<じゃあ、それが本当のことでしょ?>
「何、そのエレクトラ的発言」
<アンドロイドかどうかなんて関係ない。感じたことの真偽を疑ってたら、何も感じられないじゃない>
「まあ、そうだけどさ……」
<例えば、『優越感』だけを取り出して、ここに置くことはできないよね。生身でもアンドロイドでも>
「うん……」
<ならそれは、物理的な存在じゃない。何ていうか、情報なのよ。その情報が、生体反応によるものなのか、電気信号によるものなのかは関係ない。情報は情報よ。嘘も本当もない>
「……何か……えらい真面目な話になっちゃったね……」
<まあ、それでも歳を取ることで成長を実感したいなら、歳を取った私をもう一度複製して、それに今の量子頭脳を移植すればいいんじゃない? それなら、ちゃんと歳取ること、できるよ>
「あー……それはイヤかな?」
<イヤなんかーい!! じゃあ、質問への回答は?>
「質問、何だっけ?」
<『ミカさんが年を取っていくことについて考えたことがありますか?』!>
「ああ! はい、あります。っていうか、毎日老化していくのを観察しています」
<ちょっと?!>
「で、自分の不老の優越感と、周囲に置き去りにされる恐怖を感じています。これでどう?」
<まあ、いいんじゃない? では、曲に参りましょう。映画『時間戦士は永遠の夢を見るのか』の主題歌、『Zeitkrieger』のカップリング曲で、アミカナ5、『Ewiger Traum』、永遠の夢>




