1-1. 砂漠の果ての平穏と死と覚醒
初めての投稿です。
誤字脱字が多くなると思いますが、よろしくお願いいたします。
途中で、脱線することもあると思いますが、ゆっくりと見守ってください。
では、参ります!!
1. 砂漠の果ての平穏
僕の生まれ育った場所は、二重大河の遙か下流、砂漠の不毛地帯に爪を立てるようにして作られた、名もなき開拓村だった。
世界には「マナ」と呼ばれる魔法のエネルギーが満ちているけれど、それは決して人間に優しいだけのものではない。村の外に出れば、いつだって獰猛な「魔物」たちが僕らの命を狙っている。父さんたちが命がけで狩ってくる動物型の魔物の肉を食べ、泥レンガの家で暮らす――それが僕の、ささやかで、退屈で、だけど大好きな日常だった。
ただ、僕は昔から少し変わった子供だったらしい。 時折、流れる大河や星空を見つめていると、頭の奥で「聴いたことのない音楽」や、不思議な「四角い箱の中で動く色鮮やかな絵」の残像がチラつくことがあった。
「イサナギ、またぼんやりして。何を見てるの?」
声をかけてきたのは、僕と同じ日に生まれた幼馴染のレイラだった。 村の神官の娘である彼女は、生まれつき高い魔力を宿している。少し気が強いけれど、いつも僕のことを気にかけてくれる優しい女の子だ。
「いや、なんでもない。……あそこに、綺麗な黄色い花が咲いてるなと思ってさ」 「本当だ! あのお花、神殿に飾ったらお父様喜ぶかも。行こう、イサナギ!」
レイラに腕を引かれ、僕は笑いながらオアシスのほとりへと走った。 それが、僕の「最初の人生」の、最後のまばゆい記憶だった。
2. 破られた日常と、冷たい死
「――ガルルルル……!」
その低い唸り声が鼓膜を震わせた瞬間、僕の背中に冷たい汗が吹き出した。 視線を向けると、オアシスの草むらをかき分けて、真っ赤な眼をした巨大な獣が姿を現していた。低ランクの動物型魔物「ジャッカル・ウルフ」。飢えに狂った群れの一部が、村の防壁を食い破って侵入してきたのだ。
「あ……、あ……」
レイラの手から花カゴが落ち、地面に花びらが散る。彼女は恐怖のあまり、完全に足がすくんでしまっていた。 魔物の鋭いキバが、今にもレイラの細い喉元に届こうとした、その刹那。
僕の頭は、何も考えていなかった。 ただ、「レイラを失いたくない」という本能だけが、僕の五歳の小さな体を突き動かした。
気づけば、僕はレイラの前に飛び出していた。両手を広げ、彼女の視界を遮るように。
「レイラ、逃げろ――っ!!」
叫んだ直後、視界がぐにゃりと歪んだ。 肉が引き裂かれる嫌な音がして、胸に灼熱の痛みが走る。ジャッカル・ウルフの爪と牙が、僕の体を深く、深く貫いていた。
「イサナギィィィッ!! いやあああ、目をあけてっ!!」
泣き叫ぶレイラの声が、どんどん遠くなっていく。 視界が急速に赤から黒へと染まり、体の芯から凍りつくような冷たさが押し寄せてくる。 あぁ、僕、死ぬんだな。 五歳のイサナギの意識は、そこで完全に途絶えた。
3. 混沌の神界、そして「前世」の濁流
気がつくと、僕は果てしない虚無の空間に浮かんでいた。 痛みはない。ただ、圧倒的な静寂だけが満ちている。
『泥より生まれし小さき命よ。お前の魂の響きは、まだここで潰えるべきではない』
その声は、全宇宙の底から響いてくるようだった。 暗闇の向こうから現れたのは、巨大な「二つの黄金の眼眸」。この中東の地を統べる、古き、偉大なる神の視線だった。
『地上には間もなく、調和を乱す不快な“騒音”が満ちようとしている。お前に、私の息吹と、かつて失われた“大いなる記憶”の欠片を授けよう。それを以て、世界の楔となれ』
神が深く息を吹きかけた瞬間、僕の魂の核に、凄まじい情報の濁流が流れ込んできた。
「が、あ、ああっ……!?」
それは、五歳の子供の脳が受け止めるには、あまりにも巨大すぎる「前世の記憶」だった。 高度な科学技術、高層ビルが立ち並ぶ夜のない都市、そして――僕が前世の人生で、何よりも深く愛していた「アニメーション(動画)」という文化の全記憶。
絵を一枚ずつ描き、それを連続して再生することで、静止したものに擬似的な「命」を吹き込む異世界の魔術。 さらに、それに伴う高度な魔力の制御方法や、三次元的な空間認識スキルが、僕の脳細胞に凄まじいスピードで刻み込まれていく。
(思い出した……。僕は一度、別の世界で大人として生きていたんだ。そして今、神の力によって、この魔法の世界に引き戻された……!)
『さあ、行くが良い。その新しい力で、世界の調和を守るのだ』
黄金の目が優しく細められた。次の瞬間、僕は光の速度で元の世界へと引き戻された。
4. 覚醒の【魔力追生】
「――お願い、神様、イサナギを返して、お願いだから……っ!」
耳に飛び込んできたのは、ひどくかすれたレイラの泣き声だった。 目をあけると、オアシスのぬかるんだ地面の上、僕の体を抱きしめて号泣するレイラの姿があった。周囲には、魔物を撃退した大人たちが、沈痛な面持ちで立ち尽くしている。
「おいおい……そんなに泣くなよ、レイラ。せっかく可愛い顔が台無しだぞ」
「……え?」
僕がかすれた声で呟きながら上半身を起こすと、レイラは息を呑んで硬直した。大人たちからも「バカな、心臓を貫かれていたはずだぞ!?」と驚愕の叫びが上がる。 僕の胸の傷は、神の光によって跡形もなく塞がっていた。
「イサナギ……? 本当に、イサナギなの……?」 「うん。ちょっと三途の川を渡りかけたけど、神様に追い返されちゃった」
前世の記憶が戻ったせいで、口調が少し大人びてしまうのは止められなかった。 感動の再会に浸りたかったが、空気の揺らぎがそれを許さない。草むらが激しく揺れ、逃げ遅れた最大級の「ジャッカル・ウルフ」が、低く唸りながら僕たちを睨みつけていた。
「子供たちは下がれ! 我々が――」 大人たちが前に出ようとするのを、僕は手で制した。
「大丈夫。みんなは下がっていて」 五歳の体には不釣り合いなほどの、静かな、だけど絶対的な確信を込めて僕は言った。
一歩、魔物の前に進み出る。 脳内で、前世の記憶を呼び覚ます。イメージするのは、アニメの絵コンテ、タイムシート、そしてフレーム。 この世界のマナを「絵(静止画)」として空間に固定し、それを脳内のコマ送り(タイムライン)に沿って高速で連続展開する。
「起動――【魔力追生】」
僕が右手をかざすと、空間に幾何学的な光の四角が出現した。 その中から、光で形成された「鳥」の形状をした魔法が放たれる。
通常の魔法なら、放物線を描いて直進するだけだ。だが、僕の魔法は違う。 放たれた光の鳥は、空間のフレームを書き換えるたびに、まるで本物の生き物のように羽ばたき、急加速し、空中であり得ない軌道変更を繰り返した。
「グルッ……!?」
魔物が予測できない三次元的な動き。脳内で「次のコマ」を進めるたびに、魔法は生き生きと躍動する。 そして、魔物が完全に隙を見せた瞬間、光の鳥は鋭く反転し、その脳バトを正確に撃ち抜いた。
ドカン、と激しい光の炸裂音が響き、ジャッカル・ウルフの巨体が崩れ落ちる。その胸から、小さな魔鉱石が転がり落ちた。
5. 交わされた誓い
静寂が、オアシスを包み込んでいた。 大人たちは、五歳の少年が放った、この世界の常識を覆す「軌道が変わる誘導魔法」を前に、言葉を失っていた。
僕はじっと自分の手のひらを見つめ、神へと誓った。 (神様、ありがとう。この力で、必ず地上の不協和音をねじ伏せてみせる)
服の裾をギュッと掴まれる感覚がして、振り返る。そこには、まだ涙目を潤ませたレイラが、僕を消え入るような目で見つめていた。
「イサナギ……。あなた、本当に私の知ってるイサナギ?」 「当たり前だろ」
僕は前世の記憶を持つ大人であり、同時に、レイラに救われた五歳のイサナギだ。その事実に揺らぎはない。 僕は彼女の目線に合わせるように少ししゃがみ、優しく微笑みかけた。
「一回死んじゃって怖がらせてごめん。でも、さっき言っただろ? 『レイラ、逃げろ』って。僕は、君がピンチの時はいつだって前に立つ。何回死んだって、神様を殴り倒してでも戻ってきて、君を守る。……これは、僕たちの絶対の約束だ」
レイラは一瞬、きょとんとした後、今度はいつもの強い光を瞳に宿して、こっくりと頷いた。
「うん。……でも、次は私も一緒に戦う。あなたを一人で死なせたりしないんだから!」
「あはは、頼りにしてるよ、聖女様」
まだ見ぬ未来、この世界には人間の傲慢が産み出す恐るべき「騒音」と、崩壊の濁流が待ち受けている。 だけど、神の加護と、異世界の英知を手にした僕の一歩は、ここから世界の運命を確実に変えていく。
僕らの長い戦いは、この小さなオアシスから始まったんだ。
みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?
少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。
励みになりますので、☆☆☆☆☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。
これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。




