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スキル『箱庭』で、私は『人』になる  作者: 春爛漫


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2/5

スズの考察

 私『中川鈴美』は日本で生まれて、中年で死んだ女性だ。


 私は『箱庭ゲーム』と言われている『育成型』のゲームが趣味で、農業をしたり生産をしたり工場や建物を建てて世界を自分色に染めるのが好きだった。


 死因は仕事帰りに自転車に轢かれてからの意識が無いから、まあ当たりどころが悪かったのだろう。


 次に目が覚めると何故か『私が吐いていた』。

 『私』は『苦しくない』のに『苦しそう』な呼吸音が聞こえていて、そのまま意識を失ったらしく、目の前が真っ暗になった。


 だが、真っ暗な中でも『私』は起きていた。

 いや『眠れない』のだ。


 それから私のままならない『日常』が始まった。


 『私』の意識はあるのに『私の体が無い』ようなのだ。


 いや『誰かに憑依』している、という状態なのだろうか?


 私の『宿主』は、毎日、目が覚めると、家? 掘っ建て小屋? から外に出て、井戸から水を汲んでたらふく飲むと『山』に向かい、土に生えている『草』を土がついたまま食べているようだった。

 そして体に悪いものを食べると吐いたり、排泄物を垂れ流す。


 『私』はココにいるのに、この『宿主』を通してしか周りを見られないし、音は聞こえるのに『声は出ない』し『体も動かせない』ので、この『毒物』を毎日食べる『宿主』に話しかけられないかと訴えかけていると『パス』が繋がって意思疎通がはかれるようになった。


 どうやら『宿主』は『幼児』のようで、やたらに視線が地面に近かったはずだと納得して、私『スズ』の奮闘は『ココ』から始まったのだ。


 まず『宿主』の『名前』がわからない。

 『親』がいない。

 いや『親』らしき男女の大人はいるが『宿主』の面倒を一切見ないのだ。

 もうここまでくると『幼児虐待』だ。

 いや『育児放棄』だ。


 だから『宿主』がお腹を空かせて、よくわからない『草』を食べてはお腹を壊す。

 そして誰も『宿主』に教育をしないので『宿主』と私『スズ』の意思疎通が行われるまでに、相当な苦労をした。

 『宿主』は言葉を知らなかったからだ。


 とにかく『私』を認識させて「うー、うー」と反応する『宿主』に赤ちゃんのように言葉を教えた。


 前世は中年の女性だったから『簡単だろう?』って?


 私は『子育てをした事が無い』んだ!

 『私』も『宿主』もお互いに「初めて」だらけ!


 初めて宿主に言葉を理解させた時は『宿主』の中から涙して感動した。


 そして『宿主』が食べてもお腹を壊さない『草』を必死に覚えて「食べていい!」「食べちゃダメ!」と指導を始めた。


 だって『親』が『育児放棄』だよ?

 親たちが子作りに励んで煩い中で『宿主』は眠り、たまに『親』の機嫌が悪いと殴る蹴るの暴力があるから『宿主』は雨の日も山に食べ物を探しに出かけるしかない。


 私は心の中で泣いたね。


 『ココ』は日本の限界集落かと思っていたら、たまたま誰かが話している言葉をよく聞くと『知らない言葉』だった。

 私には理解できたけどね。

 これが噂の『言語理解』か、と。


 そして『私』が必死こいて日本語に聞こえてしまう言葉の理解に努めて、日本語を少し理解している『宿主』に外国の言葉を教えていった。


 日本じゃないとか詰んでる、とか思いながら必死に『宿主』を育てたね。


 『宿主』の身長が『私のおかげ!』で少し成長した時に『父親』に『宿主』が顔をボコボコに殴られる事件があって『宿主』に「逃げろ! 逃げてぇー!」と必死に叫ぶも『宿主』の意識がブラックアウトするまで殴られ続けた。


 『宿主』が目を覚ますと、小屋の横に倒れていて全く体が動かないようだった。


 そして『宿主』の片目が『見えなくなった』。


 『私』の視界も狭くなり『宿主』が「おなかすいた」と伝えてきたので、近くにある『食べられる草』を教えて、何とか生きながらえさせて、動けるようになると井戸に水を汲みにいかせて、近くにいた女性に叫ばれた。


 「化け物!」と。


 『宿主』の目から見えた女性は『嫌悪』の表情で『宿主』を見ていた。


 宿主が汲んだ井戸の『つるべ』の水面にチラッと見えた『宿主』の顔は変形してボコボコに膨らみ、歪んでいた。


 その顔は本物の『化け物』のようだった。


 骨と皮の『宿主』の体に『ボコボコに膨らんだ』殴られて『変形した顔』。


 栄養が少なくて、少ない髪の毛。


 『宿主』は『異質』だった。


 そして、どうやら「この村」に『飢饉』が起きたようだった。


 道に倒れている痩せた『死体』。


 畑でほんの少し生えている作物を盗もうとして殺される人。


 私は『宿主』に「山に逃げろ」と必死に伝えて『宿主』と一緒に1年ほど山で過ごした。


 少ない川の水は泥混じりだが『宿主』に「飲むな」とは言えなかった。


 飲める『水』が無いのだ。


 だが『宿主』は己の体に『勝った』らしい。

 いつのまにか、お腹を壊さなくなっていた。


 『宿主』が山を降りて、小さくなってしまった『服』を調達しようとしたところを『父親』に見つかってしまい、知らない馬車の荷台に乗せられてどこかへと連れて行かれて、建物の中へ手を引かれると地下へ降りて行き、現在の製造現場へと閉じ込められた。


 そこには何人もの『骨と皮』の痩せた子供達がおり、強制労働をさせられていた。


 多分だが『宿主は売られた』のだ。


 そして、朝晩の『ひと握りの乾燥麦』と『少しの水』で生かされていた。


 何年も、何年も、生殺しの太陽の光の無い生活が続いた。


 だが、『宿主の成長』で転機が訪れた。


 『ステータス』の存在を見つけたのだ。


 『宿主』はスキルを手に入れた。


 『宿主』の10歳の誕生日に。

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