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第81話「凍てつく告白と、地下の『祭壇』」

玄関ホールに、清顕きよあき様の低い声が響き渡る。


「……遊びは終わりだ」


私は、ゴクリと息を呑んだ。


いつも私たちを弄そぶように、余裕の笑みを浮かべていた薫子様の顔から、一切の表情が消えている。 その「仮面が剥がれた」ような素顔は、恐ろしいほどに美しく、そして、どこか悲しげだった。


この異常な空気に、清馬様が耐えきれずに叫んだ。


「おい、兄上!どういうことだよ! 母上が、『庶民』……?それに、叔父上が『追放』って……! 父上!一体、何の話をしてるんだよ!」


清顕様は、答えない。


清顕様が黙り込む中、清継様は、母である薫子様を、真っ直ぐに見据え、静かに、しかし厳しく問い詰めた。


「母上。……お答えください。あの『事件記録』は、真実なのですか」


「……」


「あなたが、あれほどまでに『巫女の手記』に固執し、琴葉さんを『毒』か『薬』かと試したのは……。 あなたご自身が、琴葉さんと同じ、『庶民』の出であり、我が父と叔父上の、『破滅』の引き金となったから……そうではありませんか?」



薫子様は、ゆっくりと目を伏せ、長い、長い溜息をついた。 それは、いつもの「嵐」の姿ではなく、一人の「女性」としての、深い疲労の色だった。


「……清継。あなた、どこまで読んだの?」


「……叔父上が、『庶民の女』を巡って力を暴走させ、追放された、と。 ……そして、その直後に、父上があなたを『妻』として迎え入れた、と」


「(自嘲するように、力なく笑い)……そう。そうよ。清継の言う通り」

「その『庶民の女』とは、……わたくしのことよ」


「なっ……!う、嘘だろ……!?」


清馬様の声が、震える。


(本当に……?薫子様が、私と、同じ……?)

(だから、私に、自分を重ねて……? あの『毒か薬か』という問いは、薫子様自身が、過去に突きつけられた……!)


私は、薫子様が私に託した、あの「巫女の手記」の、本当の重さに気づき、息を呑んだ。



「だ、だけどよ!それじゃあ、なんで父上は母上と……! それに、叔父上って、俺、そんな人……存在すら知らなかったんだぞ!」


「(清馬の言葉を遮り)……薫子。その話は、ここまでだ」


清顕様が、静かに制止する。


「あら。息子たちには、知る権利があるのではなくて?」


「(厳かに)……この話には、近衛家の、五摂家の根幹に関わる『呪い』が絡んでいる。 ……お前たち(双子)が知るには、まだ早い」


「(食ってかかり)父上!」


清継様が一歩も引かない。


「我々は、琴葉さんと共に、あの大炊御門おおいのみかどとも戦いました! 『巫女の手記』の『破滅』とも向き合っています!」


「その『破滅』が、我々の父と母、そして叔父上の過去そのものだというのなら、我々には、その真実を知る権利があるはずです!」


「(清継を睨みつけ)……お前が、あの『記録』で知ったのは、ほんの上辺だけだ。 ……真実は、お前たちが想像するより、遥かに深く、暗い」



清顕様は、私たち三人――清継、清馬、そして私を、順に見据えた。


「……だが、良かろう。薫子の言う通り、お前たちは『卒業』したのだからな」


「(清継に向き直り)……清継。お前が知りたい『真実』。 そして、清馬、琴葉。

お前たちが断ち切ねばならぬ、本当の『呪い』の正体は……」


「……明日、この屋敷の、本当の『地下』…… 開かずの祭壇』で、全てを話そう」


「(清顕を見つめ、どこか悲しそうに) ……本当に、よろしいのですか、清顕様。 ……あの『扉』を開ければ、もう、後戻りはできませんわよ?」


「……構わん。 この子たちが、琴葉と共に『未来』を選ぶというのなら、私も、我が『過去』と、決着をつけねばならん」


(清顕様の、重い決意。 薫子様の、悲しげな瞳。 そして、私たちが明日知ることになる、本当の「近衛家の過去」とは――)

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