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第79話「白金の光と、繋いだ心」

浜辺には、一瞬の静寂が訪れていた。 あのカオスな『ブチ切れ』宣言の直後。


「ははっ。はははっ!敵わねえな、本当に」


清馬様が、照れくさそうに頭を掻く。


「…ああ。どうやら、我々の『巫女様』は、我々の想像以上に、強いらしい」


清継様も、穏やかな笑顔を浮かべていた。


私は、まだ顔を真っ赤にしながらも、水着姿のまま、二人をビシッと睨みつけた。


「(ぷいっと怒ったふりをして)……もう、知りません。笑って誤魔化さないでください」


「薫子様は、『海の上で、白金の光を再現しろ』と仰いました。 私が『導く』と決めたんです。 ……今度こそ、お二人の『雑念』を払い、私に、力を貸してください!」


「(ゴクリ)……雑念」


「(咳払い)……承知した」



私たちは、海に足を踏み入れ、浅瀬に立つ。 波が足をさらい、不安定な感覚が私を襲う。


「お願いします!私の手を!」


私は、双子に両手を差し出す。 二人は、ぎこちなく、その手を握り返した。


「清馬様!『熱』を!『太陽』のイメージです!」


「お、おう!太陽!太陽! ……(ちらり、と水に濡れて、さらに体に張り付いた私の水着を見て) ……って、あー!」


「(彼から、熱ではなく、明らかによこしまな気が流れ込んできて) 清馬様っ!!」


「わ、悪ぃ!不可抗力だ!こんな破廉恥な格好の奴が……!」


「(もう!)……清継様!お願いします!『器』を!私たちを包む『空』を!」


「(目を固く閉じ)……ああ。空だ。無だ。私は、無だ……」


「あ……!清継様、力が弱すぎます!『器』が、縮こまって……!」


「(目を開けられず)……すまない。 どうやら、私は、君を見ないようにすることに、意識を集中させすぎているらしい……!」


「……(プルプルと震え)……お二人ともっ!!」


「「(びくっ!?)」」


「真面目にやらないなら、私、部屋に帰ります! もう、この水着も二度と着ません!」


「「そ、それだけは勘弁してくれ(ください)!!」」



私の本気の怒りと「悲しい顔」を見て、双子が、ようやく猛省する。


「…悪かった、琴葉。俺が、ふざけすぎてた……」


「…ああ、すまない、琴葉さん。君の覚悟を、私たちが踏みにじるところだった」


「(ぷいっとそっぽを向き)……もう、知りません」


私は、一つの「奇策」を思いついた。


「……お二人とも、目を閉じてください」


「「えっ?」」


「私を見るから、集中できないんです!目を閉じてください!」


双子は、戸惑いながらも、言われた通り、ぎゅっと目を閉じる。


「行きますよ。……(そっと二人の手を握る)」


(清継様の『器』。清馬様の『熱』。 ……今度は、私の『声』が、お二人を『繋ぐ』!)


「清継様。私に意識を向けないで。 私たち三人を包む、この海と、空と、同じ大きな『器』を、感じてください」


「……っ!なるほど。海と、空……!」


「清馬様。私に『熱』をぶつけないで。 その熱で、私たちを照らす、あの『太陽』になってください」


「……!太陽……!おう、任せろ!」



私の「導き」によって、双子の「煩悩」は、「大自然の力」へと昇華された。


(これだ。この感覚だ。 彼女に執着するのではない。彼女を含む、この世界そのものを守る『器』……!)


(すげえ……。力が、琴葉を焼かねえ。温かい。 これが、俺の、本当の『熱』……!)


「(三つの力が、今、完璧に一つに……!)行きます!」


私が、重ねた三人の手を、空に掲げる。


その手から、眩い『白金プラチナの光』が、真っ直ぐに空に向かって放たれた。 それは、『巫女の手記』で見た、あの「破滅」ではなく、「救済」の光。


(ああ……!温かい……! これが、三つの心が本当に一つになった、私たちの『力』……!)


(あまりの達成感と、信じられないほどの多幸感に、私の目から、涙が、ひとすじ零れ落ちた)


光が収まり、三人は、息を切りながらも、互いの顔を見て、笑い合った。


「ははっ……!やった、な……!琴葉!」


「……ああ。君のおかげだ、琴葉さん」


「(涙を拭いながら)はいっ!」


「(ニヤリとし)……ま、これで『修行』は終わりだ。 ……てことは、残りは、母上の言ってた通り……」


「(清馬の言葉を遮り)ああ。 『恋人』としての時間を、楽しむ、だったな」


修行が終わった途端、清馬様は、私の水に濡れた『紅の水着』姿を、熱のこもった視線で、じろりと見つめ始めた。 清継様も、一見、冷静に海を眺めているようで、その視線の端では、光と涙でキラキラと輝く私の肌を、分析するかのように、ねっとりと見つめている。


「(二人の、あまりに『生々しい』視線に気づき、顔を真っ赤にして)……ひゃっ!?」


「(慌てて、清継様のパラソルに駆け込み、タオルケットにくるまりながら)『修行』は、まだ終わってません!!もう一度です! ほら、目を閉じてくださいっ!!」


「えー!?」


私がタオルケットにくるまって、彼らに背を向けていると、背後で、双子が何かヒソヒソと話しているのが聞こえた。


「(ボソッと)だが、よく考えてみろ、清馬。 我々は、結局、目を閉じて、この修行を成功させた」


「え?ああ、そうだな。それが、どうしたんだよ、兄上」


「……つまり、だ。 この修行を成功させる上で、彼女の、あの『紅の水着』は、論理的に、全く必要なかった……ということになるな?」


「…………(数秒、固まり)…………」


「(慌てて、兄の口を塞ぎ) ……兄上っ!それだけは!それだけは、琴葉に絶対に言っちゃ駄目だぞ!絶対だ!!」


私たちの、波乱に満ちた騒がしい「夏休みの宿題」は、まだ、もう少しだけ続きそうだった。

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