表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/9

推し活のテクニック

 授業が終わり俺と如月は勉強会がてら街にあるとある有名カフェに立ち寄っていた。

 そのカフェは超マッチョなマスターが経営している。


「本当にここで勉強できるの?」


 今、このカフェでは雪姫アイスのコラボメニューが期間限定で提供されている。


 一つの商品を購入する事に一つ、選んだグッズランダムが付いてくる。

 

「ここのパフェは絶品なんだぜ?」

「ふ〜ん………」


 何かを察したかのようにジトー、と如月が俺を見る。


 ………バレたか?


「嘘はよくないよね?」


 はいバレた!どうする?勉強するつもりが無いのもバレてるのか?


「じゃあ、今日は一個だけだよ。また明日一緒に食べに行こう」

「そ、そうだな!」

「じゃあ一個食べたら零の家で勉強だからね」

「うい………」


 カウンター席に座ってメニュー表を見る。

 美味しそうないちごパフェだ。


 ……………………………………。


「な、なぁ。如月」

「ボクにもこのパフェを頼んで欲しいんでしょ?」


 流石小学校から一緒の如月君。俺の考えてることをわかってくださる。


「すいませーん!雪姫アイスの雪玉君いちごパフェ二つ!」

「あいよ」


 マスターが俺の注文に対して返事を返してくる。


「それにしても………結構繁盛してるね」

「元々人気店ってのもあるんだろうけどアイスのネームバリューも影響してるだろうな」


 それだけ雪姫アイスの人気は凄まじいのだ。

 

「この機会だ。お前にアイスの素晴らしさを布教してやろう!」


「あ、いらない。ボクもう推しいるし」

「マジか。誰々?」


「零には教えないよ」

「んだよケチ」


 教えてくれればそれぞれの推しの話で盛り上がれるのに………。


 如月は運ばれて来たお冷を一口の飲んでスマホをいじりだす。


「………雪姫アイスっていったいどんな子なんだろうね」

「あ?そりゃオメー、元気で可愛らしい美少女だろ」

「案外その真逆だったりして」


 笑いながら冗談を言う如月を見て俺も少しだけ吹き出してしまう。


「冗談うめーな!」


 そんなのはファンの誰にも分からないのだから想像でしか無い。

 が、流石にあの喋りで陰キャよりの性格はしてはいないだろう。


「分かんないでしょ?Vの中身なんてシュレディンガーの猫状態なんだから」

「………ま、そっか」


 如月の言葉を笑っていたが、思えば彼が言うことにいつも間違いは無かった。


「お待ち」

「お!」


 マスターが俺たちの前に注文を置き視線をパフェへと移す。


 メニューの写真よりもさらに甘そうに聳え立つそれに、俺はスプーンを手に取りパフェを口へと運ぶ。


「「おいし〜!ん?」」


 誰かの声と重なって俺は声が聞こえた方に振り返る。


 ………最近やたらとコイツと関わり合いになるな。運命の悪戯ってやつか?


 本当に、今まで気付かなかった。クラスの人気者ギャル、師走さんがいることに。


「………なんでアンタが居んの?」

「まぁ、俺もアイスのファンだから………」


「あれ?師走さん?君も来てたんだ」

「う、うん………」


 およよ?師走さんが顔を赤くしているぞ?

 これはもしやもしやなのでは?


「き、如月君はなんでここに?」

「ボクは零に勉強を教えるついでにここのカフェのコラボグッズのコンプリートのお手伝い」

「………は?」


 如月の言葉を聞いて俺を睨んでくる。


「アンタ、アイスのファンとして恥ずかしく無いわけ?」

「いや、俺も今月小遣いヤバいし………」


「あれ?零って家の通帳自由に使えるよね?」

「あんなにあったら金銭感覚狂うから………」


 ウチの家系の仕事の性質上、何十億という資産が通帳に入ってはいるがそれを使うと今後絶対に大変なことになる気しかしない。


 後、なんか負けた気もするし………。


「ふーん………。そう言えば師走さんもボク達と同じやつだね。もしかして君も雪姫アイスのファンなの?」

「う、うん。………やっぱり変かな?アタシがこういうの好きだったら」


 パフェを食べ終わった師走さんがスプーンを置きながら語る。


 しかし、如月は首を横にする。


「そんなことないよ。立派で素敵な夢さ」

「如月君………!」


 間違いない。これは脈アリだ。

 俺と如月じゃ師走さんの態度が変わりすぎている。


 俺はため息を吐いてパフェを一気に食べる。

 

 パフェの皿が空になったのを見るや否やマスターが俺と師走さんの皿を回収して何故か新しいパフェが差し出される。


「あの………、これって?」

「何、良いものを見せてくれたお礼です。そっちの男前のお客さんにも後で。もちろんお代はいりません。俺の奢りです」


「ちなみにオマケは………」

「もちろん、それも付けます」

「ちょ!意地汚い!」


 師走さんはそう言うがもう一度言うが俺は今懐が寂しいのだ。

 これ以上出せば生活費を削らなければならない。それだけは何とか阻止したい。


「俺は病気とゴミ以外なら何でも貰うぜ」

「もー、お金に困ってるならボクが出すって言ってるのに!」

「馬鹿野郎!男が施しなんて受けれるか!」


「アンタ今夢中で食べてるものに目を向けながらもう一度それ言える?」

「言える!」

「酷いダブスタ!」


 俺は二つ目を食べ終わり、俺はようやく本題へと入っていく。


 この店でのコラボグッズ。それはクリアファイル、ポスター、シャープペンシル、アクリルスタンド、そしてシークレットだ。


「何が出るかな、何が出るかな?」


 マスターが持って来た箱。よくくじ引きなどで見るあの箱だ。

 つまりこれはくじを引いて書いてあった物が来ると言うわけだ。


「お、三番!」

「………はい。シャープペンシルです」


 一つ目はアイスをモチーフとしたシャープペンシル。とてもキュートだ。


「次はアタシ!もう二枚一気に行くから!」


 さては十連まで貯めるタイプだなコイツ。

 俺は一回できるようになったら引くタイプだ。


 それはさておき、彼女が引いた物は………。


「一番と四番!」


 つまりクリアファイルとアクリルスタンドだ。


「おぉ、羨ましい」

「どーせ全部当たるまで通い詰める癖に」

「まあな」


 もう一度箱に手を突っ込んで一枚クジを引く。


「………二番だな」


 本当にラッキーだ。配分は知らないがここまで被りは無し。


 ポスターを受け取りながらようやく如月はパフェを食べ終わり箱へと手を突っ込む。


「………何これ?」


 クジに書かれていたのはハテナのみ。今まで見たクジとは違う。


 ………でも今まで俺と師走さんでシークレット以外引き当てたし………。


「シークレット!?」

「嘘、マジ!?」

「おめでとう。これがシークレットの景品、雪姫アイスのぬいぐるみです」


 店中から歓声が響き渡る。


「何?何!?」


「やべぇ!すげぇ!」


「零もどうしたの!?」

「どうしたもこうしたもそのシークレットは、一つしかないんだ!」


 つまり、今如月が当てたのは物凄くレアな代物ということだ。


 ………そう言えば、如月は商店街の福引でもよく一等賞を引き当てるところをよく見るな。

 無茶苦茶運がいいな。


「………じゃあこれは零にあげる」

「マジでか!?」

「もともとそう言う話だし」


「ありがとう!ここは俺が払うわ!つーかもう今ここにいる奴らの全部払ってやる!」


 再び店中から歓声があがる。


「マジか兄ちゃん!」


「太っ腹だぜ!」


「すべてのアイスちゃんファンに感謝を!」


『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』


 どうやら、今店にいる殆どが雪姫アイスのファンらしい。

 親に渡されたクレジットカードに頼るのは非常に癪に障るが今は気分がいい。


「………師走さんも好きに食ってくれよ」

「………写真は消さないから」


「別に今はそんなのいいだろ?俺も師走さんも、他の客もアイスのファンで。隠すことなんてねーだろ」


 少なくともここの誰も、彼女をオタクだなどと笑うことはないだろう。


「………じゃあ、ちょっとだけ。マスター、これ」

「はいよ」


 結局、今日一日カフェはお祭り騒ぎとなり勉強会はおじゃんとなったのだった。


面白かったらブックマーク、評価お願いします!


下にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎から好きな数を押してください!


作者のモチベ向上及び承認欲求モンスターの抑制にも繋がります!


してもらえたら泣いて喜びます!


何卒よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ