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緋色の家

作者: すみのもふ

 存在はしている。どこにあるかは、分からない。もし、あなたが望むなら、現れる…かも?


 知って欲しいけど、知られたくない!?

 【保存版】緋色ひいろの家 特集

 Webライター 万津まんづ 茉美乃まみの



ーーー…


「やりたいこと…ねぇ?」


 そんなものはない。好きなことなら、ある。歌うことが好き。音楽を聴くことも好き。読書も、動画を見ることも好き。だけど、ただ好きということを仕事にするとなると違うなと思う。

 歌手になれるほど、美声でもリズム感があるわけでもない、聴くことが好きなことと音楽を作ることはまた別だろう。読書も動画もそう。自分が楽しみたいだけで、自分の能力で人を感動させたり勝負できるわけではないのだ。


 視点を変えて、お金を稼ぐために仕事を探すようにすると幅広くなる。世の中にはたくさんの仕事があり、何をやりたいのか悩む。そして、無限ループにおちいるのだ。


 周りの人から、「インターン先に誘われている」、「内定をもらった」と喜ばしい報告を聞く度に、やりたいこともない私はダメ人間なのかもしれないという闇がまとう。でも、考えているだけではダメだと思い、気になった求人票を見つけて応募をしてみるも選ばれなかった。

 履歴書がなくなることと神経がすり減ることが比例している気がする。


 追い打ちをかけるように、周りからの「どうだった?」というプレッシャーで押しつぶされそうになり、あるいは、企業からのお祈りメールで存在否定されている気になる。つまりは、私の就職活動はうまくいっていなかった。


 ポニーテールは結び目が痒くなるし、アホ毛が出る。スカートは歩幅が狭くなってなかなか進まないし、寒い。履きたくもないパンプスはふらつくし、足が浮腫むし蒸れる。三足組で千円のストッキングは、すぐ伝線する。


「はあ」


 精神的にも肉体的にも疲れ、休める場所、癒される場所を求め、どこかのカフェに入ろうと見渡すと、一戸建てが目に留まる。

 周辺環境に馴染むモダンな家だけど、左右非対称の屋根やあまり見ない外装で目を引いた。二台分の車を置けそうなガレージと焦茶の門扉、外柵、庭園灯など、こだわりを感じる。表札には、“緋色の家”と書かれていた。


 住宅なのか、店舗なのか、店舗併用住宅なのか見分けがつかず、漏れる灯りに数秒の夢を見ていると、玄関から人が出てきた。


「いってらっしゃい」

「今日もありがとう。楽しかった。ここは、私の本当の家だよ」

「緋色の家は、あなたの側にあります」


 二十代後半から三十代前半くらいの女性二人が会話を交わし、一人は私の方へ歩いてくる。淡いピンク色のコンクリートを鳴らしながら歩き、私に軽く頭を下げてから通り過ぎていった。

 残った一人の女性は、その背中が見えなくなるまで見送り、切り替えるように瞼をしっかり閉じてから私に向かって歩いてきた。


 なびく黄金の髪、優しく細められた目、スッと通った鼻筋、口角が上がった薄い唇。歩く姿はモデルのように堂々と、美しく、コンクリートがランウェイに見えた。


 この人をどこかで見たような気がする。私もこの人に影響を受けて商品を調べ…注文して飲んでみて美味しかった記憶が蘇った。


「紅茶の……」

「あ、気づきました?」

「『私の美しさはこの紅茶から』!」

「正解です。あれだけ話題になったら、さすがに気づきますか」


 “突如現れた紅茶の女神”と騒がれ、出演した紅茶のCMの商品は爆発的に売れ、生産が間に合わず、しばらく入荷待ちが続いた。紅茶の美味しさも評価され、特に専門家や著名人からも好評で、ネットにはたくさんの高評価で溢れた。

 人から人へと噂が無数に広がり、今では紅茶というワードで彼女を思い出す人も少なくない。一躍時の人となった彼女の正体を知ろうとする者もいたが、彼女はそのCM以外にメディアで姿を見せることはなかった。


 その彼女が、今、私の目の前にいる。


 想像の彼女よりも、背が高くて細い。レースの黒のワンピースの上に淡い水色のカーディガンを羽織る彼女が、瞬きや呼吸をするたびに彼女が生きていることを実感し、存在をあがめたくなる。CMの人としてではなく、令嬢としてでもなく、同じヒト科の分類群としての圧倒的なオーラに、だ。


 以前、私は芸能人を見かけたことがあるが、ここまで感じなかった。「ああ、芸能人だ」ぐらいに思って、人混みから脱出した。なのに、彼女には思考を奪われてしまう。動けなくなり、凝視するしかなくなる。私は、情けない肉の塊と化する。

 私にそうさせる、彼女の力とはいったいなんなのだろう。


「“妖精の微笑み”、私も飲みました」

「ありがとうございます。いかがでしたか?」

「封を開けた瞬間から、紅茶の香りが広がって癒され、お湯を入れて蒸らしている間はどんな味がするのだろうと心を躍らせました。そして、飲んでみると、厳選された成分を抽出したうまみが私に幸福感をもたらしました」

「ふふ」


 口元に手を当てて、上品に笑う。


「よかったです。お気に召したようで。あたしも、大好きなのです」


 彼女の笑顔で、周りの空気が明るく変わった。癒し効果を感じつつ、柔らかな表情と潤った小さな唇からどんな言葉が紡がれるだろうと期待に胸を膨らませた。そして、彼女からの言葉とその表情に私は胸を打たれた。

 私にとっての紅茶のような彼女に感動したのもあるし、「大好き」という言葉で私の存在を肯定されたような気がしたのだ。


 大好きなのは紅茶のことで、私のことではないことは分かっている。だけど、同じ紅茶が好きという彼女の共感によって、無関係にも思えた自分が認められたような、そんな気持ちになった。


「もしよろしければ、緋色の家でお話しませんか?」

「緋色の…家?」

「あなたの居場所になるかもしれません」


 にっこりと笑い、颯爽と歩き出した彼女についていく。扉をくぐると、二階へと続く大きな階段が待ち構えていた。その奥には、白や茶色を基調とした内装が広がり、清潔感やスタイリッシュさがある。初めて来た場所だが、自分が実際にこの場所で生活をする想像もできる雰囲気だった。


「紅茶の用意しますので、お掛けになってお待ちください」

「あ、ありがとうございます」


 大型のテレビとL字型の白いレザーソファーに圧倒され、返事が遅れる。彼女がキッチンに向かうと、私はガラステーブルの椅子を引き、腰を下ろした。

 視界に映った、傷や汚れのついたパンプス。身につけているスーツは、型崩れを起こしている。


「アッサムティーです」


 紅茶が入ったティーカップと一緒に置かれたのは砂糖やミルク、スライスされたレモン、蜂蜜、ジャム、そして、クッキーやチョコレート、ミニシュークリームなどが乗った華やかなお皿だった。


「お好みでどうぞ」


 正面ではなく、対角上に座った彼女。正面や隣に座られると緊張してしまうので、ありがたかった。


「ここは、カフェですか?」

「カフェではないです。私が勝手にお出ししているだけです。情報収集も兼ねて」

「例えば、アッサムティーをそのまま飲むか、アレンジするかどうかということでしょうか?」

「そうですね」

「いただきます」


 キラキラとしている、濃い赤褐色の小さなオアシス。カップを逆時計回しにし、取っ手を右側にしてティースプーンを向こう側に置いた。そして、一口飲んだ。

 温かさと甘味が、じわじわと体に浸透していく。カップを置き、取っ手を左側に、ティースプーンは手前へ戻してから砂糖を入れ、混ぜながらミルクを加えた。


 私の様子を伺いながら、彼女も上品に紅茶を口にした。容姿だけでなく、所作まで綺麗な人だな。


「ミルクティーにされたんですね」

「アッサムティーはミルクティーで有名ですから」

「ええ。確かにそうですね」


 しばらく紅茶を味わっていると、二階から複数の男女の声が聞こえてきた。革靴やヒールの音を鳴らしながら階段を下りてきた人たちは、穏やかな表情の彼女に声をかける。


「今日も、お世話になりました。緋色さん、紹介します。今日できた新しい友だちの、ジェーンです!」

「ハーイ、ヒイロサン! コースケトトモダチ、アナタノオカゲデス」

「わあ。よかったですね。あたしもお二人が仲良くなられて嬉しいです」

「これからジェーンとご飯を食べに行くんです。また来ます」

「行ってらっしゃい。お待ちしてます」


 日本ではあまり見かけない特徴を持つ人々も交ざって、和気あいあいとしながらこの場を離れていった。ここは、交流場所なのだろうか。


「ふふ。本当に嬉しいです。この緋色の家がきっかけで、人の輪が広がっていくことも」


 緋色さんと呼ばれた女性は、ティーカップを置き私を見つめる。体に緊張が走り、時の流れが遅く感じた。


「ご案内しましょうか? 緋色の家を」


 それから、緋色さんは詳しく話をしてくれた。この緋色の家には、老若男女を問わず多くの人が訪れてくると。その目的も様々で、先ほどのように他者と交流をするためや個人の趣味を堪能するためのようだ。

 ミニパーティー会場や防音が整った個室、三百六十度好きなものに囲まれる個室、真っ暗な個室など、使用者によって部屋もカスタマイズされていると言う。


「緋色の家を始めたきっかけは何ですか?」

「暇つぶしです」


 予想外の言葉に、返す言葉が見つからなかった。ぽかんとする私を見て、緋色さんは面白そうに笑った。口に添えられた手が白くきめ細やかく、爪は綺麗に揃えられ、シンプルな装飾がされていた。


「冗談です。お気に入りの骨董品こっとうひんを飾りつつ、保管できる場所を探していた時に、今まで会ったことのないタイプの方々とお会いしました。話を聞いてみると、悩みを抱えた方がほとんどで、あたしになにかできないかなと思ったことがきっかけです」


 目線が下がると、自分の手が映る。肌は乾燥でシワが目立ち、爪は形がバラバラでささくれもあった。同じテーブルを囲んでいるのに、置かれている状況に差が大きく、惨めな気持ちになった。


「骨董品をご覧になりますか? 貴重な物ばかりで五百年前の油彩画や希少価値の高い茶碗、とある時代の宝とされていた壺など、普段目にすることのできない物ばかりなんですよ」


 彼女は、遺伝子、お金、環境…多くのことに恵まれ、今まで苦労をせず生きてきたに違いない。紅茶メーカーの令嬢で、容姿もよくて、CMに出ればみんなにチヤホヤされて、緋色の家では頼られて。私みたいに「やりたいことはなんだろう」なんて悩みもしないのだろうな。

 同じ空間で、同じように呼吸をしているのに、人間の格が天と地ほど違う。ここにいればいるほど、取りつくろっている自分が露呈してしまいそうで怖かった。


「私…帰ります」


 私は椅子から立ち上がり、えない黒いバッグを手にした。私が掴んでいるものは、そんなものだ。私にとって、価値がないものばかり。


「あなたにとって、緋色の家は居場所にならなかったみたいですね」


 緋色さんは眉毛を下げ、困ったように笑った。私は、複雑な気持ちになりながらも小さく頭を下げ、歩き出す。

 緋色さんに出会った時は美しさに見惚れていたけど、今は早く緋色さんを私の中から追い出したかった。そうしたら、心のモヤモヤが消えるはずだ。


「不平等だ、と言いたそうな顔をされてますね」


 足を止める。辺りに不穏な空気が漂い始める。


「型に(はま)れば、それなりの幸せが約束されるとでも思ってましたか?」

「………」

「あたしに怖気(おじけ)付いて、尻尾を巻いて逃げるのですね」

「驚きました。緋色さんに、そんな一面があるのですね」

「金持ち喧嘩せずって言葉がありますが、勝てる喧嘩はするんです」


 緋色さんは、正しい。私は、自分を変形させてでも無理矢理一般的な人になりきれば幸せが訪れると思っていた。でも、全然そんな気配がなく擦り減っていくばかりだった。自分の命を削りながら生きている感覚だった。

 そんな時、緋色さんに出会い、自分と緋色さんを比較しその圧倒的な差に不平等だという気持ちを抱いた。


 でも、緋色さんにはお金があったから心の余裕があり、自分を曲げずにいられたり暇つぶしにお金をかけられたりするのだから、羨やむことは仕方のないことではないのだろうか。

 貧乏暇なし。そんな余裕は、私にない。


「自分を守ることで頭がいっぱいで、想像もされないのでしょうが、あたしは血の滲むような努力をしてきました」

「……」

「令嬢として恥ずかしくないよう英才教育を受け、寝る間も惜しみ、必死にしがみついてきました。できることが当たり前の世界で生きていくことが、どれほど辛いことなのか分かりますか?」

「……」

「あたしは決して、辛いアピールをしているわけではありません。努力をしてきた、と申し上げてます。そして、今の地位も、名誉も、財力も、美貌も手に入れました」

「……」

「あたしからしてみれば、あなたと平等なのは納得できませんね。費やした時間と苦労が違うのですから。それに、憧れて努力するならまだしも、うらやんでねたんで何になるのですか?」

「……」


 私が苦しかったように、緋色さんも自分の世界で苦しんで生きてきたんだ。私は、自分だけが辛い思いをしていると悲観して、緋色さんはなにもせずに欲しい物を手にしていると思い込み、勝手に落ち込んだ。なんとみっともなくて情けないのだろう。

 緋色さんといると、自分の隠していた弱さが露わになっていく。見たくなかったものが見えてくる。


「緋色さん、紅茶入れたのですがいかがですか? ダージリンです」


 気配なく現れた少女は、緋色さんの答えを待たずにテーブルに紅茶を置いた。そして、もう一つを続けて並べる。おそらく、私の分だろう。


「ありがとうございます。いただきます」


 緋色さんの言葉に片方の口角を上げた少女は、ゆっくり足音なく二階へ上がっていった。

カタンとカップとソーサーが触れ合った音がした。


「彼女は、他者の近くにいると感情が自分に流れ込んでくるように感じる気質があるようで、ここでは自衛をしているんです。音も、視界も遮断した部屋で過ごしてます。そんな彼女が、ダージリンを持ってきたようです」


 ダージリンは“紅茶のシャンパン”と言われ、世界三大銘茶の一つらしい。リラックス効果の高い紅茶とされているため、彼女が紅茶を淹れたのは落ち着けという意味なのかもしれない。

 椅子に戻り、香りを嗅ぐ。マスカテルフレーバーの爽やかな香りが鼻腔をくすぐった。


 口に含むと、すっきりとした渋みやコクを感じ、自然と肩の力が抜ける。ここで初めて、体に力が入っていたことに気がついた。


「紅茶には、たくさんの種類があります。ストレートティー、フレーバーティー、ブレンドティー、それに飲み方も水出しやミルク、レモン、はちみつ、ジャムなど入れても美味しい。アッサムティーをミルクティーにして飲むと美味しいのは事実ですけど、少し冒険してみてもいいのではないでしょうか? 必要であれば、お手伝いします」


 映し鏡の彼女の手を借りれば、自分のいろんな私が見えてくるのかもしれない。そして、いずれは合わせ鏡で自力で見れるようにしたい。


「先ほどは、申し訳ございませんでした。緋色さんにご相談したいことがあります」



ーーー…


 後日、緋色の家に向かった私は、異様な光景を目の当たりにした。緋色の家に人が殺到し、辺りの道路ですし詰め状態になっていた。

 私は人波に揉まれながら前へと進み、やっと玄関前に到着すると、緋色さんが一人で対応していた。貫禄や余裕のあった緋色さんが、この騒動に困惑の表情を見せていた。


 大勢の人により道路が封鎖され、車は渋滞を起こし、近隣住民からも騒音で通報され、騒然とした現場に駆けつけた警察官が対応に追われた。その様子がネットでさらに拡散、テレビにも報道された。


 後で事情を聞くと、とある人物が掲示板に一通のメッセージを書き込んだことで、緋色さんのファンが押しかけたそうだ。そのメッセージには緋色の家の住所と「紅茶の女神は実物も美人だったw」とマウントが書かれていて、場所がバレたと言う。

 その人は匿名のため、誰が書き込んだのかは分からないが、あの“紅茶の女神”を一目見ようと次から次へと人で溢れた。


 知っている人だけが知っている、隠れ家だった緋色の家は、こうして公になってしまった。


 緋色さんに相談し、計画をしていた段階だった私は、再び緋色さんに相談をした。続行していいとのことで、私はたっぷり時間をかけ、丁寧に間違いのないよう言葉をつづった。


ーー緋色の家を必要としている人はもっといるはずです。その人に向けて、緋色の家の良さを伝えたいんです!


 そう言った私に、優しく微笑んでくれた緋色さんに応えるためにも、私はwebライターの道に一歩踏み出した。



ーーー…


 紅茶はイギリスに伝わった当初、薬として飲用されていたらしい。紅茶の効果のメリットとして挙げられるのは、身体の酸化を防ぐ抗酸化作用があり、リラックスや安眠効果があるテアニン、ダイエット効果にポリフェノールやカテキン、そして、カフェインが含まれていること。デメリットとして、飲み過ぎによる腎機能の悪化、貧血症状を招くリスクや骨が脆くなるリスクがあるそうだ。


ーーこれについてどう思われますか?

 薬も飲み過ぎれば毒になると言いますし、人間にも、紅茶にも、良い点や気をつける点はありますよね。


 そう話すのは老舗紅茶メーカーに勤める如月結架(きさらぎゆうか)さん。広報部として自らを広告塔としたり、メディアに掲載される情報の対応や社内報の作成をするなど多岐にわたり活躍している。


ーー緋色の家はどのような場所ですか?

 紅茶のギフトセットのような場所です。一つの箱にたくさんの種類の紅茶があるように、緋色の家にも悩みを抱えた方がたくさんいらっしゃいます。ギフトセットで飲み比べができて楽しめるように、緋色の家が楽しめる場所の一つになれたらいいなと思ってます。

 ある方にとっては緋色の家が“第二の家”、あるいは“安全基地”、あるいは“秘密基地”であるように、自分らしくいられる場所となってほしいという願いもあります。


ーー緋色の家は悪意のないファンによって場所が拡散され、如月さん目当ての交流会場と変わり、元々利用されてた方には居心地の良い場所ではなくなってしまいました。

 また作ればいいんです。何度でも。緋色の家はあたしのいる場所にあり、あなたのいる場所にあります。家や場所が変わっても、あたしやあなたがいる限り、緋色の家は存在するんです。


ーー最後にメッセージをお願いします。

 緋色の家を居場所にしている人からのメッセージを紹介しますね。「緋色の家に、緋色さんに出会えたおかげでなんとか生きることができてます。家や学校、職場で集団行動を余儀なくされ、ストレスでどうにかなりそうでも、緋色の家があるからもう少し頑張ってみよう、緋色の家にいる自分のことは好きだと思えます。自分にとって、緋色の家は心を癒す場であり、落ち着く場であり、元気をもらえる場でかけがえのない大切な場所となりました。もし、どこにも居場所がない人がいるのなら緋色の家を探してみて下さい。あなたが必要とするなら、きっと見つかります。あなたのお越しをお待ちしております。如月結架」


ーーえ、如月さん自身の話だったんですか?

 他人のためにやっていたことが、結果的に自分のためにもなっていたみたいです。



ーーー…


 静かな住宅街に迷い込んだ人物がいた。キョロキョロと自分の行く道を探すも、知らない道に怯え、足が竦んでいた。


「どうしよう…どうしたらいいんだろう。このままじゃ、先に進めない。助けを求められる場所はないかな。あれ、あの建物はなんだろう。……緋色の、家?」






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