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動き出した敵

 ユーマの専用機が接収した基地から離れたイーステル領の前線基地へ搬入されると聞き、ユーマを始め、カナタとヒノカも前線基地へと帰還する運びになった。

 

「俺達3人が呼び戻されたって事は」


「ああ、始まるな」


 輸送機の中でユーマとカナタは屈むように固定されている機体を連絡通路の手摺に寄り掛かり、見下ろしながらそんな事を話していた。

 そんな2人の間にユーマを探していたヒノカが「2人だけで何話してるの?」と不機嫌そうに頬を膨らませながら割り込む。

 

「ああいや、新型機楽しみだなあって話をな」


「本当に? 浮気したら許さないからね?」


「あのなあ。義姉になる人口説いたりする訳無いだろ」


「ははは。安心してヒノカ私は奥さん一筋なんだから」


「それはまあ、知ってるけど」


 和やかな空気が3人を包んでいた。

 しかし、この時既に敵が動き出している事を知っているユーマとカナタの心中は穏やかになりきれずにいた。

 そして、3人がイーステル領内に戻り、輸送機から機体を搬出している際にそれは起こった。


「ユーマ、敵が動いたよ」


「っち。ゲームの時より早いな。まあ全部が全部ゲーム通りな訳無いか」


 シロガネのコックピット内、真正面一面モニターになっている端にカナタの顔が小窓化されたウインドウに映され、通信を繋いだカナタはユーマとヒノカの機体に衛星から送られて来たある映像のデータを転送した。


「ああ。最悪だよクソったれ」


「な、によこれ。戦艦? いや、周囲の建造物の大きさから逆算すると、もっと大きい?」


 ユーマとヒノカはカナタから送られてきた画像を見て、ユーマは苦虫を噛んだ様に顔を歪め、ヒノカは目を丸くして画像に釘付けになっている。

 画像に写されたソレは攻略目標である最も重要なアステリアの基地その物だった。

  

 アステリアとイーステルの間にある基地の中で最大の要塞基地であり、アステリアを守る基地としては首都や首都近郊に防衛基地が存在するが実質この要塞基地が最終防衛ラインとなっている程には戦力が集まっている。


 戦力だけでは無い。

 要塞基地と言うだけあって周囲数kmの敷地内にはミサイルサイロや固定砲台が所狭しと並んでいる。


 そんな基地が、移動したと言うのがモニターに写し出された分割された2つの画像から確認出来た。

 さらにもう一つ、カナタは部下に命じてその基地に偵察にやったドローンが捉えた映像も2人に送った。


 そしてそこには確かに四つ脚で迫る要塞基地が映し出されていた。

 全高約400m、全長約2000m、全幅約300mという巨体だ。

 その重量たるや数トン、数十トンではきかない。

 巨体の両端には長距離を狙撃可能な大口径レールキャノンも装備されている。

 要塞基地の四つ脚が如何に丈夫だろうと本来なら動くことすら難しいだろう。 

 ならその超重量を如何にこの四つ脚で支えているのか。


「GFSであの巨体を浮遊させている、と?」


 その移動要塞の件を共有しようと、ユーマとヒノカはカナタに着いて前線基地の司令官室へと足を運び、カナタの後ろでカナタと司令官の話を聞いていた。


「はい。私が送った諜報員からの連絡の中に情報がありました。詳細は後程データで」


「君の選んだ人間からの情報なら問題なさそうだ。データ、頼むよ」


 もちろん諜報員などいない。

 全てカナタのでっち上げだが、ソレを信じてしまうほどにカナタはイーステル軍で信用を勝ち取っているわけだ。


「さて、となるとだ。ユーマ、お前はまず格納庫へ行って新型機を受領して来い」


「ヒノカはユーマのシロガネを使えるようにしておきなさい。時間が惜しい、2人は行動を開始しろ」


「了解」


「わ、私がシロガネにですか⁉︎」

 

「大丈夫、貴女なら出来るわ」


「行こうヒノカ。カナタ隊長から命を受けた以上行動開始だ」


「う、それは、そうだけど」


 ヒノカの手を引くユーマにカナタはウインクをして2人を見送るが、カナタが地球にいた頃は男だと知っているユーマにとっては何とも心の躍らないウインクだった。

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