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記憶の中の惨劇ルート

 ユーマとヒノカが最前線に合流してからというもの、イーステル軍の進軍速度はまさに破竹の勢いであった。


 軍が当初予定していた作戦全てを繰り上げる程の進軍速度に、最前線の基地司令部どころかイーステル軍の本部に詰める軍の官僚達も浮足立ち「このまま最重要拠点まで攻略出来るのでは?」とまで言われる程にはユーマ達は戦果を挙げていたのだ。

 

 しかし、その快進撃に苦言を呈する者がいた。

 誰あろう、その最前線の更に一番前で暴れ回っていたユーマとカナタ本人達だった。


「カナタ隊長、何か変だとは思いませんか?」


「待てユーマ、秘匿回線に切り替える」


 本日の戦闘を終え、友軍に警戒を頼み、一時補給の為に接収した基地に戻る最中、シロガネのコックピットからユーマはカナタに通信を繋いだ。

 モニターに映るカナタに見えるように人差し指でユーマは自分のこめかみをトントンと軽く叩く。

 それはユーマとカナタの間で決めていた合図の一つ、転生前の知識にまつわる話をする時の合図だった。


 草木の生えない焦茶色の岩地を進むユーマとヒノカ、マシロ達特務隊グレイスの面々の中で、現在通信を繋いでいるのはユーマとカナタだけとなる。


「なあ、敵が少なくないか?」


「確かに、想定より大分少ないよね。もちろんコレはゲームじゃないからさ、リスポーン出来ないからってのは有るけど」


「いや、まあそれもあるけど。単純に攻略が簡単過ぎる。それに有人機の他に無人機まで出て来てるし。なあ、前世でやってたあのゲーム、家庭用ゲーム版プレイしたか?」


「もちろんプレイしたよ、いやぁ面白かったよねえ、ストーリーモードの分岐が細かく作り込まれててさあ」


「ああ、それだよそれ、その分岐のうちの一つのルートと今の状況が似てる気がするんだ」


「ははは。まさか、そんな事……いや待て、あり得ると思うかユーマ」


「CFが存在する世界だぞ、あり得るだろ」


「いや、いや無い無い。流石にそのルートはあり得ないだろ。もしアレが、あんな物が本当に作られてるとしたら」


「ああ、イーステルどころか全人類が滅びる」


 ユーマとカナタが話しているゲームの分岐ルートの一つ。

 それはゲーム内で最も難易度が高いルートで、かつミッション失敗時の結末がこの惑星の人類どころか全生物の絶滅と言う最悪のバッドエンドだった。


「カナタ、もしアレが本当に建造されていたらどうする?」


「どうするもこうするも無い。攻略して、迅速にアステリア本国首都を攻略しないと」


「ああ、軍人はまだしも一般市民が大勢死ぬ」


「一度ドローンで偵察してみよう。どうせ次の攻略目標だった場所だ」


 こうして臨時の補給基地に帰ったユーマ達だったが、戦勝に浮かれるグレイスの面々の中、ユーマとカナタだけが何故か浮かない顔をしているという状況が出来上がっていた。

 その様子を心配したヒノカが格納庫にてシロガネを浮かない顔で見上げるユーマに「何かあったの」と声を掛けた。


「いや。今日の戦闘、敵が随分少なかったなあって思って」


「えっと、それはもっと戦いたかったとかそういう?」


「違う違う。アステリアとイーステルの戦力差は10対1。単純計算でアステリアが10倍こっちより多い。なのに今日の戦闘は敵が同数いたかも怪しかった」


「つまり?」


「確信は無いけど、前線を捨てて何処かに集結して何か作戦を実行中とか、かな」 


「うーん。どうなんだろう」


 ユーマの言葉に腕を組み考えるヒノカ。

 そんなヒノカをユーマは微笑みながら見るが、また直ぐに現在の乗機シロガネを見上げ、この後ゲームの世界で起こった惨劇を思い出していた。


 アレを止めるには新型が必要になるなあ。


 まだ見ぬ専用機の事を想いながらユーマは目を閉じた。

 そしてその専用機は数日後、ユーマの元に届けられる事になる。

 それはつまりイーステル軍のエースに敵を引き付け、重要拠点を墜とす作戦。ホワイトアウト開始へのカウントダウンになるのだった。


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