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カナタへの報告

 圧倒的、という表現が最も正しいだろうか。


 ユーマとヒノカが以前所属していた基地や、北方基地と似た構造の前線基地内。

 格納庫横にあるシミュレータールームにて行われた模擬戦で、ユーマは圧倒的な力で挑戦者を撃破していった。


「おいおい、被弾すらしないぞアイツ」


「ハガネでアレだけ動けるのか、まるでマシロ隊長を見てるみたいだ」


「隊長のシロガネを受け継いだだけはある、という事か」


 ユーマの実力に懐疑的だったライダー達は考えを改め、ユーマの操縦技術を称賛するが、アミナだけはユーマの実力を認められず、他のライダーに続きシミュレーターへと足を踏み入れた。


「ユーマ・カザギリ! シロガネを使え!」


「まあ、構いませんが」


「私のハガネ改で、貴様の化けの皮を剥がしてやる!」


 ユーマに対し、通信越しで気合十分に言ったアミナとユーマの模擬戦が始まったが、結果は観戦していたライダー達の予想通りユーマの圧勝だった。


 フィールドは廃都市。


 ユーマのシロガネはアミナの搭乗機体であるハガネの現地改修型、ハガネ改を探すために得意の壁蹴りでビルの屋上へと向かう。


 そしてビルの屋上を跳んで移動し、眼下に見つけてもいないユーマの動きを警戒しているハガネ改を見つけると、ライフルとブレードを構え、ビルから飛び降りながらライフルを発砲した。


 数発ハガネ改に銃弾をヒットさせると、ハガネ改は盾を構えて後退していく。


「へえ、結構硬いんですね」


「っく、卑怯な!」


「……戦場で同じ事を言いながら死ぬつもりですか?」


 ブレードをビルに刺してブレーキ換わりにし、着地するシロガネ。

 その瞬間を好機と見たか、アミナは盾を捨て、ブレードを抜いてシロガネに迫り、ブレードを横に凪いだ。


 その斬撃を、ユーマはシロガネを跳躍させ、アミナのハガネ改の頭部に膝蹴りを食らわせて体勢を崩すと、続いて着地後に水面蹴りでハガネ改を転ばせ、仰向けに倒れたハガネ改のコックピットにブレードを突き刺した。


「嘘、負けたの?」


「手合わせありがとうございましたアミナさん」

 

 通信越しに礼を言い、シミュレーターから退出するユーマ。

 一方でアミナはしばらくシミュレーターの中で呆然としていた。


 拍手喝采、とはいかなかったが、先輩ライダーに囲まれ称賛を受けるユーマは照れ臭そうに笑う。

 その様子を見ていたヒノカが微笑み、ヒノカの隣に立つカナタはそんな妹を見てニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


「さあ、諸君余興は終わりだ! 持ち場に戻れ!」


「「「イエス! マム!」」」


 カナタの声掛け1つでライダー達はシミュレータールームから退出していく。

 アミナもカナタの命令に飛び起きるようにシミュレーターから飛び出し、シミュレータールームを後にする。

 シミュレータールームに残ったのはカナタとユーマとヒノカの3名のみだ。


「さて二人共、ようこそ前線へ。

 推薦していたとは言え、随分早いグレイス転属だったな」


「カナタが、失礼。

 カナタさんが俺達を推してくれたおかげです。

 こうして約束を果たしてくれた以上、俺達も前線で力になります」


「そうね、姉さんとユーマが近くにいてくれるなら何も怖くないわ」


「へえ~、カザギリ少年の事をユーマって呼ぶようになったのねえヒノカ。

 もしかして惚れちゃったの?」


「惚れたわ」


「え? ほんとに?」


「まあ惚れたも何も、俺達婚約しました」


 ユーマとヒノカの発言に、カナタは目を丸くして2人を見比べる。

 その様子が可笑しくてユーマはクスッと笑い、ヒノカは照れくさくなったか、頬を染めて俯いてしまった。


「ヒノカ。と、父さんは知ってるの?」


「あ、えっと。そのお父様に婿に来いってユーマが言われて」


「付き合い始めたその日に婚約者になりましたよ」


「ユーマが弟になるのか。ハハ、面白い! 人生は面白いなあ。アハハハハ!」


 シミュレータールームにカナタの笑い声が響く。

 喜んでくれたのが嬉しくて、ヒノカも笑顔を浮かべた。

  

「じゃあカザギリ少年と呼ぶのも余所余所しいか。いつの間にか弟が出来ていたとはなあ。

 改めてよろしく、ユーマ。

 私の事はお姉ちゃんと呼んでも良いわよ?」


「まあプライベートでは姉さんとでも呼ばせてもらいます」



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