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ヒノカの父親

「ただいま帰りました。お久しぶりですお父様」


「お初にお目に掛かります、ユーマ・カザギリです。

 この度は招待していただきありがとうございます」


 和室の上座に敷かれた座布団の上に座るヒノカの父親にユーマとヒノカは深々と礼をした。

 良く言えば恰幅の良い、悪く言えばやや太ったヒノカの父親は2人の様子に嬉しそうに微笑んだ。


「おかえりヒノカ、報告は聞いているよ。

 グレイスへの転属おめでとう、と言えば良いのかな。

 娘を二人とも最前線に送るのは全くおめでたくは無いんだが――」


「お父様――」


「ああ、済まないねヒノカ。

 だが分かっておくれコレが親心と言うやつなのだよ」


 困ったように眉をひそめるヒノカにヒノカの父親も困ったように苦笑する。


 ユーマが当初想像していた軍人家系における厳しい父親像は良い方向に裏切られ、目の前で苦笑するヒノカの父親は娘達を愛するただの父親の様に見えた。


「はじめましてユーマ・カザギリ君、カナタが帰ってきた時に君の事を聞いたし、先の活躍も軍から報告を聞いたよ。

 イーステルのライダーの教練書に載るほどの活躍だ。

 そんな君に聞きたい事があるんだが……ああまあなんだ、立ちっぱなしも何だし座り給え」


 早速本題か、とユーマは身構える。

 軍のお偉い方が自宅に呼んだのだ、何も無く、挨拶だけで終わる弾もない。

 特別任務か、娘に近付く男の身辺調査か、ユーマは様々な可能性を考慮しながら、指し示された座布団に正座で座ると膝の上で拳を握った。

 

 ヒノカもユーマの横に敷かれた座布団の上で正座すると、膝の上で手を重ねて置く。


「あの、聞きたい事とはどのような事でしょう」


「……ふむ、ユーマ君、変な事を聞くが……今君には好きな女性はいないか?

 いや何、ヒノカは見た目は可愛いんだが、いかんせん真面目が過ぎるのだ。

 君は経歴に後ろ暗い所は見当たらないし、将来も有望だ、単刀直入に言わせて貰うとだなあ……娘の恋人になってやって欲しいな、と」


 言われてユーマとヒノカは顔を見合わせて笑う。

 そんな二人を見て何か察したようだ。

 ヒノカの父親も安心した様に微笑んだ。


「えっと、お父様に何て言えば良いのか迷っていたんだけど。

 私達、その、えっとビジネスパートナーとしてでは無く、恋人としてお付き合いを始めたの」


「俺、失礼。

 僕は将来ヒノカさんとの結婚も考えています。

 気が早いのは重々承知していますが、ヒノカさんを僕に下さい」


「いや、それは駄目だ」


「え?」


 この流れでまさかの拒否につい声を挙げるユーマとヒノカ。

 しかし、ヒノカの父親のそれは二人の結婚に反対という意味ではなかった。


「本来なら、カナタの旦那さんに家を譲りたかっんだが、アイツは同性を愛した。

 それ自体は別に構わないんだ、今の時代同性同士でも子はなせるからね。

 しかしなあ、やっぱり私は男の家族も欲しい訳だよ。男一人は肩身が狭くてね。

 だから、ユーマ君がマシロの家に婿に来るならヒノカとの結婚は認めるし、祝福するよ」


「僕にはもう家族はいません、皆十年前に死にました。

 ヒノカさんとの結婚を認めて貰えるなら、僕は喜んで婿入りします」


 ユーマは真っ直ぐヒノカの父親の目を見て言う。

 そのユーマの言葉にヒノカの父親は満足そうに微笑んだ。


「ねえユーマ、いつの間にか結婚するしないの話になってるんだけど」


「良いじゃないか。遅かれ速かれ、いつかは言わないといけなかったんだから」

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