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告白

 地下の高速トンネルは島国であるイーステルの本土にももちろん張り巡らされている。


 大陸側の地下高速道路と違うのはそのトンネルの壁が一部巨大なモニターになっており、ランダムで海や山の風景を映し出している区間がある事だろうか。


 なぜ風景を映すのか。

 設計者いわく「同じ壁を見続けるのは退屈するだろ」との事だ。


 そんな風景が映されたモニターをボケっと眺めていたユーマの前に座るヒノカが口元を抑えてクスッと笑う。

 

「……どうした?」


「ごめんなさい。貴方のボーッとしてる顔が可愛いなって」


「可愛い? 俺が?」


「だってカザギリって、基地にいるといっつも眉間に皺寄せて恐い顔してるから」


「そうかな――」


 足を伸ばして座れるほど広い高級車の後部座席に腰掛け、ソファのようなシートに包まれながら、ユーマは自分の眉間を擦った。

 

「自分じゃ気付けないもんだな、ごめん気を付ける」


「良いわよ別に…………ねえカザギリ、貴方って今気になってる女性はいる?」


 2人きりの後部座席、ヒノカは予てからユーマに聞きたかった事を思い切って聞いてみた。


 当初。それこそ2人がまだ候補生だった襲撃にあう前。

 ヒノカはユーマに対して真面目ではあるが、それ故に融通がきかない。

 戦場に出るには弱気な男性。

 そんな印象を持っていたし、実際ユーマはそんな少年だった。


 しかし襲撃の最中、前世の記憶を取り戻したユーマはヒノカにとって真面目な所は変わっていないが、冗談を言うユーモアもあり、弱気な印象はどこへやら。

 今や最も心強い同僚。ビジネスパートナーとなっていた。


 人を好きになるのに理由はいらない。

 ヒノカは恋愛をした経験はないが、確実にユーマに好意を抱いている。

 その感情に嘘は吐けない、間もなく2人はグレイスの一員として前線に赴く事になるだろう。

 ヒノカは戦場で余計な事を考えるくらいなら、聞いてしまおうと思ったのだ。今、ここで。


「気になってる女性、か……いるよ」


「え、あ、う…………そう。そうなんだ」


 ユーマの応えに、ヒノカは俯く。

 目頭が熱くなるのをヒノカは感じていた。

 

 これが失恋というやつなのね。

 こんなにも苦しいなんて。

 こんなにも悲しいなんて。

 カザギリは一体誰の事を気に掛けているのかしら。

 などなど、様々な感情や想いが渦になってヒノカの頭を巡る。

 

しかし、その感情全てがユーマの「俺はマシロっていう女の子の事が気になってる」という言葉で一気に白紙になり、ヒノカはしばらくフリーズしたように固まってしまった。


 そして、そのまましばらく沈黙したままの2人だったが、ヒノカは徐々にユーマの言葉を理解してきたようだ。

 次にトンネルの壁面モニターの明るい光が車内を照らした時には、今にも泣き出しそうだった表情から一転。

 ヒノカの頬は紅く染まり、なんとも恥ずかしそうに下を向いてモジモジしていた。


「あの、わ、私の事が気になってるっていうのは」


「回りくどい言い回しは嫌いなんでハッキリ言うぞヒノカ・マシロ」


「ひゃい」


「好きだ。君となら不幸になっても良いと思えるくらいには、俺は、君の事が好きだ」


「出来れば幸せにして欲しいです」


「……それは、つまり恋人になってくれるって事で良いのか?」


「あ、あの私、恋愛とかそういうの良く分からなくて、それでも良い?」


「俺も告白なんて初めてだよ。

 お互い初めて同士だマシロ。

 いや、付き合うならヒノカって呼ばせて貰うか」


「なら、なら私もカザギリの事、ユーマって呼んでも良い?」


「もちろんだよ。改めて宜しくなヒノカ」

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