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グレイス任命その後に

 北方基地から帰還してから数日経ったある日の事、ユーマとヒノカはイーステルの本土にある軍本部に呼び出される事になった。


 今期の新兵で、紺色軍服に選ばれた2人が大陸側のイーステル領内に出没していた初心者狩りを完全に撃退したと聞いては、軍本部のお偉方は2人を持ち上げないわけにはいかなくなったのだ。


 軍の広報部は2人を若い英雄と喧伝し、イーステルの若者への軍入隊意欲を煽った。

 若い男女2人、特にヒノカはデザインベイビーとして生まれたので容姿は良い。

 更には2人が襲撃にあってから襲撃部隊撃破までのストーリーはイーステルのニュース番組などでも取り上げられ、話題になっていた。

 新たな広告塔としては2人は最高の素材だったわけだ。


 だが、2人を迎えるパレードもテレビや動画サービスのインタビューも、それは2人が本土を訪れた際のついでに行われた事。


 軍本部がユーマとヒノカを呼び出したのは2人を軍本部直轄の特務部隊グレイスに転属させる辞令を与える為だった。


「ユーマ・カザギリ、ヒノカ・マシロ、2人を今日から特務部隊グレイスの一員に任命する。

 コレがその証であるバッジだ、公務中は襟元に付けるようにな」


「「はっ。 特務部隊グレイスへの転属、拝命致しました」」


 力の象徴である剣と自由を象徴する翼が重なったデザインのバッジを受け取り、敬礼したユーマとヒノカは指示された通りにバッジを襟元に付ける。

 そして、一礼すると本部に詰める官僚達が揃い踏みの会議室を後にした。


「意外に早かったな」


「いや、異常よ? こんなスピード昇進」


「俺達2人の戦果と、前線の状況を鑑みた結果だろう――」


 まあ、カナタの推薦も効いてるのだろうが。

 とは言わず、ユーマはヒノカの前を歩いて軍本部である基地内に用意された自室に向かっている。


 この後2人に予定は無く、任務も無いことからイーステルの本土観光に行く事にしていた。

 もちろん外出届けは提出済。


 前線に送られる前に本土の様子を見ておきたかったというのが理由ではあるが、ついでにヒノカは本家にグレイス配属の報告をしたいと言うので、ユーマはヒノカに付いて行く事にした。


 観光ついでにヒノカの家に行く、というよりはヒノカの家に行くついでに観光すると言うのが正しいか。


 なんにせよ2人は軍用車両で出掛ける算段で準備をして基地の居住施設から外に出たのだが、そこには手配していた軍用車両は無く、リムジン型の高級車が停まって2人を待っていた。


「おー。スゲェ、如何にもな車だなあ」


「あ、多分。アレうちの――」


「ヒノカお嬢様お久しぶりです、御父上がお待ちです。こちらへどうぞ」


 車の横に立っていた男装の麗人、スーツを着た美人なお姉さんがヒノカを確認すると深々とお辞儀をしてから言うと、高級車の後部座席の扉を開いた。


「久しぶりねメディ、元気だった? 会えて嬉しいわ」


「もったいないお言葉、ありがとうございますヒノカお嬢様」


「マシロって本当にお嬢様なんだなあ」


「どういう意味よそれ! もう、ほらカザギリも一緒に来て。良い……よね?」


 気になってる女の子に上目遣いでお願いされて、断れる男がいるなら見てみたいものだ。

 

 そんな事をユーマが考えているとヒノカにメディと呼ばれたスーツを着た美人のお姉さんはユーマを見ると、一礼してから口を開いた。


「主から、ユーマ・カザギリ様にも同行して頂くように申し使っております。どうかお乗り下さい」


「まあ元々付いて行く予定だったので、同行させて貰います」


 メディに向かって礼をしてから、ヒノカに続いて高級車に乗るユーマ。

 そんなユーマの姿にメディは何故か微笑んでいた。

 2人が乗ったのを確認したメディはドアを閉めると、自分は運転席へと向かい、指紋認証で車のエンジンをスタート。

 ヒノカの実家へと向かっていった。

 

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