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弔い

 ユーマのシロガネが、膝を付き地面に伏すオーガの首元にショートブレードを突き立てる。

 頭部を動かす都合上、装甲でガチガチに固めるわけにもいかない場所の1つ。

 人体と同じく首は人型兵器にとり脇部分と同じく最大の弱点である。


 そして、その直下にはコックピットブロックが存在しており、まさにウィークポイントとなるのが人型機動戦車、CFの特徴になっているわけだ。

 

 現状、オーガの首にショートブレードの刃を突き立てているユーマはまさにアーシュの生殺与奪の権利を握っていると言える。


 ひと思いに殺すか。


 そんな考えがユーマの頭を過ぎり、操縦桿に力を込めようとした瞬間の事「おい、一本角のライダー」と眼前のオーガから通信が入った。


「テメェ遊んでんのか。なんでさっさと殺さねぇ。アレか? 弱い者いじめが好きなのか? 楽しいよなあ弱い者いじめは」


「……まだ候補生だった同期を殺した部隊の隊長であるお前がそれを言うのか、アーシュ・ヴィラ・リーラ少尉」


「おいなんで俺の名を知ってる! 誰だ! 誰が俺を売りやがった! …………俺はこんな場所でガキに殺されるのか。

 どうだ今の気分は、最高だろ? 弱者を見下ろすのは最高に気分が良いだろ!」


「…………ああ、最高だよ。

 特に、お前みたいな奴を殺す時はな」


「クソが! クソ野郎があぁあ――!」


 ユーマは操縦桿をゆっくり押し込み、ショートブレードをオーガの首元に深く刺していき、コックピットブロックのアーシュを潰す。

 出来るだけ苦しむように。

 

「クソ野郎は……お互い様だ」


 シロガネのコックピットで、無表情のユーマが

吐き捨てる様に呟く。

 

 生体反応が消えたのを確認して一気にブレードを引き抜いたシロガネは、踵を返して完全に沈黙したオーガに背を向けるとヒノカの援護へと向かった。


 しかしながらヒノカも確実に力を付けている。

 ユーマが援護に到着した頃にはサイクロプス1機を既に破壊しており、2機目のコックピットをライフルで撃ち抜いた直後だった。


「はぁはぁ、カザギリ? あの重装型は?」


「……殺した」


「……そう、なら状況終了ね基地に連絡を入れるわ」


「ああ、頼むよ」


 一旦通信を切り、ユーマは深くコックピットシートに身を預けて深呼吸する。

 そして目を閉じて思う「俺も死ぬ時はコックピットの中だろうか」と。


 目を開き、ユーマは倒れているサイクロプスをモニター越しに確認すると、そのサイクロプスが微かに動くのを見逃さなかった。


 どちらに向けるでも無く、シロガネとハガネ、どちらかに当たれば良いと言わんばかりにライフルを向けようとするサイクロプス。


 しかし、それに気が付かない2人ではない。

 ヒノカのハガネがライフルを向け、引き金を引こうとしたが、ユーマはそれよりも速くそのサイクロプスのライフルに向かってショートブレードを投擲。

 満身創痍、瀕死であったのだろう。

 ショートブレードがライフルを砕いたのを最後にサイクロプスからも完全に生体反応は消えた。


「ごめんなさい、仕留め損なってた」


「いいよ。マシロが無事なら、良い」


「あ、ありがとう」


「さあ、帰ろう。

 北方基地の司令官に報告したら、俺達の基地に帰って、教官と彼奴等の墓前にも報告しに行ってやろう」

 

「ええ、そうね」


 ユーマとヒノカはこの後、北方基地へ帰還。

 数日の哨戒任務の後、北方基地の司令官による敵潜入部隊排除完了の宣言をもって援護要請を解除。


 2人は久方ぶりに元の基地に帰る運びとなった。


 そして、帰還した翌日。

 2人は基地の最寄りの街にある軍人墓地へと足を運び、そこにある教官と同期の墓前に花を供えて黙祷を捧げる。


「仇は討った、安らかに眠ってくれ」


「……教官、みんな。安らかに」


 淋しそうに微笑むユーマにヒノカが寄り添う。

 そんな二人を風が凪いだ。

 まだ日の高い軍人墓地に吹き抜ける風。

 その風が供えた花を空へと運ぶ。

 その光景はまるで花を天に届けてくれているようだった。

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