白い鬼
「その細っこい機体で俺と正面からヤル気かい!?」
ショットガンを構え、シロガネに突撃するオーガに対してショートブレードを構えたシロガネは同じ様にオーガに向かって加速した。
ショットガンの引き金が引かれ、散弾が放たれるが、ユーマは横に大きく回避。
すれ違った2機は発生したGに耐えながらそれでも尚、両足のペダルを踏み込み、再び敵へと突撃する。
「俺と同じで馬鹿の1つ覚えが!」
「お前はコレを受けるか避けるか、どっちだ?」
再びショットガンを構えるオーガに向かって、ユーマは2本持つショートブレードの片方をオーガのショットガンけて投擲した。
それに面食らったアーシュは「破れかぶれか?」と思いつつもショットガンを構えた腕を上げて投擲されたショートブレードを防ぐ。
しかしその直後、アーシュのオーガに衝撃が奔った。
「はあ!? 斬られただあ?! あんなちゃちな剣でか!」
シロガネがオーガとすれ違いざまに斬りつけたのは上がった腕では無く、それによって露出した脇部分の関節。
肘や膝は装甲が覆っていて狙いにくい、しかし、脇にあたる部分は可動域の観点から装甲は施せない。
ユーマはそこを狙った。
脇にあたる部分を斬り裂くと例え切断出来なくても電気系統、油圧系統に深刻な損傷を与えることが出来る。
端的に言えば、肩から先が動作不良を起こして使い物にならなくなるわけだ。
「冗談抜かせよ一本角、ライダーはどんな奴だ」
ここに来て、アーシュの額に冷や汗が滲む。
そして、片腕をだらんと垂らしたオーガにショットガンを捨てさせると、背面のマウントラッチからライフルを装備して構えた。
ショットガンは反動が大きな銃だ、片腕を失っては撃った後大きな隙きが出来てしまう。
アーシュはそれを嫌がってまだ反動がマシなライフルを選択したのだ。
「まだまだ、これからだぜ一本角!」
「同期の仇、ここで討つ」
ライフルを構えるオーガが機体をスラスターを吹かし、後進させながらトリガーを引く。
ユーマはそれに対して盾を背部から取り構えて加速、オーガを追った。
スラスターを吹かしていようとも、機動力ではシロガネが遥かに上。
建屋を曲がったオーガはいともたやすくシロガネの接近を許す。
しかもその手には先程自らが捨てたショットガンが握られていた。
「戦い慣れしてんなあ一本角、面倒クセえ!」
やたらめったらにライフルにて射撃を行うアーシュ。
しかし狙いが定まらない。
後進の為にモニターを気にしながら、更には片腕を制御不能にされ機体バランスも崩れている、命中率は著しく落ち、数発シロガネを銃弾が捉えたが、それは盾で防がれる。
更に、アーシュの憤り、怒りの感情が機体の制御の繊細さを欠く。
またたく間にライフルの残弾はゼロになってしまい、その瞬間、シロガネの持つショットガンが火を吹き、ライフルごとオーガの手首から先をバラバラに砕いた。
「クソッタレがあぁあ!!」
ここまでされては、アーシュもヤケだ。
まだ動く腕部を鈍器にみたて、殴りつける為に腕を振り被った。
「終わりか」
ユーマがその隙きを逃す弾もない。
がら空きの脇に今度は左手の盾を突き刺して捻った。
「まだ、まだだ!」
両手をだらんと垂らしたオーガが今度は自身をぶつけるために機体に制動を掛けるが、後進一杯から全速前進する為には止まる時間が出来てしまう。
その時間があれば、ユーマが後ろに回り込み、オーガの膝裏をショットガンで撃ち抜く事は容易だ。
「馬鹿な。この俺が遊ばれたのか」
両膝を付く様に崩れ落ちるオーガのコックピットのモニターにショートブレードを構えるシロガネが映る。
その姿がアーシュにはまさしく一本角の鬼の姿に見えていた。




