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邂逅

「戦線から離れた後方に、まだこんな戦力を隠しているとはな」


「とんでもないガキだなこいつ」


 前後でシロガネを挟み込み、ブレードを振るブリードとガディアスのオーガ。

 ユーマはそれを的確に処理して尚且反撃するためにシロガネの盾で後ろ手にガディアスのブブレードを受け、機体を加速させてはブリードの黒いオーガ目掛けてブレードを振る。


 攻めている筈のブリードとガディアスのオーガは逆に追い詰められつつあった。


「……十分だガディアス、ここまでだ」


「了解、離れますわ」


 ブリードの合図に合わせて2機はシロガネから距離を離す。

 それを逃すまいとユーマはシロガネのスラスターを吹かすが、ブリードの黒いオーガがブレードを捨て、両手を上げたのを見て、ユーマはシロガネを止めてしまった。


 ただ両手を上げただけなら、ユーマはそのままオーガのコックピットをブレードでもって貫くつもりだったが、オーガのコックピットハッチが開くのを見て手を止めたのだ。


「戦闘中にハッチを開く?! 何を考えてるんだ!」


 突然の事にユーマは困惑し、素っ頓狂な声を挙げた。

 そして、そんなユーマをよそに、オーガのコックピットからライダーが姿を表す。


「こちらはアステリア軍のブリード・ケイオス中佐である。

 まずは非礼をお詫びしよう、少し話しでもどうかね?」


 ブリードは手に持ったピンマイクに向かって話し、それがオーガの外部スピーカーを通して出力される。

 その音声を合図にするようにヒノカへの狙撃も止まったので、ユーマも渋々黒いオーガのコックピットに突き刺さる寸前のブレードを下ろした。


「貴様らアステリアと話す舌なんぞ持たんのだが」


「その割にはブレードは下げるのだな。

 いや、済まない。揚げ足を取りたいわけではなくてね」


「時間稼ぎか、命乞いか、何が狙いだ」


 ユーマは背部カメラに捉えた後ろのオーガから目を離さないようにして、ブリードの声に応える。

 

「……君は、アステリアが嫌いかね?」


「……嫌いなんてものじゃない、憎悪している。

 アステリアの軍人である貴様らを今この瞬間にも殺したいくらいにはな」


「若いな、その割に冷静じゃないか。

 君が、戦争をしているのに人を殺したくない等とのたまう博愛主義者でなくて良かった。

 かくいう私も今のアステリアは嫌いなんだ。

 いつか滅ぼしたいと思うくらいにはな」


「……何だお前、亡命でもしようってのか」


「いや? それではアステリアには勝てても滅ぼす事は出来ないかも知れない。故に亡命はせんよ」


 この時、ユーマは目の前の男、ブリードの言葉を聞きつつ、何かを思い出そうと記憶を辿っていた。

 ブリードの顔を見た瞬間から何かが引っ掛かる様な感覚を覚えたからだ。


 何だ、俺はコイツを知ってるのか?

 現世の記憶にはない、前世の記憶が何か、関係があるとしたらゲームの……確かストーリーの終盤に出てきたキャラクターにそんな名前の奴がいた様な――。


 そこまで思い出し、ユーマはあるストーリーを思い出した。

 前世にやり込んだゲームの終盤。

 アステリア軍内部でクーデターを起こし、失敗して死んだ男の名前を。


「なあアンタ、地球って言葉に心当たりは無いか」


「チキュウ? 知らんな。

 いや、まて。そういえば赤鬼のライダーもそんな質問をしてきたな…………とにかく、私はチキュウという言葉は知らんよ」


「そうか。で? アンタは俺にどうして欲しい」


「察しが良過ぎるな坊や。

 まあ賢い子供は嫌いじゃないがね。

 いやなに、君に今すぐ何かをどうしてほしいというわけではなくてね。

 ふむ……一番近い言葉として当てはまるのは、これからの活躍に期待している、というところかな。

 私はいつか事を起こす、その時に君達は戦場で暴れ回っててくれれば良い」


「だからお前を、お前達を此処で見逃せ、と?

 ふざけるな。戦場で暴れ回るなんてそんな事、指図されなくてもやってやるよ。

 だからお前達は、此処で死ね」


 ユーマはシロガネのブレードを地面に刺し、背中のライフルを装備すると、銃口をブリードに向ける。

 その瞬間、ブリードは後ろ手に隠していたある装置のボタンを押した。

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