罠
ユーマとヒノカが哨戒線まで辿り着くとそこには一機のCFが佇んでいた。
刀身の長いロングブレードを地面に刺し、柄に両手を乗せ、おおよそ救援を待っている様子ではない。
「アステリアのオーガ、何が目的で救難信号なんか」
「白旗、ってわけでも無さそうだ。
マシロ、ライフルを構えろ、下手な動きをしたら撃て」
「了解」
佇むオーガへと近付くユーマのシロガネ。
ライフル片手に盾を構え、警戒しながら進んでいるとシロガネのコックピットに突然警告音が鳴り響いた。
その音と同時に佇んでいたオーガがロングブレードを地面から抜き、構える。
「カザギリ!」
「下がれマシロ! ミサイルが来るぞ!」
レーダーに映る飛翔体をミサイルと判断したユーマがマシロに警告した瞬間。
ロングブレードを構えていたオーガが背部のスラスターを吹かして突撃してきたかと思うと、横一閃にシロガネに斬り掛かった。
「カザギリ!」
構えていたライフルのトリガーを引こうとしたマシロのハガネとシロガネの間にミサイルが3つ立て続けに落下、二人を分断するように爆散する。
「終端誘導無し? カザギリ! カザギリ無事なの!?」
「問題ない! 一旦下がれマシロ! 次弾が来るぞ!」
爆煙で見えなくなったユーマに言われ、レーダーを確認するマシロの目に映る飛翔体。
数は同じく3つだが、先程とは違い誘導されたミサイルは真っ直ぐヒノカのハガネに向かっていた。
ライフルをミサイルが来る方角にに向け、後退しながら照準システムだよりに射撃してヒノカは丘の影に隠れる。
三本のミサイルの内ニ本は撃ち落とす事が出来たが、一本は丘に当たって爆散。
ヒノカの隠れる丘の中腹を抉り取った。
3射目が来ないのをレーダーで確認し、ヒノカはユーマの救援の為に丘から機体を出そうとするが、そのヒノカのハガネの足元に銃弾が撃ち込まれた。
狙い撃ちにされてはいけないと、咄嗟にヒノカは機体を下げ再び丘の麓に隠れるが、まるで出てくるなと言われている様な狙撃に、ヒノカは歯噛みしていた。
一方でユーマはロングブレードで斬り掛かってきたオーガの一閃を屈んで避けると、左手に装備していた盾による一撃を見舞うためためにスラスターを吹かして突撃。
しかし、オーガはそれを見越してか、空振った勢いのまま再びユーマのシロガネに斬り掛かった。
「良いねえお前さん、判断が早い」
「何だ、通信?」
「あ? ガキが乗ってんのか!? イーステルに兵なしってなあ本当だなあ」
「舐めるなよアステリア」
盾でロングブレードをいなし、回し蹴りを放つシロガネ。
それをオーガは後ろに跳び下がるが、ユーマはそれをライフルで狙った。
「これがガキの動きかい?!」
しかし、ユーマは引き金を引けない。
シロガネのコックピットにロックオンされた際に鳴る警告音が突然響いたからだ。
「っち」と舌打ちしユーマは盾を構え、後退しながら左右に移動。
先程までシロガネがいた地面に弾痕が刻まれた。
「今のを避けるか、一本角」
シロガネが後退した丘の影、もう1機、別のオーガが姿を表し、ブレードを振りかぶる。
真っ黒な機体だった。
「コイツら、あのサイクロプスの部隊とは練度が違うな。それでも!」
後ろからの黒いオーガの奇襲に、ユーマは背部のマウントラッチからブレードを抜きつつ、盾をバックハンドブローの要領で薙ぎ払い、黒いオーガのブレードを弾いた。
「この距離、このタイミングで反応する。
一本角のライダー、只者では無いな。
狙撃班、ハガネの監視に集中しろ、こちらは私達で対応する。
……ガディアス合わせろ、挟み込むぞ」
「あいよ! 了解!」
背にあるライフルを構えもせずに2機のオーガがシロガネに迫る。
それに対してユーマが取った行動は近くにいた黒いオーガへの肉迫、接近戦だった。




