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救難信号

 破棄された地下レアメタル採掘場。 


 数十年前に破棄されたアステリア領のその場所は、地下の物資運搬用大坑道が蜘蛛の巣の様に張り巡らされている。 

 その内の一本、東に長く伸びる地下坑道を掘り進め、アステリアの潜入部隊はイーステルの領土に侵入したらしい。


 らしい、と言うのはこの情報がユーマとヒノカが捕縛したサイクロプスに搭乗していた隊長を自称するライダーが語った内容だからだ。


 時は遡り、ユーマとヒノカがサイクロプス8機を撃破した直後。


 地下大坑道内でサイクロプスとは違うアステリアのCFが4機、地上のサイクロプス8機の撃墜を感知していた。


「中佐、地上のサイクロプス8機、信号途絶しました、通信も反応ありません」


「そうか、やはりあの馬鹿に小隊長は荷が重かったようだ。

 ……まあ良い、奴らの死は想定内だ。

 こちらの作戦目的は既に達成している。

 我々はこの地下坑道から撤退後、坑道を爆破したのち本隊へ帰還する」


「なあケイオスの旦那あ。このまま帰っちまうんですかい?

 サイクロプスのカメラに映ってたアレって赤鬼のライダーが前に乗ってた一本角でしょ?

 ちょっと、俺に相手させちゃあくれませんかね?」


 ややずんぐりしたサイクロプスとは違い、イーステルのハガネに近いマッシブな形状のCF。

 ハガネを解析して生産された現在のアステリアの主力CF、オーガのコックピットで無精髭を生やしたライダーが隊長機である黒いオーガの前に立つ上官に外部スピーカー越しに言った。


 上官である黒髪、黒目、おおよそ軍人らしからぬ線の細い青年、ブリード・ケイオス中佐は部下の無精髭を生やした中年ライダー、ガディアス・ベルグの言葉に顔をしかめ、顎に手を当て思考する。


「…………お前は計画に必要な人材だ、ここで死なれては困るのだがな」


「その言いよう、旦那の見立てでは俺は負けるって事ですか、じゃあお守りしてくれませんかねえ。

 あの一本角のライダーも前線で暴れ回ってる赤鬼同様に旦那には必要になるんじゃねえんですかい?」


「……そんな事は分かっている。

 遅かれ早かれコンタクトは取りたいとは思うが、さて、話を聞いてくれるような奴かどうか。

 …………分かった、これもなにかの縁かもしれんしな。お前の口車に乗ってやろう。

 少し待て、策を練る」


「頼りにしてますぜ旦那ぁ」


「こちらもお前達を頼りにしている。

 地上に行った馬鹿共と違い、お前達はさっきも言った通り必要な人材だからな」


「アステリアを滅ぼす為に? クックック、怖いねえ」


「ああそうだ。今のアステリアを滅ぼす為に、お前達は必要だ」


 茶化す様に笑うガディアス。

 拳を握りオーガを睨む様に見上げるブリード。

 そんなブリードに、残る2機のオーガに乗る部下はコックピットの中で困ったように苦笑していた。


 そして翌朝、隠した坑道から4機のオーガが出撃。

 北方基地へと進行を開始する。

 

「んじゃあ、行って来ますわ旦那ぁ。

 バックアップ任せましたよお」


「分かっている。

 プラン通りに行動しろ。そうすれば死にはしない。

 だが、もし一本角のライダーが見込み違いなら構うな。一本角は破壊しろ」


「りょ~かい」


 ブリードとガディアス以外の部下二人は乗機を丘陵地帯で停止、ガディアスはそのまま北方基地へと移動していく。

 そして、しばらく移動して北方基地の哨戒線に辿り着いたガディアスは乗機を停止、わざと救難信号を出してイーステル軍が来るのを待った。


 同時刻。

 通信端末の呼び出し音でユーマとヒノカの2人は同じベッドの上で目を覚ました。

 特にナニかあったわけではない、ヒノカが1人では眠れないというから仕方無くユーマが添い寝してあげたのだ。


「救難信号、ですか?」


 執務室に呼び出されたユーマとヒノカは、昨日戦闘を行った場所に程近い哨戒線付近で救難信号が出ているとの説明を受けた。


「罠、だとは思うがね」


「まあ確かに、あからさま過ぎですよね。

 しかし、放置するわけにもいきませんし。

 ……分かりました、俺達が出ます」


「済まない。昨日の規模のCFが相手となると、今の当基地の戦力ではもう――」


「構いませんよ。そのために我々は此処に居るのですから」

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