たった二人の戦争
翌朝、ユーマとヒノカの2人は偵察と称して北方基地を出撃。
北方基地の新人ライダーが襲撃された丘陵地帯に向かっていた。
北方基地の司令官には偵察と言って出撃したが、それは北方基地の戦力を使わせない為。
これ以上犠牲を出さない為だ。
「私達2人で何とかなる?」
「アステリアのCFやライダーは数は多いけど、決して練度は高くない。
俺達なら何とかなるさ」
丘陵地帯に近付く二機を小高い丘の上から覗く人影が1つ。
その人影は腹這いで双眼鏡を覗きながらインカムのマイクをオンにすると、誰かに通信を繋いだ。
「隊長。イーステルのCFを二機確認しました。偵察でしょうか? 一機はハガネですが、もう一機は白い機体です。
頭部に一本、角みたいなパーツが見えます」
「了解した、そのまま監視を続けろ」
「了解」
イーステル領内に侵入したアステリアの軍人が潜伏している丘陵地帯の森の中で腕を組んで唸った。
北方基地方面の監視を任せていた部下からの報告にあった一本角の白い機体に覚えがあったからだ。
「一本角、確かシロガネとかいったか。
イーステルのエースの乗機だった筈だが、奴は前線に詰めている筈。
ならば乗っているのは別人か……」
「どうしました隊長」
「ああ、さっき監視から連絡が入ったんだが、二機こっちに向かって来ているらしくてな。
一機はイーステルの一本角らしい」
「一機で十数機のCFを撃破したっていうあの一本角ですか?」
「一本角はイーステルのエースの乗機だった筈だ、だが戦場でヒヒイロカネとかいう、紅い二本角が目撃されるようになってからは一本角は表れていない」
「乗りこなせる奴がそのエースしかいなかったって事でしょうか」
「だとすれば、今こちらに向かって来ている一本角はエース級って事になるな」
「でもたった二機ですよね? こっちは後ろに控えている機体も含めれば八機。
全機で当たれば撃破出来るのでは?」
部下の言葉にアステリアの隊長は考えを巡らせた。
そしてある結論に至る。
「うむ、紅い二本角のような化け物がそうそういるわけもない。
襲撃して、あわよくばあの一本角を頂くとしよう」
隊長の言葉に部下は敬礼してインカムのマイクに「全機戦闘準備」と指示を出すと自らもカモフラージュ用の迷彩シートを掛けている機体へと向かっていった。
それを見届けると、アステリアの隊長も同様に機体のコックピットに向かい、乗機であるサイクロプスの出撃準備を始める。
「2機の現在の位置は?」
「丘を2つ挟んで丁度対面に位置しています」
「了解。よし、狩りの時間だ! 各機出撃!」
迷彩シートを払い除け、立ち上がったサイクロプス八機全てがユーマとヒノカを目指して移動を開始する。
木に止まっていた鳥達が急な機械音に驚き一斉に飛び立つ。
その飛び立った鳥達を見て、ユーマは眉をひそめた。
「マシロ、戦闘準備」
「え、あ、了解!」
「レーダーに反応あり、八機か。
ジャミングしてこないとは、2機と思って侮ってるな。
よし、プラン通りいこう。煙幕を使うぞ」
「了解、スモークグレネード装填」
ユーマとヒノカ二人だけでの戦争が始まろうとしていた。




