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北方基地にて

 北方基地へ向かう道中、イーステル領内で特に何かあるわけもなく、二人は危なげなく北方基地へと到着した。

 北方基地と言っても本土やユーマの所属する基地から見て北にあるというだけで雪が降ってるわけでも寒いわけでもない。

 北方基地周辺は都市部から離れた荒涼とした土地に建設された基地だ。


 基地としては辺境に位置するので、アステリアからは攻略目標としては軽視されている。

 故にライダー候補の実地研修生養成人数が他の基地に比べて多かったりするのだが、その情報が漏洩しているのか度々襲撃にあっている。


 人材不足と前線から離れていると理由から熟練のライダーの配備も間に合わず、北方基地の正規ライダーは辛くもアステリアのCFを撃退しているという状況だ。


 しかしそれも進退窮まってしまったのが今の北方基地の現状。


 先の襲撃で候補生の訓練機のみならず、正規ライダーのCFも損傷してしまい、いよいよ撃退すら怪しくなってきた為に北方基地の司令官は自分の無能を嘆きながら各基地に藁にもすがる思いで援軍を要請。

 

 それに応えたのがユーマの所属する基地の司令官だった。


「君達の話は聞いているよ。

 訓練機でアステリアのCF、サイクロプスを3機撃破した天才、ユーマ・カザギリ君とバディのヒノカ・マシロ嬢。

 マシロ嬢も成績は今期最優と聞いたよ。

 本部が紺を与えただけはある。

 君達の基地の司令官は敏腕だな、私とはえらい違いだ」


 ユーマとヒノカは北方基地の司令官への挨拶の為に司令官の執務室を訪れていた。

 お互い敬礼して挨拶を交わしながら、司令官は窓に近付き、眼下のシロガネを眺める。


「私の様な無能では君達の力を最大限に発揮させる事は出来んのだろうな。

 頼む、今まで犠牲にしてしまった若人達の為に敵を撃滅してくれないだろうか」


 随分疲労しているのだろう。

 司令官は椅子に座ると、目頭に抑えてそう言うと深く息を吸うと肩を落とした。


「ユーマ・カザギリ。若輩ではありますが最善を尽くすつもりです」


「私も、仲間の仇を討つ為なら全力を尽くします」


「ありがとう。

 だが、君達もまだ若い無理はしてくれるな」


「了解です」


 この日は到着した初日という事もあり、休むよう言われた為、二人はそれぞれの乗機を格納庫へと移動させると、充てがわれた個室へと向かっていった。


「まともに動けるのは俺達だけかも知れないな」


「そうね、どのCFも損傷が酷かったわ」


「マシロ、覚悟は出来てるか?」


「……どうかしらね」


「出来てる、って自信たっぷりに言われるより良いな。勇み足で突っ込まれる心配をする事も無くなる」


 紺色の軍服を身に纏い歩く二人に廊下ですれ違う軍人達は皆縋るような目で二人を見て敬礼をしてくる。

 それに対して二人も敬礼を返して廊下を進み、壁に埋め込まれた案内図に従って個室へと辿り着いた。


「じゃあマシロ、また明日」


「ええ、また明日ねカザギリ」


 個室の前で挨拶を交わした二人だったが、どういう訳か二人同時に扉横のコンソールに手を伸ばした。


「何をしているマシロ、早く部屋に行ってゆっくり休め」


「面白い冗談ねカザギリ。ここが私の指定された部屋なんだけど」


「……なに?」


「……ん?」


 二人は通信端末に送られてきているはずのキーコードを確認して、お互い自分は間違っていないと言わんばかりにソレを見せ合う。

 しかし、画面に表示されている部屋番号とキーコードは同一の物だった。

 

「ちょっと待て連絡を――」


 何かの手違いだと信じて司令官に通信端末にて連絡をとるユーマが聞いたのは「間違いではないよ」という物。

 司令官によれば、先の襲撃の際に流れ弾と飛んできたCFの装甲の破片が居住区を一部破壊してしまい、部屋に余裕が無いとの話しだった。


「相部屋とはいえ、異性と同室は嫌だろ。

 俺は適当な所を探して寝るから部屋はマシロが使ってくれ」


「そんなの駄目、絶対に駄目。

 明日襲撃が無い保証は無いのよ、万全な体調で任に当たるためにも貴方も部屋で寝るべきだわ。

 それとも何? 私と同じ部屋は嫌?」


「嫌、では無いけど」


「なら決まりね。ほら、早く入りましょう」


 こうしてユーマは半ば強引にヒノカに引っ張られるようにして相部屋に入っていった。

 所属している基地と内装は変わらない。

 2つのデスクに2つのベッドがあるだけの質素な部屋。

 基地に到着した際に基地の兵士に渡した着替え等が入ったバッグご此処にある辺り、どうやら司令官の悪ふざけ等という線が消えてユーマは一気に緊張する。


 無論それはヒノカも同じだ、生まれて初めての異性との、それも意中の少年との相部屋生活に心臓は早鐘のように高鳴っていた。

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