データ収集開始
本日もシミュレーターは満員御礼。
ライダーの皆様お疲れ様です。
というワケで、ユーマとヒノカはこの後の予定をヘイズと話しながらシミュレーターが空くのを待っていた。
「俺の反応速度のデータですか?」
「そうそう、ハガネとシロガネ、それとヒヒイロカネの機体データを使って俺の指示に従って動いてくれるだけで良い。
1番確かめたいのはユーマ君のAIM速度、狙いを点けるまでのスピードだ。
正直な話ハガネの反応速度に不満を感じてないかい?」
「あー、はい確かに遅いなあとは思いますが、そこは機体に合わせられますので」
「ハハハ! 兵器というのは人に合わせて最適化していく物だ。
ライダーがCFに合わせるなんて聞いた事ないぞ……もしかしてカナタ・マシロを超えるのか、ならホワイトアウトは回避が出来る」
ヘイズの最後の言葉はヘイズが口元に手を当てたのとシミュレーターの扉が開く音で掻き消され、ユーマとヒノカには聞こえなかった。
「お、カザギリ、今からシミュレーター使うのか……この方は?」
「お疲れ様です先輩。この方は開発局からお越しのヘイズ・ストーラさんです。
わざわざシロガネを持ってきてくださって――」
「え! シロガネ受領したのか!? ちょっと見に行ってくるわ!」
ライダー達にとっては未だに人気を博すシロガネの実機。
車が好きな人なら高級車が車庫に有れば見に行きたくなるようなものだろう、先輩ライダーは足早に格納庫へと向かっていった。
「あの、すみませんうちの先輩が」
「構わないよ。俺も気持ちはわかるからね。
さあシミュレーターも空いた事だし、データ収集を始めようか」
「分かりました、指示は外部マイクで?」
「ああ、いやこのインカムを使ってくれ」
「了解です」
ヘイズに渡されたインカムを受け取り、耳に取り付けたユーマがシミュレーターに入るとヘイズはそのシミュレーターにUSBメモリーを差し込んで端末を操作。
シミュレーションの準備を始めた。
ヒノカは少し離れてユーマのシミュレーターのモニターをするためにディスプレイを操作している。
そんなヒノカを横目に見ながらヘイズはある作戦の概要を思い出していた。
マシロシリーズ二人を犠牲にすること前提のオペレーションホワイトアウト。
だが、ユーマ君が本当にカナタ・マシロを超え得る存在なら、二人は犠牲にならずに済むかもしれんな。
カナタ・マシロも当初予定していた性能より遥かに高い数値を出している。
これなら本当にイーステルを守りきれるかもしれん。
このヘイズという男、ただの開発局の局員では無い。
開発局の局員というのは表向きの顔で、マシロシリーズのデザインを手掛けた研究所の研究員でもある。
しかし、その事を知る者は少ない。
それと言うのもマシロシリーズの存在を軍とマシロ家が隠しているからだ。
「よし、じゃあ始めようユーマ君、まずは指定されたポイントまで、ハガネ、シロガネ、ヒヒイロカネの順で自分が考え得る最短ルートで向かってくれ」
「了解、ビルの上を通っても大丈夫ですか?」
「ああ、機体を破損させなければ構わないよ
ん? ビルの上?」
「了解、ユーマ・カザギリ、データ収集開始します」




