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客人と白いCF

 基地のCF部隊のライダー達から紺色軍服認定を祝福された翌日の朝。

 ユーマは司令からの指示で、基地の滑走路に降り立った輸送機から、ある人物が降りて来るのを待っていた。

 バディであるヒノカも一緒に待っているが、なかなか昇降階段に件の人物が現れない。

 

 何かトラブルでもあったのか?

 

 ユーマがそんな事を考えていると、輸送機の扉ではなく、輸送品搬入用の扉が開いた。

 その開いた輸送機の扉から白塗りのCFが見え、その隣にカッターシャツを着てスラックスを履いている男性が立っているのを二人は確認した。

 

「お、画像と一緒だ。やあカザギリ君。始めまして。

 俺はCF開発局から派遣されたヘイズ・ストーラ、ヘイズでもストーラでも、気軽に呼んでくれ」


「始めまして、ユーマ・カザギリです。

 司令から対応するように仰せつかっております。

 本日は俺に何か用があると聞きましたが?」


「君、歳の割にちゃんと対応するのな。

 良いね、ちゃんと出来る奴は好ましいからな。

 よし、じゃあまず1つ目の用件だが、コレを渡しに来た」


 そう言ってヘイズは横で片膝を付いているCFを指差した。

 そのCFは装甲部が白く塗られていて頭部には一本、額から生える短い角型のブレードアンテナが装備されていた。


 ユーマもヒノカもこの機体は知っている。

 教本にも掲載されているし、世間一般的にも新聞やニュースの映像等でその機体は認知されているのだ。


「姉様のシロガネ、コレをユーマが」


「2機目のヒヒイロカネを建造するにせよ、完全な新型を建造するにせよ、取れるだけのデータが欲しいって局長が言ってね。

 まあなんて言えばよいか、お土産?

 君がハガネを壊さないうちにちょっとでも頑丈な機体を与えておけって軍本部からお達しがあったってのもあるが――」


「カナタさんのお下がりか、光栄だね」


「ホントにそう思ってる?」


 型式番号EMCF−07Kシロガネ。

 カナタ・マシロがヒヒイロカネを与えられるまで搭乗していた機体であり、正式量産機であるハガネを強化改造した機体。

 装甲強度も見た目も頭部以外はハガネの物を流用しているため変わらないが、内部フレーム、特に各関節部を重点的に改良している。

 長年カナタと戦場を駆け、前線を支えてきた機体だ。

 

「ちょっと乗ってみるかい?」


「格納庫に運んで良いんですよね? わかりました、やります」


「聞き分けが良いねえ、でも大丈夫かい? ヒヒイロカネ程ではないけどコイツもじゃじゃ馬だぞ?」


「乗れますよ、多分」


 言いながらユーマは片手の手の平、マニピュレーターを上に向け、片膝を付いて、まるで主を待っているかのようなシロガネに近付く。

 そしてマニピュレーターの上に乗ると、膝へと飛び乗り、そのままコックピットハッチを開けて中に滑り込んだ。


 「計器類以上無し、外部スピーカー……ヘイズさん出ますよ?」


「ああ頼む!」


 コックピットハッチを閉め、モニターの起動確認ついでに横にいるはずのヘイズに話しかけると、ユーマはゆっくりとシロガネを中腰の姿勢にする。

 そして、足裏の無限軌道を回転させて輸送機からシロガネを外に出すと直立させた。


「カナタの癖がついてるな、レスポンスが良い。

 出力もハガネよりは上か。面白い機体だ」


 当たり前の様にシロガネを乗りこなし、格納庫に向かって行くシロガネの後ろ姿を見て、ヘイズは感心しているのか、顎をさすってほくそ笑んでいる。


「おお、シロガネかあ! まさかイジる日が来るとはなあ。乗ってるライダーは誰だ! 向こうのハンガーが空いてるからそっちに移動させてくれ!」


「了解……整備長あんまり張り切りすぎると血圧上がりますよ?」


「ユーマ!? お前が乗ってんのか!?」


「今日から俺の相棒になるらしいです」


「そりゃあまた。まあ良かったじゃねえか」


 整備長との会話もそこそこに、指定されたハンガーにシロガネを運び、ユーマは機体から降りてヘイズとマシロを迎えるために格納庫の大扉へと向かう。

 しばらく待つと、軍用車両に乗った二人が格納庫に到着した。


「カザギリ、シロガネはどうだった?」


「良いね、カナタさんが乗ってた機体だから当たり前と言えば当たり前なんだが、ヒヒイロカネのセッティングに良く似てる。乗っててワクワクするよ」


「ハッハア! ワクワクと来たか。カナタ・マシロ用の機体をしてそう言えるとは凄いな」


 ヒノカの言葉にユーマが答えると、その答えにヘイズが笑う。

 

「こりゃあ本当に2機目のヒヒイロカネかユーマ君専用機が必要になりそうだなあ。

 よし、早速で悪いがデータを取らせてくれ。

 シミュレータールームはどっちだ?」


「ご案内します、こちらです」


 冷静に対応するユーマだが、心のなかでは「専用機ってまじか!」と狂喜乱舞していた。

 現在、現地改修型のハガネや個人に合わせて改良されたハガネは存在するが、専用機となるとイーステルにはカナタのヒヒイロカネしか存在しない。

 もしユーマに専用機が与えられる事になれば史上2人目の専用機持ちになる。

 これを喜ばないライダーがいるだろうか?

 否、断じて否。

 喜ばないライダーなどいるわけがない。


 ユーマは飛び跳ねて喜びたい衝動を押し殺して、ヘイズをシミュレータールームへと案内するのだった。

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