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ユーマとヒノカⅡ

「じゃあ、おやすみなさい。カザギリ、今日は本当にありがとう。楽しかった」


「俺も良い気分転換になったよ。じゃあ、おやすみ」


 ヒノカを基地の自室前まで送って別れ、ユーマも自室に戻ると、シャワーを浴びて部屋着に着替えてこの日はベッドに直行した。

 

 彼女じゃない女の子と遊びに行くってあんな感じで良かったんだろうか。

 楽しかったって言ってくれたしなあ。

 良かったのかな。

 いやまて、ただの社交辞令という可能性は無いだろうか。

 そもそも付き合ってるわけじゃないし、お前と遊んでも楽しくねえよなんて同僚には言わんよなあ。

 うーん、どっちだ…………考えても仕方ないか、よし、寝よう。


 などと考えながら眠りにつくユーマに対して、先に部屋に戻ったヒノカはユーマと同じ様にシャワーを浴びた後、ベッドの上に座って顔を赤く染めながら今日の外出の事を思い出していた。


 なんなのよもー。

 なんでアイツの事ばっかり考えちゃうのよ。

 初対面の時はまともにこっちすら見なかったのに、最近のアイツ別人じゃないの!?

 特に今日は何!?

 車の運転してる時も、レストランの時も、公園にいた時も……いちいち格好良いのよ!

 なんなのコレ、イライラしてるの?

 いえ違うわね、そんな感情じゃないわ。

 怒ってるわけじゃないし……でもアイツの事考えると…………うわー!もー、なにー?

 わかんない、わかんない、わーかーんーなーいー!!

 

 枕を千切れんばかりに抱き締め、ヒノカは己の中に芽生えた恋心が何か分からず混乱していた。

 

「姉様なら、分かるの?」


 夜遅くまで悶えていたヒノカがいつの間にか眠りにつき、姉と過ごした幼少期の夢を見ている頃。


 ユーマもまた、幼い頃の夢を見ていた。


 両親の仕事の都合で本土を離れ、こちらの大陸に来ていた時の夢。

 両親と遊びに行った日の夢。

 忌々しい、憎悪と怨嗟に塗れたあの日の夢。

 突然のアステリアの襲撃で両親を失った日の夢。


「父さん! 母さん!」


 そんな悪夢にユーマは目を覚まして飛び起きた。

 

「…………忘れるかよユーマ。大丈夫だ。俺が、俺達が仇を討つんだ。この手でアステリアを、潰してやる」


 ユーマの過ごしたこの世界での18年の記憶と前世の櫻悠馬の記憶。

 突然思い出した前世の記憶は確かにユーマの人格を変えた。

 だからといってこの世界で生まれ育ったユーマ・カザギリの記憶が無くなったわけでも、薄れたわけでも無い。

 平和な世界で生まれ育った悠馬の記憶。

 この世界で生まれ育ったユーマの記憶。

 2つが混じり合ったなら精神でも患いそうなものだがユーマの決意がそれを許さなかった。

 

 時計はAM4時を表示している。

 ユーマは寝汗を洗い流すためにシャワーを浴び、日課の早朝ランニングの為にトレーニングウェアに着替えると部屋を後にした。

 

 薄暗い基地を出て、いつものコースを走り、あのベンチに腰を降ろす。

 悪夢のせいか、ややオーバーペースだったためへたり込むユーマの頭に乾いたタオルが掛けられる。


 驚いて顔を上げるユーマの前に立っていたのは、まだ半分寝ているのでは無いかと疑う程にフラフラしているヒノカだった。


「おは、おふぁよー」


「おはようマシロ、もう訓練期間は終わったんだ、俺に付き合う事ないんだぞ?」


「……カザギリが……」


「俺が、何?」


「……カザギリの事が気になって、今日も走るのかなって思って」


 いつもの凛としたヒノカの姿は何処へやら。

 今にも倒れそうなヒノカを気遣い、ユーマは「とりあえず座りなよ」と言ったのだがやはり寝惚けているのか、ヒノカはユーマの直ぐ隣に座ると、ユーマの肩に頭を預けて眠り始めてしまった。


「おいマシロ? おいってば……まじか、どうしよ」


 気持ち良さそうに眠る少女を無理矢理起こすのは気が引ける、しかしこのまま寝かせて風邪を引かせるわけにもいかない。


「仕方無いな」


 ユーマが選んだのはヒノカの部屋までヒノカをおぶって運ぶというものだった。

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