訓練へ
この世界は地球と同じような歴史を辿ってきた。
人が火という道具を手に入れ、星の生命体の頂点に立ち。
いつしか食物連鎖から外れ、地球と同じ様に自然を破壊していく。
科学が発展し、それと伴い人類史も発展してきた。
しかし、その発展の影には必ずあるモノが存在する。
人類史における汚点であるが、科学技術の急速な発展においては炸薬たりえる“戦争”というモノだ。
この日、ユーマ・カザギリは少しの高揚感と少しの緊張を胸に抱き訓練に従事していた。
幼少の頃、戦争で親を亡くし、自分も死にかけた時に母国の軍人に助けられた。
それ以来軍人に憧れ、自らも国の為に戦う軍人になるために勉強し、今ユーマは憧れの軍人として生きている。
この世界と地球の歴史に大きな違いがあるとするなら、戦争の頻度だろう。
大国アステリア一強だった世界は、ユーマが所属する極東の島国イーステルが開発した二足歩行兵器、CFの完成、実戦導入で混迷を極めた。
さて、どんなに強固なプロテクトを施そうとも機密情報の守秘が完璧に行えるか?
私の考えではNOだと思う。
どんな情報も全ては無理でも微かなら漏れ出る物だ。
超大国アステリアもイーステルの地下資源を求め戦争を起こした当初こそイーステルのCFに苦戦どころか大苦戦を強いられていた。
一時は本土決戦間近と言われていたが、押し返されてしまった程だ。
しかし、大国アステリアも一筋縄ではいかない。
辛くも撃破したCFの残骸や僅かに残ったデータから独自にCFを開発。
完成度でイーステルのCFに遥かに劣るものの、大量のアステリア製CFの投入で戦局は拮抗してしまった。
それから十年、戦線は拮抗したまま各地で小競り合いが頻発しているというのが現在の2国間の状況だ。
「ユーマ、今日はなんか機嫌良いな、彼女でも出来たか?」
「いや、違うよ? 僕も遂にライダーになるんだなあって思うと嬉しくてね」
ユーマと友人はイーステル首都より遥か北。
海を挟んで大陸に位置する基地にて教練を受けていた。
朝のトレーニングを終え、食事を口に運びながら笑い合う。
ユーマとこの友人は歳が近く同室と言うこともあり仲が良かった。
そんな2人は他の訓練兵達と共にCFのフレームライダー、いわゆるパイロットの候補生でもある。
特別優れていた訳ではない。
ユーマは寧ろ候補生の中では成績最下位、落ちこぼれだ。
とは言え、フレームライダーの候補生に選ばれるだけでも軍では優遇される。
相部屋とはいえ個室を与えられる程には。
「フレームライダー候補生各員、今日はお待ち兼ねの実機演習だ、これまでの訓練の成果見せてもらうぞ」
食事を終えた後、演習の為のブリーフィングを受け、格納庫へと向かう。
ユーマは佇む機体を見上げ、何故か懐かしいと感じていた。
まあ昔CFに乗った軍人に助けられたからだろうなあ。
そんな事を考えながらユーマはコックピットに座り、機体のチェックを行っていた。
「ユーマ・カザギリ、準備はどうか」
「大丈夫です! 行けます!」
「よし、では演習場へ向かう。集結ポイントはブリーフィングで伝えた通りだ。何、心配はいらん、前線からは随分遠い。安全第一で訓練に励め。 機体を壊すなよ?」
「了解!」