ユーマVSカナタ
ユーマとカナタは格納庫に併設されているシミュレータールームへと足を踏み入れた。
昨日は妹のヒノカと、そして今日は姉のカナタと並列に配置されたシミュレーターに入る事になり「これも縁になるのかな」などと思いながらシミュレーターを起動して、その中に入った。
「搭乗機体はお互い私の専用機、ヒヒイロカネのデータで良いかしら?」
「ああ、構わない。ただ少しだけ時間をくれ、癖を観たい」
CFのコックピット内での通信と同様にシミュレーター内で通信を繋ぎ、シミュレーションの設定をしていく二人。
その様子を、ヒノカを含めたギャラリー達はシミュレータールームに設置された大型モニターで観覧している。
「カザギリ候補生もヒヒイロカネを使うのか?」
「あんなハイエンド機、候補生じゃあまともに性能を引き出せんだろう」
「アレは撃墜女王の専用機だからなあ。
俺も前にデータ使わせてもらったけど、ピーキーで操作しづらかったなあ」
ギャラリー達のそんな言葉を他所に、設定を終えたユーマとカナタはシミュレーションを開始した。
フィールドは高層ビル街、機体の装備は両名共にカナタの専用機ヒヒイロカネにライフル、シールドを装備、背部に実体剣を備え付けた基本3種、最低限度の装備のみを選択。
ルールはどちらかが撃墜されるか、降伏するまで戦闘が続行されるサドンデスだ。
「低速域からこの加速力、スラスターを併用した場合は……なる程、コレはとんでもないじゃじゃ馬だな。
良いセッティングだ、好きだよこういう出力に物を言わせた感じ」
「ふふふ、だろう?随分無理を言って整備班に頑張って貰ったからねえ」
外部へは聞こえない設定で通信を繋ぎ、ユーマは機体を操作してヒヒイロカネの性能を確かめ、カナタはそんなユーマにヒヒイロカネの操縦のコツを伝える。
時間にして数分。
その数分で、ユーマは並のライダーではまともに動かせないヒヒイロカネを意のままに操れるようになった。
ビル郡の隙間を高速で移動したり、ビルを壁に見立てて蹴り上がり、屋上から飛び降りたり、ユーマが縦横無尽にヒヒイロカネを駆るさまを見て、カナタは嬉しそうに微笑み、ヒノカを含めたギャラリー達はユーマの様子に驚愕していた。
「はあー。俺自信無くしたわ」
「CFってあんな立体的に動けるのか」
「二足歩行戦車、とは?」
基地所属のライダー達など青ざめる始末だった。
ヒノカはヒノカで複雑な心境だ、同期生のユーマの操縦技術に感心する一方で嫉妬心も胸中に確かに在ったからだ。
「カナタ姉様以外にヒヒイロカネを動かせるライダーがいるなんて」
モニターでユーマのウォーミングアップを眺めるヒノカが拳を握る。
私も頑張らなくては。
そうヒノカに決意させる程には、ユーマの操縦技術は卓越していた。
「よし、充分だカナタ……やろう」
「合図は?」
「カウント3で始めよう」
「OK」
ビルに挟まれた大通り、距離を開けて対峙する2機目の紅い専用機。
そのコックピットの中、ユーマとカナタは操縦桿を握り直す。
「3」
「2」
「1」
「「0!!」」
ユーマとカナタはカウント0と同時にペダルを踵で引き、操縦桿のトリガーを引く。
盾を構え、後進しながら2機のCFはライフルを発砲。
二人の戦いの幕が上がった。




