表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/5

第1話

「オーガスタ・アルスティン侯爵令嬢、俺はこの場で宣言する。お前とはこの場で婚約破棄だ!」


 それは私の婚約者、ザイマト第二王子の成人のお祝いパーティの出来事でした。

 彼は私にぴっと指を突きつけると、高々とそう宣言し、それを合図の様に側に可愛らしい姿の女性を近づけました。


「婚約破棄とはまた仰々しくこんな場所で。して、幾ら王子殿下とは言え、侯爵令嬢たる私にそうおっしゃるからには、きちんとした理由がおありなのでしょうか?」

「このトレミアが証言した! お前はお茶会の際に彼女の態度に非常に強い暴言を吐いたそうだな。いやそれだけではない、そもそも来る資格も無いと言ったと聞く!」


 トレミア、と言うと。

 そう言えば確か先日、いきなり王妃様主催のお茶会に来た……確か男爵令嬢でしたか。


「それだけではない。彼女が王宮の花園に入って花を愛でていたら、とんでもないことだ、と花を取り上げたそうじゃないか。

 それに、彼女がこの様なパーティに参加するとしばしば物が無くなるらしいな。それもお前の仕業ではないのか?」


 ザイマト殿下がだいたい言いたいことは言ってしまった様なので、私もそろそろ反撃しましょう。


「なるほど、それが理由で私と婚約破棄致したいのですね」

「そうだ。そして俺はこのトレミア・フレクタル男爵令嬢との真の愛を貫いて、二人幸せな生活を送る、それが人としての正しい道だと気付いたのだ!」

「なるほど。婚約破棄自体は承知致しました」

「ほぉ」

「しかしどちらが有責か、ということに関しては私も少々言いたいことがございます。ちょうど今日辺り貴方様にお伝えしようと思っておりましたので、用意を」


 すると私の従者達数名が、その場に集合しました。


「例の物を」

「はっ」


 何だ何だとお客の方々も騒ぎ出しました。

 そこにごろごろと音を立てて持ち出されてきたのは、足に車を付けた黒板です。

 よくありますでしょう、何かしらの軍務において、作戦を立てる際の。

 あれを少々お借り致しましたの。

 私はチョークを手にとると、彼の言ったことをそのまま書き出しました。


 オーガスタ・アルスティン侯爵令嬢がトレミア・フレクタル男爵令嬢にしたとされること 

・お茶会にての酷い暴言

・お茶会に来る資格が無いと発言

・王宮の花園で叱責かつ花を強奪


 ここまで書いて、私は一旦チョークを止めました。


「ここまでが私がしたとトレミア嬢がザイマト様に申したことですね」

「……そうだが?」

「つまり、あくまでトレミア嬢の主観における訴えでございます。ではこれを私及び、周囲の人々の主観と照らし合わせてみましょう」


 私はそう言って以下の文章にカッ、と音を立ててチョークを付けました。


・お茶会での酷い暴言

・お茶会に来る資格が無いと発言


「これはトレミア嬢がみえた時ですから、確か、王妃様主催のものでしたわね。これに関しては皆様、如何でしょう?」

「当たり前じゃないの! 王妃様主催のお茶会にどうして男爵令嬢がそもそも来ることができて!」


 ザイマトのすぐ上の姉君、デミデシア王女殿下がすかさず進み出ました。

 普段から私と仲良くして下さるこの方は、確かあのお茶会において、私以上に彼女がいきなり登場したことに憤慨していたはずです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 婚約破棄は要求するもではありません 婚約破棄は婚約解消を一方的に突きつけることですので初っ端のセリフ、正しくは「婚約破棄を申し渡す」とか「婚約解消を要求する(これだとTPOを考えてたら誠実な…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ