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異世界ネットショップマスター  作者: グランクリュ
第二章 ダンスホール編
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第六十九話 チケット問題

 今日は念入りに身だしなみを整える。服装はもちろん正装だ。

ジャケットを着て食堂に行ったら、冒険者達に貴族様が来たと揶揄われた。



「おい、貴族様なのに無料のモーニング頼んでるぞ」



「バカヤロウ、無料の物に金貨を払うのが貴族なんだぞ。よく見てろよ」



 いじられてるな〜と思った銀次郎はアイテムボックスから小金貨を1枚を取り出し、見える様にカウンターに置く。

冒険者達が大爆笑しているので、小金貨はしまってモーニングをたべる。

急いでたべてエルヴィスの所を行こうとしたら、ハリーとエデルに呼び止められた。



「ギンジロー氷ちょうだい」



 ハリーとエデルに板氷を渡し、エルヴィスの店に向かった。



「ギンジローいい男だな」



 エルヴィスはジャケット姿の銀次郎を褒めてくれた。

ハグで挨拶をしようと近づいたら、ネクタイを取られてシャツのボタンも三つ開けられた。



「こっちの方が似合うぞ、相棒」



 熱烈なハグだがもう慣れてきた。

お互い肩を手でパンパン叩いて挨拶をする。

仮縫いのドレスと鏡などをアイテムボックスに入れて、まずはレイチェルさんのところへ向かう。



 レイチェルさんとハグをするエルヴィス。

なんか最初の方と比べて過激になってないか?

銀次郎は恥ずかしかったが、レイチェルさんとハグをして頬も合わせる。



「今からドレスの仮縫いの合わせをしてきますので、ご挨拶に来ました」



 今度はいつもの紳士的なお辞儀をするエルヴィス。

何やっても様になるなと思ってると、レイチェルさんからダンスの発表会のチケットが全部なくなってしまった事。

追加でチケットが欲しいと申し出があった。



 チケットは用意出来るが、広いダンスホールといえど二百人以上のお客さんはキャパオーバーに見える。



 時間制で入れ替えたりする事も考えたが、もうチケットは売ってしまっていた。

何か方法がないか考えるので時間をもらう事にした。

レイチェルさんに挨拶をした後は、木材商会を引退したあのご夫婦のところに向かう。



「こんにちはー、奥様のレーアさんか旦那さんのカールさんはいますか?」



 すると番頭さんは話を聞いていたらしく、すぐに二人を呼んでくれた。



「待ってたわよ〜 さぁこちらにどうぞ。紅茶はお願いしても良いのかしら?」



 事前に話をしていたので、ドレス一式をエルヴィスに渡し銀次郎は台所を借りる。

お湯を沸かして気に入ってくれているパウンドケーキを切って持っていくと、二代目とその奥さんも部屋にいた。

お湯はまだあるので、二人分の紅茶もすぐに淹れる。



「この紅茶が美味いんだよな。ケーキはお前が一つぺろっと食べたやつだぞ」



 二代目の息子さんは奥さんから右ストレートをもらっていた。

なかなか良いパンチでびっくりしたが、女性には言って良い事と悪い事がある。

銀次郎は目の前の出来事を無かった事にして、奥様のレーアさんとエルヴィスが出てくるのを待った。



「どうかしらこのドレス、似合ってる?」



 仮縫いの合わせを終えたレーアさんがみんなの前に現れた。

淡い紫のドレスは、女性を夢の世界へと連れて行ってくれる。



「天使が現れたのかと思いました」



 素直に思ったのだが、息子さんは天使はねぇだろと言って今度はレーアさんからまたパンチをもらっている。

銀次郎は目の前の出来事を無かった事にする魔法を覚えたのかもしれない。

アイテムボックスから姿見を取り出し、何事もなかった様にセットする。



「すごく楽しみだわぁ。ねぇアナタ」



 カールさんは黙って頷く。



「それでは仕上げたらドレスを持ってきますので、後少しだけお待ちください」



 エルヴィスはホッとしていた。

仮縫いを外すため、また別部屋に行くレーアさんとエルヴィス。



「なぁチケットってもう無いのか?」



 二代目の息子さんが真剣な顔でこっちを見てくる。

レーアさんがドレスを買ってくれた息子とお嫁さん二人分のチケットを買って持ってきたが、せっかくなら商会を休みにして、従業員全員で応援しに行こうとなった。

しかしチケットを買いに行けばもう売れ切れで、商業ギルドでも同じだったそうだ。



 レイチェルさんの所にさっき行ったらチケットが売り切れた話を聞いたので、どうするか決まったらお伝えしますね。

レーアさんの着替え終わったので、紅茶を淹れ直して世間話をする。

またパウンドケーキが欲しいと言われたので、一つ銀貨1枚の値段で売って商会を出た。



 木材を扱う商会で、建物と倉庫はものすごく大きかった。

檜があったので、いつか檜のお風呂に入りたいと思う銀次郎。

二代目の息子さんはアレだが、みんな笑顔なのでゆとりがあるんだと思う。

さてチケットの件どうすっかな。



 二軒目もこの近くなので、近くにある果実水の美味しいヴェリーヌさんのお店に行く事にした。

裏通りに行くとカウンターとスタンドテーブルだけの、立ち飲みスタイルのお店に着く。

エルヴィスはヴェリーヌさんと熱い抱擁からのいちゃつき?

もちろん胸元にはエルヴィス手作りの、パワーストーンのネックレスが。

他の男性のお客さんからの視線が痛い。



 果実水を注文したが、この間紅茶をもらったからお金はいらないと。

紅茶を注文するお客さんが、少しだが増えてきてるらしい。

商談で使ってくれるので助かってるとの事だった。



 紅茶の葉はまだあるか聞いたら少なくなってるって。

果実水に使ってる果物を、知り合いから買ってくれるのなら紅茶をまた差し上げますよと言ったら、是非と手を握られた。

他の男性のお客さんからの視線が痛い。(二回目)



 今度商会長と一緒に来る事を伝え、紅茶とシュガースティックを渡す。

その後二軒目のお客さんの所に行き仮縫いは問題なかったが、社交ダンスの発表会のチケットが欲しいと言われる。

三軒目も同じだった。


 エルヴィスは今日は戻ってドレスを作るとの事なので、銀次郎はチケットの確認に商業ギルドへ。

受付は忙しそうだったので、会釈をしてミリアのいる奥のカウンターへ向かう。

受付に居たはずのエミリアが後ろについてきたので、商業ギルド受付の連携は侮れないと感じた。



 奥のカウンターにはミリアはいなかったが、自分専用の部屋にいるらしいのでそのまま向かう。



「ギンジローさん良かったです。少し困った事がありまして」



 話を聞くとやはりチケット問題だった。

すぐに売れ切れてしまい、その後の問い合わせで大変みたいだ。

商業ギルドと付き合いのある商会から、どうにかしてくれないかとお願いされている。



 元々は家族か親しい知り合いだけを呼ぶ予定だったが、社交ダンスの生徒はお金持ちで顔も広い。

そして娯楽が少ないこの世界では、お祭りは一大イベントだ。

社交ダンスの発表会という未知なるものだが、興味をそそられたらしい。



「チケットを売ってなければ、まだやりようはあるがもう走り出しちゃったので。あと二、三十名くらいは入れるかもしれないけど、希望者はどれくらいなの?」



「今来ているので五十名分くらいです。レイチェルさんの所と被ってるお客さんも多いですが、それでも予定の人数を遥かに超えてしまっています」



 嬉しい悲鳴なのだが、ちょっと解決出来そうにない。

とりあえず考える時間を貰ってミリア達と別れる。

そのままハングリーベアーに帰ると、ハリーが食堂で待っていた。



 マインツの大聖堂から、納品数を増やしてくれと申し出があったそうだ。

そして出来れば毎日納品して欲しいと。



 エデル商会の一番の悩みは、銀次郎に氷の依頼をする事だ。

嫌な顔をした覚えはないが、エデルは迷惑をかけていると思っているらしい。

商会を勧めたのは銀次郎であり、エデルの人生を変えてしまった責任はある。

遠慮せず頼んでくれとハリーに伝えたが、冷凍庫みたいな物が作れないか考える銀次郎だった。



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