第六十七話 爆買い
朝早く起きてネットショップで爆買いする銀次郎。
手土産ショップを見ると、燻製のアンティパストセットを発見。
スモークチーズにいぶりがっこ、鴨のスモークに明太子の燻製まである。
これは別の意味で買いだな。
いつもの老舗高級羊羹やスイーツ類も次々購入しておく。
最近必要だと感じているのは、電化製品ではない調理器具。
手動のフードチョッパーや泡立て器、フルーツ絞りや手動パスタマシン、うらごし器とミンサーも購入。
お気に入りの生ハムのショップを見ると、スペイン産の三十六ヶ月熟成の生ハム原木は売っていなかった。
代わりに二十四ヶ月熟成の生ハムは売っていたが、もし全部買っちゃうと二十四ヶ月熟成も無くなっちゃうのかな?
怖くなった銀次郎は、二十四ヶ月熟成の生ハムの原木を一つだけ購入する。
お金に余裕が出来たので、ティーカップを新調してみた。
白い陶器に青い花が描かれている高級品だ。
ソーサーやケーキプレート、ティーポットに花瓶も購入。
次に銀次郎が探したのは眼鏡だ。
度付きの眼鏡は安いのだと銀貨3枚で買える。
男性用と女性用の眼鏡をそれぞれ十個購入した。
少し高い眼鏡でも、小金貨1枚で良さそうなのがたくさんある。
この辺も押さえつつバラエティ眼鏡を見ると、フレームがケーキとローソクの形になっている誕生日用のサングラスを発見した。
これはサプライズ用にと購入。
他には虎柄フレームの眼鏡があったのでもちろん購入。
コーエンさん用には、赤くて細いフレームの女性教師イメージの眼鏡も選ぶ。
コーエンさんの目が悪いかどうかは分からないが、ある一定の層からは熱烈な支持を得ると思われるこの眼鏡。
そんな眼鏡を見つけたのなら、買わざるを得ない。
高級眼鏡を探すと、化粧品セットで選んだブランドの眼鏡を発見。
ちょうど良かったので、エルザ様用に購入する。
後は、メガネケースとメガネ拭きも購入。
ネットショップで買い物を終えしばらくするとセバスチャンが迎えに来てくれたので、馬車に乗ってマインツ家へ向かうのであった。
まずはセバスチャンとコーヒーと思ったが、通されたのは応接室だ。
部屋に入ると、虎とコーエンさん後はマインツ大聖堂のヴェルナー司祭とレイノルド助祭が待っていた。
「ギンジローさん待ってたわ。今日はヴェルナー司祭も来てるの。ギンジローさんに手を出さないよう釘を刺してたのだけど、やっぱりとんだ狸だったわ」
司祭を狸呼ばわりするあなたも大概ですからねと、心に思いながら話を聞く。
「これは手厳しい。まだ小娘だった時に教会側に入れておけば良かったかな」
何だか分からないが、二人は仲が良さそうだ。
レイノルド助祭は、下をみて話が終わるのを待っていたが。
「ギンジローさん良いかしら?」
用意して来た眼鏡を、アイテムボックスから取り出す。
「今回いろんな種類の眼鏡を用意しました。このレンズの部分で見え方が変わってきます。まずは文字がよく見える眼鏡を探してみて下さい」
ヴェルナー司祭は早速とばかりに眼鏡を合わせ始める。
虎には化粧品と同じ商会が作った眼鏡ですと、度付きの高級眼鏡を渡すと気に入ったようだ。
コーエンさんは目が悪くないが、赤色の細いフレームの眼鏡を渡す。
マニアにはたまらない光景だったが、残念ながら眼鏡はお気に召さないようだ。
「これは凄いですな。文字がはっきりと見える」
ヴェルナー司祭は老眼鏡に感動している。
「司祭、あの話は無かった事で宜しいですか?」
「これもまた神の導き。引退した者で同じ悩みの者もおる。その者にもメガネを与えてはくれんかのう?」
売るのは別に良いが眼鏡もマインツ家に一括して卸し、マインツ家で管理してもらう様にお願いした。
ヴェルナー司祭は自分の眼鏡と予備を一つ、後は引退した二名に渡す分、それと大聖堂で貸し出し用に一つの合計五つの眼鏡を選ぶ。
もちろん眼鏡ケースとメガネ拭きも渡した。
レイノルド助祭も眼鏡を欲しがっていたが、このメンツで自分から言い出せないでいる感じだ。
お世話になってる方なので、虎にレイノルド助祭に眼鏡をプレゼントしたいと申し出る。
虎は了承し、結局コーエンさんがお気に召さなかった赤色の細いフレームの眼鏡をレイノルド助祭は選んだ。
眼鏡は人を変える。
周りの景色がよく見える様になったからか、レイノルド助祭の目線は近くから遠くを見る様になった。
遠くを見つめる目が自信を持っている姿に写り、良い男っぷりになった気がする。
赤いフレームの女教師メガネだけど。
「近いうちにまた教会の方へ来て下さい。レイノルドと日程を決めてくだされ。楽しみにしているよ」
ヴェルナー司祭と握手をすると相変わらず力強くて手が痛かった。
二人が帰るので見届けた後、再び虎との話になる。
「ギンジローさん、まずはこのメガネの値段を決めましょう」
度付きの安い眼鏡は銀貨3枚、普通のが小金貨1枚、老眼鏡も小金貨1枚。
レイノルド助祭の赤いフレームの眼鏡は銀貨5枚。
虎柄のメガネは小金貨3枚。
化粧品と同じハイブランドの度付き眼鏡が、大金貨1枚と小金貨6枚で仕入れた事を伝える。
「それでは安いのが小金貨3枚、普通のが大金貨1枚、ローガンキョーも大金貨1枚、後の分はまとめて大金貨10枚で買い取るわ」
セバスチャンが用意した大金の入った袋を受け取る銀次郎。
こんなにいらないと言ったが、メガネにはこのくらいの価値はあると言われてしまった。
「ギンジローさん何か困っている事はない?」
虎から優しい言葉を掛けられて嬉しくなる。
「気に掛けてくれてありがとうございます。今は困った事は無いですが、何かあれば相談をさせてもらいます」
深いお辞儀をして、虎のいる部屋を離れた銀次郎とセバスチャン。
やっとゆっくりできるので、コーヒーを飲みに厨房へと向かうのであった。