第五十九話 エルヴィスデイ
今日は少し早く目覚めた銀次郎は、いつものように庭に出て井戸水を汲む。
ザバーンと井戸水をかぶると、まだ眠たかった頭の中が一気に覚醒した。
「ギンジローちゃんおはよー。今日は早いのね」
クラーラさんの笑顔に今日も癒されていつものテーブル席に着く。
間違って高額商品を買ってしまい手持ちが寂しいので、今日は無料のモーニングを注文。
出来上がるのを待っていると、ハリーも食堂にやってきた。
「おはようハリー。昨日はありがとね」
「こっちこそありがとう。お婆さんがまた屋台やろうって言ってたよ」
そうだな、お婆さんの所でやりたい事もあるんだけど今日は大事な日だ。
明日にでも顔をだそうかなと考える銀次郎。
ハリーは焼きそばソースを使ったハンバーグを朝から注文した。
「ねぇギンジロー、前にもらったコンペートー売ってくれないかな?」
ハリーが真面目な顔で言ってくるが、アイテムボックスの中にはプレゼント用の金平糖がたくさん入ってる。
「ハリーならあげるけど何かあった?」
話を聞くとたくさん稼いで余裕ができたので、王都に住むお母さんに金平糖をたべさせてあげたいらしい。
ハリーからお金を受け取るつもりはないので、王都に行く時は教えてくれと伝える。
モーニングをたべ終わった二人は、ハングリーベアーを出てエルヴィスを迎えに行く。
「お待たせ」
エルヴィスに声をかけハグをする。
日本にいた時は友達にハグをするなんて考えられなかったけど、自然とハグをした自分に少し驚く。
「さぁ行こうか」
ジャケットを羽織ったエルヴィスの、今日にかける想いを受け止める。
アイテムボックスに荷物を入れて、三人でレイチェルさんの所に向かった。
レイチェルさんのダンスホールに着くと商業ギルドからミリアと受付の娘、そして手伝いを依頼したエデルも待っていた。
「みんなお待たせ。それじゃ行こうか」
ダンスホールの大きな扉を開けると、そこには美しいドレスを着たレイチェルさんが手を振っていた。
「レイチェルさん今日はありがとう」
エルヴィスがレイチェルさんと情熱的なハグを交わす。
「ねぇ一番最初は私のドレスを選んで。ダンスの発表会に私も新しいドレスで踊りたいの」
最高のドレスを作りますとエルヴィスは誓い、展示会の準備を始める。
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「レイチェルさんまずはこちらを」
エルヴィスは、パワーストーンのネックレスを見せる。
「お好きな石のネックレスを選んでください」
レイチェルさんは水晶のパワーストーンを選ぶ。
この水晶は幸運を呼び寄せる石だと説明し、エルヴィスが後ろから抱きしめるようにネックレスをつける。
そのまま設置してある姿見鏡に映る自分の首元を見て、素敵ねと喜んでくれた。
「さぁドレスも選びましょう」
エルヴィスが案内しレイチェルさんとドレス生地を合わせていく。
「どれも素敵な生地で全部欲しくなっちゃうわ」
目を輝かせながら、凄い事を言うレイチェルさん。
「エルヴィス大変だったでしょう。こんなにも素敵な生地を用意してくれてありがとう。私の注文は決まったわ。全て任せるからエルヴィスらしいドレスを作ってね」
サイズは前に作ったのと同じ。
生地もデザインも全てエルヴィスにお任せで、お金もいくらかかっても良い。
エルヴィスが作る最高のドレスを期待していると言って、嬉しそうにネックレスを触る。
何だかレイチェルさんに惚れそうだ。
そう思わざるを得ないくらいに、目の前の淑女は輝いて見えた。