第五十話 フルーツタルト
テーブルの上には、切り分けられたフルーツタルトが乗っている。
苺、メロン、オレンジ、キウイ、りんご、マンゴー、グレープフルーツ、ブルーベリーにラズベリーと瑞々しくて豪華なフルーツタルトだ。
「みんなたべてみて」
フルーツタルトをみんなのお皿に取り分ける。
「見た目が綺麗で食べるのが勿体無いですね」
女の子にケーキって本当に似合うな。
ミリアはフルーツタルトを眺めた後、一口食べる。
すると幸せそうな顔になったのを見て思わずほっこりとする。
ハリーとエデルも美味しそうにたべているが、受付けの娘はフルーツを先にたべている。
この娘の本能がそうしているのか分からないが、本当に憎めない娘だ。
フルーツタルトの美味しさを分かってもらえたので、銀次郎はプレゼンを始める。
「このマインツの街にケーキを売ってるお店ってないよね? もしこのフルーツタルトが売ってる店があれば、みんな買いたいと思わない?」
「ギンジローさん、どのくらいかの値段にもよりますが、少なくとも金銭的に余裕のある方であれば買いたいと思うでしょう」
ミリアが答えると、次はハリーだ。
「王都にいるお母さんに食べてもらいたいな。前にもらったコンペートーもそうだけど、大事な人に贈るなら高くても買う人は居ると思う」
ハリーはお母さん想いだな。
さすがにフルーツタルトは王都に贈れないけど、金平糖の件は近いうちに実現させたいと思う。
「このフルーツタルトって技術的な事さえ解決できれば結構簡単に作れます。ゴージャスかき氷を小金貨1枚で販売しようとしているけど、このタルトの部分を氷にすると似ているでしょ」
あっ!と声を出したのは受付けの娘。
ここはチャンスなので、彼女に向けてプレゼンを進める。
「このフルーツタルトは銀貨3枚くらいで売るもんなんだ。このカットしたのじゃなくて丸ごとでだよ。エデルの果物と同じで、カットした場合は少し高めの金額にするけど少し頑張れば出せると思うんだ」
みんなの事を見渡すと、コクコクと頷いている。
「前にやっていたお店では、この紅茶やケーキをお店で提供していたんだ。ケーキは仕入れていたけど作ろうと思えばすぐに作れる。そんなお店ができれば果物もいっぱい売れるでしょ? でも仕入れから調理、販売まで一人でやってたら大変。エデルから果物を買えば、手間が減る」
エデルの商会立ち上げは、銀次郎にとっても利益がある事をみんなに伝える。
「後はあれかな? 一人で商売をするのは不安なんだ。だからエデルやミリア達を巻き込んで、みんなでやりたいと思ってる。ハリーは冒険者だけど、もし良かったらこれからも手伝って欲しいと思ってるし」
立ち上がってみんなにお辞儀をするとエデルが
「ギンジローさん、こんな時は握手するんですよね」
立ち上がり握手をしてくれた。ミリアとハリーとも握手をする。
受付けの娘も右手を伸ばしたので握手をすると
「もう一個、受付のみんなと食べる」
彼女はブレない。
アイテムボックスからフルーツタルトとドラ焼きの詰め合せも渡すと、満足げな顔をしていた。