表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ネットショップマスター  作者: グランクリュ
第一章 夏祭り屋台編
56/207

第四十八話 エデルの想い

 フルーツ盛り合わせが全部なくなったので、レイノルド助祭に別れを告げる。

教会からもらったお金はエデルに渡そうとしたが、エデルは受け取ろうとしない。



「エデルどうした? 受け取りなよ」



 肩が震えている。

目で合図をすると、エデルは何かを決意したみたいだ。



「ギンジローさん、この屋台を続けたいです。僕……僕に氷を売ってくれませんか?」



 真っ直ぐな目で想いを伝えてきたエデルに、混じりっ気なしの自分の想いを伝えるべきか悩む銀次郎。

エデルは黙って下を向いてしまった相手を見て、少し前に想像していた未来が叶わない事を悟った。



「エデルが屋台を続ける事は応援出来ない」



 お願いした事をエデルは後悔した。

ギンジローさんならと思う気持ちは正直あった。

でも氷を売ってくれないのは仕方がない。それは分かる。

ただこの数日間の楽しい思い出が、遠くに行っちゃう。

今まで通りにまた働けばいいだけ。

ただそれだけなのに……




 奥様は無理していっぱいマンゴー集めてくれたんだ。

会長にいっぱい売れたっていったら、すごく喜んでくれた。

お母さんの大好きなパイナップル、家に持って帰ったら盗んだと思われて怒られたっけ。

でもいっぱい売って会長からお小遣いもらって、そのお金でっていったらお母さん泣いちゃった。

あの時のパイナップル甘くて美味しかった。



 涙がこぼれそうだから、夏の眩しい空を見上げる。

雲ひとつない青空は見えるが、頭の中には何も入ってこない。




 銀次郎は頭を掻き、涙を堪えてるエデルに本音を伝える。



「エデルなら氷を売るのは良いよ。ただ屋台を続けるのは応援出来ないかな」



 銀次郎はどう説明しようか考えていたが、沈黙がエデルを悲しませてしまったみたいだ。

氷を売るのは問題ない、転売とかはダメだけど。

トーマス商会から独立して、エデルに自分の商会を立ち上げて欲しい。

もちろん裏切っての独立じゃなくて、WINーWINの関係での独立。



 自分がこれから商売をやっていく中で、心許せる仲間が欲しかった。

エデルとなら、果物に関する商売のアイディアが上手くいきそうだ。

アイテムボックスからひまわりの花を取り出しエデルに渡す。



「夏祭りの屋台が終わったら、本格的に商売を始めようと思ってるんだ。だからエデルと一緒に成長したい。屋台を続けるんじゃなくて、もっと大きな商売をやって欲しい。氷があれば少なくとも夏場は教会との商売はできるでしょ?」



「はい……独立は相談しないといけませんが、会長と奥様にお願いしてみます」



「商業ギルドのミリアにもした方が良いよ」



 エデルは真っ赤な目をしながら、ありがとうございます!

頑張ります!と言ってお辞儀をする。



「握手をしよう」



 エデルに右手を差し出すとちっちゃい手だったが、さっきのヴェルナー司祭以上に力強い握手だと銀次郎は思うのであった。



 屋台に戻ると長い行列が出来ており、お婆さんはとんでもない数のかき氷を販売している。

息子さんが一生懸命氷を削り、お婆さんはオーダーを聞いて銅貨を貰うだけ。

シロップはセルフサービスだ。



 銀貨6枚と銅貨282枚。

屋台を離れていた約二時間でお婆さんが稼いだ金額だ。

かき氷百十四杯分の売上だが子供には無料でサービスしているので、数字以上のかき氷を作った事になる。



「ふぉっふぉっふぉ儲けたわい」



 屋台の行列がなくなったので、一度休憩する事にした。

お婆さんはお金を見てはしゃいでいる。



「本当にいいんですか?」



 息子さん夫婦は申し訳なさそうにしているが、何の問題もない。

お婆さんの本気のやり方を学べて勉強になった。



 かき氷シロップのセルフ化は好みでシロップの量を決めれるので、お客さんの満足度は高くなる。

お婆さんは、たべ終わったお客さんに声をかけてお代わりの販売もしていた。

あれは盲点だった。

お代わりを注文するお客さんの顔はとても嬉しそうだった。



 そこまで気づけなかった自分と、声をかける事が出来るお婆さんの力。

俺もお婆さんやエデルみたいに頑張らないとなと改めて感じたのであった。



●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●●



 お婆さん一家と一緒に、屋台で買った肉串をたべて腹ごしらえだ。

肉串は美味しかったが、お婆さんは銀次郎の持っていたクレイジーなソルトを振りかけてたべている。



 コーラでお肉を煮込むと美味しいんですよって言ったら、それなら早く作れと急かしてきた。

カセットコンロをネットショップで買って作ることも出来たが、お婆さんには今度畑に行った時ねと伝える。

銀次郎は何か約束しとかないと、お婆さんともう会えない気がして寂しかったので強引に約束をしたのであった。

畑だったらバーベキューもありかな?



「お婆さんありがとうございました。今度畑に行くのでその時にまた話をしましょう」



「約束じゃよ」



 お婆さん一家と別れを告げ、かき氷屋台を再開させる銀次郎、ハリー、エデルの3人だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ