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異世界ネットショップマスター  作者: グランクリュ
第一章 夏祭り屋台編
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第四十六話 夏祭り当日の朝

 今日は待ちに待った夏祭りだ。

ハングリーベアーに宿泊している冒険者達は、今日は夏祭りを堪能すべく朝からエールを楽しんでいる。



「おはようギンジローちゃん」



 クラーラさんの笑顔に癒され、ハリーがいるカウンター席の横に座る銀次郎。

ハリーは今日もハンバーグだ。



「おはようハリー」



「おはようギンジロー」



 今日は忙しい一日になるので、しっかりとモーニングをたべてからいつもの広場に向かうのであった。



●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●●



「おはようエデル。待たせちゃった?」



「そんな事はありません。ギンジローさん、ハリーさん今日も宜しくお願いします!」



 大聖堂前広場の一番奥のいつもの場所。

銀次郎は屋台と長テーブル、ゴミ箱を出して準備していく。



 エデルは夏祭りの出店申請はしていなかったので、今回銀次郎から請われてかき氷屋台の手伝いをする事になった。

三つ目の鐘が鳴るまでは、いつもの大聖堂前広場でかき氷を販売し、夜は商業ギルド前の庭でミリア紹介のお客さんにゴージャスかき氷を販売する予定だ。

ゴージャスかき氷にはエデルが用意するカット果物をトッピングする予定なので、本来は朝から手伝わなくても良いのだがエデルは嫌な顔せず付き合ってくれる。



「ここを回すと、氷が削れていくんですね」



 エデルはかき氷機を初めて使い、氷が薄くふわふわな状態で削れていく姿に感動している。



「お前さん、かき氷くれんかの?」



 この声はと思い振り返ると野菜売りのお婆さんと息子さん夫婦、そして可愛い男の子のお孫さんがいた。



「この子がお孫さんですね。可愛いなぁ。今かき氷と飲み物でも用意するんで、そこのテーブル席に座って待ってて下さい」



 ハリーがお婆さん一家のかき氷を作り、銀次郎はコーラをカップに注いでいく。



「はいどうぞ」



 銀次郎とエデルでかき氷とコーラをテーブルまで持っていくと、お婆さんは練乳を催促する。



「悪いのぅ。夏祭りの屋台が出せないと分かってから、悔しくて悔しくて眠れんかったわ」



 夏祭りの屋台は事前に申請していれば無料なのだが、朝市と同じだと思っていたのだ。

悔しい、悔しいと言いながら、練乳をこれでもかとかき氷にかけている。

この図々しくても憎めないのが、お婆さんの良いところだ。

息子さん夫婦からは、野菜がすごく売れて助かりましたと感謝される。

いつもは作った野菜を商会に売りに行くのだが、形が悪いのは買い取ってくれないか、買い叩かれるらしい。

お孫さんの服代を稼ぐ為にお婆さんが朝市に出店したのだが、こんなに売れるとは思わなかったと笑っている。



「あっここに居た」



 エデルを見つけた教会の方が声を出す。



「少年。今日も冷えたフルーツを大量に買いたいのだが、用意できるかな?」



「申し訳ございません……今日はたまたま手伝いに来ましたが、もう屋台を出す予定はないんです」



 エデルは申し訳なさそうに男性に謝罪する。



「冷えたマンゴーを気に入っている方がいて、どうしても欲しいのだが何とかならないかい?」



 男性の身なりは良く教会内でも地位はある人だと思うのだが、少年で商会見習いのエデルに対して高圧的な態度は取らずただひたすらお願いをしている。



「エデル、一度商会に戻って果物持ってきて。何か事情もあるのでしょう。早く持ってきて」



 商売は人と人の繋がりである。

手伝いはいいから果物を持ってくる様に指示を出した。



「用意出来たら大聖堂までお持ちしますが、どのくらい用意すれば良いですか?」



 すると教会の方は持ってきてくれた果物は全部買うから、とにかく冷えたマンゴーを持ってきてとお願いする。

急いでいる時にトラブルは起きやすいので、ハリーにエデルのフォローをお願いした。



「気をつけて」



 エデルとハリーを見送ると、銀次郎は教会の男性をテーブル席に案内する。



「良かったらこれを飲んでください。コーラと言ってシュワシュワした飲み物ですが甘くて美味しいですよ」




 男性はありがとうと言いコーラを飲む。

初めてコーラを飲んだが、とっても気に入ったみたいだったのでお代わりのコーラも注ぐ。



「少し聞きたいんですが何故そんなに冷やした果物が必要なんですか? いつも開店直後に高級果物を教会の方が買いに来ていましたが、理由があれば教えてもらいたいのですが」



 銀次郎が男性に聞くと教会の仕事は多忙で、この暑い時期には夏バテになる人が多いのだ。

そしてこの夏祭りの時期には各地から教会関係者が集まってくるので、マインツ大聖堂では連日会議や話し合いの場が設けられる。

その準備と運営に追われて、食事を取る時間もないらしい。



 そんな時に一口サイズにカットされて冷えたフルーツ盛り合わせの差し入れがあり、マインツ大聖堂内で人気になったのだ。

少し割高ではあるのだが冷えた果物は美味しく栄養もあるので、今は教会の予算で購入しているらしい。



「あーなるほど。教会の方も大変なんですね。あとで持っていきますから」



 教会の男はレイノルドと名乗り、助祭を務めているそうだ。

レイノルド助祭は感謝すると言い大聖堂に戻った。

あまり教会の事はわからないけど、助祭ってなかなかの偉い人ではないのだろうか?

まぁ良くわかんないけど。



 野菜売りのお婆さん一家は暇そうだったので、かき氷屋台を手伝ってもらった。

というか売上は全部あげるから、かき氷屋台の営業をして下さいとお願いした。

エデルとハリーが戻ってくるまでに、ちょっと色々準備しないと。

お婆さんは儲けるぞとやる気を見せていたが、練乳だけは出さない様お願いしておく。

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