第三十九話 エデルの働く姿
今日はゆっくりとした朝を過ごす銀次郎。
陽はすでに高く今日も暑かった。
いつもの通り庭に出て井戸水を頭からかぶり、シャキッとさせた後に食堂へ向かう。
「ギンジローちゃんおはよー。今日は遅かったのね」
今日もクラーラさんの笑顔に癒される。
ハリーは朝早くに出ていつもの薬草採取をしているらしい。
聞く所によるとハリーは薬草採取専門の冒険者なのだが、専門知識もあり優秀なんだと。
確かに商業ギルドで貴重な薬草の依頼があった時、ミリアはハリーに頼ってたって言ってたもんな。
「そういえばバーニーさんとクラーラさんは冒険者だったって言ってましたけど、どんなことをしてたんですか?」
目覚めた直後であり何となくのノリで聞いたのだが、二人が所属していたパーティーは討伐専門だったそうだ。
バーニーさんは重戦士で巨大な盾を持ち、魔物を足止めにするそうだ。
二つ名はブラッディベアー。
まぁそうでしょうねと、納得してしまう自分がいる。
ハングリーベアーでモーニングをたべた後は、エデルが働く果物専門の商会に向かった。
昨日商会の場所を聞いたら意外と近かったので、普段はどんな感じで働いているのか見にいく。
商会の近くに行くと、荷出しをしているエデルを発見した。
「エデル〜」
遠くから声を出すと、気がついて手を振ってくれる。
「ギンジローさんどうしたんですか?」
昨日も一昨日も一緒にいたが、商会で働くエデルは少し大人っぽく見えた。
エデルの様子を見に来たと伝えると嬉しそうだ。
笑ってるエデルは少年そのものだが、働く姿は様になってるな。
そんな事を考えていると、エデルに商会長のトーマスさんを紹介された。
「うちのエデルを気にかけてくれて、ありがとうございます。商売を学ばせる意味で朝市に一人で行かせたのですが、あなたに出会ってエデルは成長しました」
商会長のトーマスさんにそんな事を言われたので、私ではなくエデルの頑張りですよと伝える。
氷を商会で仕入れることは可能か聞かれたが、そこはやんわりと断った。
トーマスさんはその辺の空気は読める方だったので、夏祭りまでの間だけでもエデルをお願いしますと右手を差し伸べてきた。
私もエデル君から学ばさせてもらっているのでと、差し出された右手を掴みお礼を伝える。
手を離しお店を見渡すと、メロンを発見したのでエデルにいくらなのか聞く。
このメロンは銀貨2枚ですけど、お世話になってるので安くしておきますよってエデルもやりますな。
メロンも冷やしたら売れるぞと伝えて、メロンをあるだけ購入した。
すると奥さんと思われる方が出てきて、高級品を買ってくれた事とエデルの事で感謝された。
アイテムボックスにメロンやその他に買った果物をしまうと、マジックバッグ持ちは羨ましいとトーマスさんに言われた。
ハリーがマジックバッグを持っていたので、商会長なら持っているのかと思っていたがそうではないみたいだ。
エデルの働きっぷりを見た後はエルヴィスの店に行く。
俺を連れ出せの合図が来たので、お母さんにどうしても用事があるといお願いし老舗の高級羊羹セットを渡した。
お母さんも息子がサボろうとしているのはわかっているが、羊羹をもらえれば満足みたいだ。
エルヴィスとは特に何をするわけでもなく、ダラダラ過ごし夜はハングリーベアーでハリーと三人でお酒を呑む。
異世界に来てしばらく経つが、こんな日がいつまでも続けばいいなと願う銀次郎だった。