第三十五話 値付け
朝市屋台出店二日目、モーニングをたべてハリーと出発する。
今日もいい天気だ。
「ギンジローさーん、ハリーさーんこっちです!」
今日もスーツ姿のミリアさんと、ギルド制服を着た受付の娘が手を振ってる。
「待たせちゃいましたか?」
早く来たつもりだったのでちょっと気まずかったが、私達も今ここに来たところですよとミリアさんは答えてくれた。
隣を見ると、ハリーは何だか気合が入ってる。
四人で大聖堂広場まで歩き昨日の出店場所に向かうと、お婆さんとエデルがすでに準備をして待っていた。
「さぁ本日もやっちゃいますか!」
屋台と長テーブル、ゴミ箱を勢いよく取り出す。
まずは、昨日帰ってからネットショップで買っておいたクーラーボックスに氷水を用意する。
もちろん、お婆さんとエデルの分もだ。
ミリアさんにはお婆さんの店を手伝ってもらい、受付の女の子にはエデルの店を手伝ってもらう。
二人のエプロンを渡すと、スーツ姿にエプロンという、マニアには堪らないであろう姿になった。
ハリー幸せそうな顔してんな〜
「お婆さんこれがカップで、ディップではこれとこれを混ぜて作ってください。商業ギルドのミリアさんに手伝ってもらうので、いっぱい稼いでくださいね」
そう言って物を渡すとまた今日も可愛い女の子を連れてきて、お主はモテるなと変なことを言ってきたのでスルーする。
ミリアさんに野菜スティックと、味噌&マヨネーズのディップの作り方を説明する。
あれ? ハリーなんか怒ってる?
エデルの方を見ると昨日とは違って、パイナップルとマンゴーが置いてある。
「エデルそれ昨日なかったけど、今日はどうしたの?」
パイナップルを指さして聞くと、昨日の屋台ですごく売れたのを褒められた事。
お母さんにパイナップルを買って、昨日一緒に食べておいしかった事。
高級品だけど、これを冷やして売ればきっと売れると思って、お店の人にお願いをしたらしい。
お店の奥さんが、朝のせりで多く仕入れてきてくれたので、頑張って売るんだとやる気を見せてた。
アメ横なんかでは、串に刺したパイナップルがすごく売れるので、エデルはセンスあるなと銀次郎は感じた。
「とりあえず、パイナップルとマンゴーを一つずつ売って貰えるかな?」
仕入れ値で大丈夫ですよとエデルが言うので、値段を聞いて銀貨2枚をエデルに渡す。
パイナップルとマンゴーを氷水の中に入れて冷やす。
すぐに冷えたので、パイナップルを八本の棒状にカットしていく。
アイテムボックスから串を取り出し、ぶっ刺したら完成だ。
「みんなたべてみて。これおいしいと思うから」
アメ横スタイルのパイナップルをみんなに配ると、甘くてジューシー贅沢だと声をあげる。
受付の娘はまだたべたそうだったので、いいよと伝えると嬉しそうな顔してた。
「ギンジローさん、値付けは一本いくらぐらいがいいですか?」
真っ直ぐな瞳で聞かれたので、銀次郎は考える。
安くして完売した方がいいかな。
パイナップルの原価が銀貨1枚なら、一つのパイナップルで八本作れる。
銅貨2枚程度で良いのではないかと伝えるが
「銅貨5枚」
受付の子がしゃべった。
銅貨5枚で八本売れれば、銅貨40枚の売上だ。
原価の四倍の売上は魅力的だが、銀次郎にはちょっと高いように思える。
それは無理だと言うのは簡単だが、理由を聞いてみる事にした。
「理由は三つ、一つはパイナップルを氷で冷やすなんて贅沢。銅貨5枚でも安いくらい」
分からないでもないが、銅貨5枚でいけるか?
「二つ目は、お金を持ってる観光客と大聖堂の関係者が多い。美味しいものならある程度お金を出す」
お客さんの事を、この娘が見ていたのは驚きだがそこまで上手くいくかな?
銀次郎は黙って考えてると、三つ目の理由を教えてくれる。
「カットしたりんごと洋梨が2つで銅貨1枚。チェリーも銅貨1枚。葡萄は一房銅貨2枚。銅貨1枚の果物が売れるのは普通。昨日は完売したって聞いたから、銅貨2枚と高め設定の葡萄も売れたはず。高級品のパイナップルは、銅貨5枚は取るべき。この味に安売りしちゃいけない」
初めてこんなしゃべってるの聞いた。
でも商業ギルドのスタッフだから、合ってるか分からないけど考えてるのは確かだ。
ここで否定意見を言って、チームワークを乱してもいけないし、最悪売れなかったら全部買い取ってもいいかな。
ミリアさんは何も言わないので、エデルが良いならその価格でやってみようかと伝える。
もし迷ってるお客さんがいれば、さっき買ったパイナップルを凄く小さくカットして試食に使ってもいいよ。
マンゴーは八分の一カットにすると形が不揃いなので四分の一カットにした。
売れるのかなと思ったが、まずはやってみよう。
さて営業しますよ〜