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異世界ネットショップマスター  作者: グランクリュ
第一章 夏祭り屋台編
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第三十三話 野菜スティック


 かき氷屋台出店の初日。

やっとひとつかき氷が売れたが、銀次郎とハリーは大きなミスをしていた。

その事に気付かされた二人は、銅貨3枚と紙に書き目立つところに置く。

ハリーがこの紙とペンは凄いと言っていたが、かき氷に集中したかったのでスルーする。



 夏で暑かったのもあり、人通りは少ないが目の前を通る人は氷を見てビックリしている。

触っていいかと言われたが、商品で食べ物なので断る。

値段は銅貨3枚と伝えるとかき氷がどんな物か分からず、そんなもんに銅貨3枚は払いたくないと断られた。

でも、そこの屋根付きテーブルで涼めますよと伝えると、男性のお客さんは渋々買ってくれた。

この暑さじゃ涼みたいもんね。




 シロップは全部かけてくれと言われたので、三種類を少しづつかける。



 その後は少しだけど、かき氷が売れるようになった。

さっき売ったシロップ全部かけのお客さんは、また来てかき氷を買ってくれた。

アリガトーゴザイマース!



●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●●



「ギンジロー!」



 遠くで呼ばれたので見ると、エルヴィスが歩いてきた。

隣には花屋の娘がいる。

もちろんあのパワーストーンで出来たネックレスをしていた。



「あっちの屋台で買った肉串。ここは美味いから昼飯に食べな」



 確かにもう少しで昼なのでお腹が減ってきたところだ。

そのネックレスのせいで色々あったけど、細かいところに気が行き届くのがエルヴィスだ。

エルヴィスと花屋の娘にかき氷を作り、ハリーに屋台は任せてテーブル席に着く。



「エルヴィスありがと。肉串もらうね」



 まだ出来立てで温かい。塩分は少ないが、ハーブは効いてて美味しかった。

肉串をモグモグたべていると、エルヴィスがなんか困った事は無いかと聞いてくる。

ハリーのエプロンがないので水に濡れてしまっていると伝えると、今日店に寄ってくれたら用意しとくと言ってくれた。



 エルヴィス達と別れ、ハリーと店番を代わる。

ハリーにコーラを注いで肉串を渡すと、果物屋台の少年ことエデルがレモンを渡してきた。

エデルにも氷入りのコーラを作り切ってもらったレモンを入れて渡すと、お婆さんもいつの間にか横にいたので仕方なくコーラを作った。



 お婆さんにコーラを渡すと、なんか売り物をやると言われる。

迷っていると、持ち帰るのが面倒だからとスイカをもらった。

今年の夏はまだスイカをたべてなかったので、正直に嬉しかった。

バケツに氷水を作り、スイカを入れて冷やしておく。

後でたべようとすると、お婆さんはバケツの中にきゅうりを4本入れた。



「いつもは井戸水で冷やすんじゃが、きゅうりも冷やすと美味しいぞ〜」



 確かにそうだな。

冷やしたきゅうりに味噌をつけて、あ〜エールが呑みたい。

あれ? ビールじゃなくてエールになってるのは、異世界に馴染んできた証拠かな?

今までになかった新しい自分に気づき、少し嬉しい銀次郎。



 そんな事を考えてると、孤児院の子供達が走ってきた。

後ろには執事のセバスチャンと、今日は薄いピンク色のワンピースに大きめの麦わら帽子のソフィアを見つけた。

孤児院を任されているシスターは、走り回る子供達を必死に追いかけている。



「ギンジロー来ちゃった」



 手を後ろで組みポージングをするソフィア。

昨日の今日でちょっと恥ずかしい気もするが、ソフィアは堂々としていて変わりない感じだ。



「来てくれてありがとう」



 そう伝えると隣にいたお婆さんが、別嬪さんの分じゃと言ってきゅうりを1本追加で氷の入ったバケツに入れる。



 子供達は何やってんのー? とエンドレスで聞いてくる。

かき氷を売ってるよと伝えるが、コーラ飲みたいの大合唱になった。

この間のボランティアでみんなにコーラをご馳走したので、あの味が忘れられないそうだ。



「あの時のコーラより今日のは豪華だぞー」



 銀次郎は子供達を煽り、目の前のテーブル席に座って待つように伝える。

子供なので座って待つことは苦手だ。

走り回る子達が居たが、良い子にしてないとコーラは飲ませないと伝えるとみんな大人しくなった。

果物屋のエデルからレモンを二つ購入。

お金はいらないと言っていたが、銅貨1枚を渡した。

だって売り上げを作らないと、戻ったら怒られるでしょ。



 ハリーにはロックアイスとプラスチックのカップを渡して、人数分のコーラを注いでもらう。

銀次郎はレモンを素早く輪切りにして、コーラに入れていった。

コーラが足りなくなったのでもう一本ペットボトルを出すと、まだあるなら私も貰うかなとお婆さんもテーブル席に座る。



 お婆さん、孫の服を買う為に屋台を出店したって言ってたし、子供のことが好きなんだろう。

憎めないお婆さんで、なんだかいいなと銀次郎は思った。

結局全員分と、お婆さんとエデルの分もコーラを作りみんなで飲んでもらった。

ハリーにも休憩を取ってもらい、銀次郎はさっきお婆さんにもらったスイカと、きゅうりをカットする。



「このお婆さんからスイカをもらったよー。この塩をかけると甘くなるからね。ちょっとかけるだけでいいから、年長さんが教えてあげるんだよー」



 銀次郎としては当たり前の事を言ったのだが、スイカに塩という概念がないらしく、あのセバスチャンまでが驚いていた。

この瓶を2振りくらいしてと伝えると、さっそく子供達が試す。



 おいしーと声が聞こえたので、大丈夫だろう。

貰ったきゅうりは、カットして皿の上に乗せる。

アイテムボックスから味噌を取り出し、マヨネーズと和える。

本当は七味唐辛子も入れたいが、子供達にあげるのでそれはやめる事にした。

爪楊枝も用意してテーブルに持っていくと、冷やしきゅうりは大絶賛だった。


 子供達がもっとたべたいというので、お婆さんに言ってきゅうりや大根、人参にキャベツを購入。

お婆さんもお金はいらないと言っていたが、お孫さんの服を買う為にも受け取ってもらった。

何気にお婆さんの野菜、甘みがあって美味しいんだよな。

育ちすぎて不揃いな形だけど、味は濃くて美味しいので実は後で個人的に買おうと思っていた。



 野菜をカットしていき、氷水が入ったバケツに入れていく。

子供達がバケツに入った野菜を取ろうとして、水の冷たさに驚く。

ソフィアも手を入れて、気持ちいいねーって子供達と笑ってる。



 さすがに大人数で騒いでいたので、人が集まってきた。

コーラが飲みたいと言うお客さんが居たが、コーラは売り物じゃないと伝えお断りする。

いま作ってる野菜は食べれるのか?と聞かれたのでお婆さんを見ると、別にいいよとの事。

野菜を買ったのは銀次郎だが、もしかしたら商売になるかも知れないと思ったので、美味しかったらお客さんが思う分のお金をお婆さんに払って下さいと伝える。

氷水で急速に冷やした野菜を、大皿に乗せていく。

本当はグラスに盛って、お洒落な野菜スティックにしたかったが、そこまで時間もないので諦める。

味噌とマヨネーズを大量に混ぜ合わせ、ディップを改めて作る。



 シスター曰く、子供達はあまり野菜を食べなかったのに、みんな美味しそうに食べてる。

孤児院の畑でも同じ野菜を育てているので、この方法で食べさせてあげたいと興奮していた。



 野菜スティックをバリボリ食べてる先程のお客さんは、これは美味いと何度も繰り返している。

他に集まってきたお客さんも、野菜スティックが欲しいと言ってきた。

お客さんに野菜スティックにいくらなら払う? と聞いたら銅貨3枚くらいなら払うと答えた。

この冷えた野菜も美味しいが、この茶色の野菜をつけるやつが恐ろしく美味しい。

こんなの食べた事ないと絶賛してくれた。

お婆さんを見ると、今がチャンスだと頷く。



 生で食べれる野菜をお婆さんから預かり、カットをして氷水のバケツに入れていく。

当然一つじゃ足りないから、アイテムボックスにあったバケツを取り出して氷水を作っていく。

高級なワインクーラーに野菜を入れた時は、少し焦ったがまぁ楽しいからしょうがない。



 野菜は売れたけど、果物は売れてないのでエデルに提案する。

「この氷水のバケツ貸してあげるから、果物を入れて冷やしてみな。冷やしたのをカットして売れば儲かるかもよ」



 エデルもここが勝負だと分かったのだろう。

氷水にりんご、葡萄、チェリーや洋梨などを入れていく。



 ハリーには野菜スティックを、コーラの時に使ったプラスチックのカップに入れるよう指示出す。

まずはディップを入れて、その上に野菜を入れていく。

大根ときゅうりは四本、にんじんは二本であとはキャベツだ。

ディップは足りなくなると不満が出るので、多めに入れて良しと伝える。



 人手が足りないので、ソフィアとセバスチャンにも野菜詰めをお願いした。

お嬢様のソフィアに出来るかなと思ったが、積極的にボランティアをしていて炊き出しもやっているので問題ないよと言ってくれた。



 シスターは子供の世話で忙しそうだけど、ハリーと二人じゃちょっと厳しかった。

まぁお婆さんに子供の世話をお願いしたから、大丈夫でしょう。



 いつの間にか野菜スティックを待つお客さんが、列を作っている。

人通りの少ないところに列があるのだから、それを遠くから見たお客さんも集まってくる。



 野菜を詰め終わったので、今度はエデルの果物屋台を手伝う事にした銀次郎。

りんごや洋梨は一口大にカットして、板氷の上に果物を置いていく。

爪楊枝を刺してすぐに食べれる状態にする。

値段はわからないからエデルに任せる。

葡萄は一房で冷やしたのを置き、冷やした果物がすぐに食べれる状態にする。

しばらくすると野菜スティックは完売し、その列がエデルの屋台を囲んだ。

とにかく果物を冷やし、カットして氷の上に並べていく。



 野菜スティック用の野菜は全て売れ切れたが、スイカがまだあったのでお婆さんはそれを冷やして売り始めていた。

あっその塩は…… まぁいっか楽しいから。



 時間にすると忙しかったのは一時間くらいだったが、エデルの果物も全部売れ切れて、やっとこの忙しさから解放されたのだった。



 ちなみにゴミ拾いは孤児達が積極的にしてくれたので、後片付けは楽だった。

親方に作ってもらった大きなゴミ箱に入れてもらい、あとは銀次郎がアイテムボックスのゴミ箱機能で、中身のゴミを捨てれば良い。



 ソフィア達には、今度お礼をすると言って別れる。



お婆さんの分は、五十人分の野菜スティックを売ったから銅貨150枚だね。

他にも少し野菜を売ってたし、冷やしたスイカでの売り上げも多かったのでほくほく顔だ。



 果物屋台のエデルもやり切った顔をしている。

持ってきた果物が全て売れたのだから当然だろう。

しかもカットして売ったので、普通に売るよりも単価が高かった。



 二人から氷代を払うと言われたが、楽しかったし勉強になったから別にいいよと伝える。

お婆さんの息子さんが迎えにきたので、お婆さんと別れの挨拶をする。

息子さんは、野菜がほとんで売れていたのでびっくりしていたな。

お婆さんに明日も来るのか? と聞かれたのでまた来るよと伝える。



 果物屋のエデルに明日も来るのか聞いたら、今日だけの予定だったがすごく売れたので帰って明日も出店できるか聞いてみるとの事だった。



 大きなリヤカーに空になった木箱を乗せて、エデルも帰っていった。

小さい身体であんな大きなリヤカーを引いて行ったので、手伝うか聞いたが大丈夫ですと礼を言う。

エデルは立派だな。きっといい商人になるよ。

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