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異世界ネットショップマスター  作者: グランクリュ
第一章 夏祭り屋台編
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第二十七話 商業ギルドでの相談

「行ってきまーす」



 ハリーと一緒にモーニングをたべてから商業ギルドに向かう。

食堂では昨日の冒険者達がバツが悪そうにしていた。

今日は稼ぎに行くぞと張り切ってるが、かき氷エールを欲しがる冒険者もいた。

氷がないから作れないよと長男のルッツが断ると残念がっていた。



 街の中心にある立派な建物に辿り着いた二人。

受付カウンターを通り過ぎ、ミリアさんのいる専用カウンターへと向かう。



「ギンジローさん、ハリーさんおはようございます」



 我々を見つけると、わざわざ立って出迎えてくれたミリアさん。

そのままカウンタースペースではなく、個室へと案内してくれた。



「改めてご挨拶をさせていただきます。本日からギンジロー様の担当をさせていただきます、商業ギルドマインツ支部所属のミリアです。宜しくお願い致します」



 少し緊張した面持ちでお辞儀をするミリアさん。



「うん。こちらこそ宜しくお願いします。私が相談する立場なので、そんな固くならず昨日みたいに接してもらえたら嬉しいです」



 そう言って握手をする銀次郎。

流れでハリーも握手をしていたが顔が真っ赤だ。

銀次郎は、ハリーに二日も仕事を休ませてしまっている罪悪感があったが、好意を寄せている人と仲良くなれんなら良いかなと勝手に罪の意識を軽くさせていた。



 そんな事を考えながら椅子に座ると、女性スタッフが紅茶と羊羹を小さく切ったものを持ってきてくれた。

たぶん受付の子だと思うが、紅茶を持ってきてくれたお礼に、プレゼント品として購入していた金平糖を渡す。



「故郷のお菓子です。良かったらどうぞ」



 受付の子に中身を聞かれたので、砂糖で出来たお菓子ですと伝えると驚いていた。

もちろんミリアさんにも金平糖を渡す。



「開けても宜しいでしょうか?」



 ミリアさんが確認してきたのでどうぞと伝える。

受付の子も中身を確認している。



「綺麗ですね。まるでキラキラ輝くお星様みたいです」



 隣に座っているハリーは、うんうんと頷いている。

耳に髪をかけてから金平糖を一口食べ、嬉しそうにするミリアを見てハリーは幸せそうだ。

ちなみに受付の子はずっと金平糖を見ている。

良かったらたべて下さいと言うと、一粒口の中へ。

一気に幸せそうな顔になったので、プレゼントして良かったと思った。



 挨拶も終わったので、夏祭りの相談をする。



「確認ですが、夏祭りの屋台で何を売るのでしょうか?」



 屋台を出店するとは言ったが何をするかは伝えていなかった。

かき氷屋台をすると伝えるが、ミリアさんも受付の子もピンときていない。



「イメージが難しいかもしれないので、現物を見せますね」



 アイテムボックスからかき氷機を取り出し隣のテーブルに置く。

板氷をセットすると、ミリアさんがこの氷はハリーの魔法で作ったのか聞いてきた。



「僕は氷魔法を使えないので違いますよ」


 

「だとしたらこの氷は……」



 ネットショップで買った事は言えないので、魔法じゃなくスキルみたいなもんだけど説明が難しいやと誤魔化す。

ミリアさんも氷の事はこれ以上聞いてこなかった。



 ハリーに手伝ってもらい、かき氷を作っていく。

シャリシャリと氷が削れる音が部屋に響き渡る。



「この削った氷にシロップをかけてたべます。シロップはメロン、いちご、あとはブルーハワイを用意しました。お好みで練乳をかけて下さい。まずはお手本を見せますね」



 銀次郎が好きなかき氷はブルーハワイだ。

ブルーハワイって何味だ? と思ったが、よく分かんないのでそのまま進める。

練乳はもちろんマシマシだ。



「さぁ皆さんどうぞ」



 ミリアはメロンを選んだようだ。

練乳のことがよく分からないと言っていたので、甘くて美味しいよと伝える。

ハリーもミリアと同じメロンを選択。

受付の子はいちごを選ぶ。

それぞれ練乳もかけて準備できたのでスプーンを氷に入れる。



 暑い中でたべるかき氷は贅沢だな〜と考えていると、ミリアと受付の子の動きが止まる。

スプーンを持ったままの二人、大丈夫かなと思ったら動き出す。

スプーンでかきごおりをすくって一口。

一瞬止まった後、口が動き出す。

また止まって動き出すを繰り返す。

受付の女の子は練乳ゾーンで動きが完全に止まっている。



お互い無口で完食したので、ミリアさんの反応を待つ。



「ギンジローさん、これはいくらで売るつもりですか?」



 いくらで売るか決めていなかった。

地元の夏祭りでは、かき氷は2〜300円くらいだったので銅貨2枚か3枚を考えていると答える。



「えーっとギンジローさん。まずこの氷だけで銀貨…… いえ小金貨1枚でもおかしくないと思います。夏に氷なんて普通用意出来ません。更にこのシロップは甘くて香りも良い。これも下手したら小金貨1枚はするでしょう。そしてこのレンニューは、値段がつけられません。そのかき氷を、銅貨2枚か3枚で売るなんて信じられないです」



 ハリーを見ると頷いている。



「子供にもたべてもらいたいから、あまり値段を高くしちゃうとね」



 するとミリアさんは少し考えてから、銀次郎に商売をしたいのか?

それとも祭りで子供達に食べてもらいたいのか聞いてくる。



 まずは屋台をやって、異世界での商売を学ぼうとした。

でも夏祭りで屋台だと、子供の頃楽しかった思い出が蘇る。

ある程度お金を稼ぎたいけど、子供には楽しんでもらいたい。

そんな思いをミリアさんに伝える。



 ミリアさんは若いが、商業ギルドで自由に動くことを許されているエリートだ。

金儲けだけを考えたら、砂糖や氷を売るだけでも出来るがミリアさんは銀次郎の事を考えてくれる。



「かき氷ですが子供には無料で提供してみてはどうでしょうか? 銅貨2〜3枚での販売を考えるならいっそのこと無料の方が良いと思います。子供達にゴミをいくつか拾ってきたら無料にするとか、ボランティア活動の一環にしてみても良いかと思います」



 ふむふむ、なんだか面白そうだ。

大きな声じゃ言えないけど、かき氷の原価は安いしね。



「あとは屋台で商売を学ぶのでしたら、毎日開催されている朝市で屋台を出してはどうでしょうか? ただしレンニューは止めましょう。市場が荒れてしまいます」



 この人、市場が荒れるって言ったぞ。

ただ朝市も面白そうだ。



「最後に商業ギルドとしてのお願いですが、夏祭りの日はギルド入り口の庭でレンニュー入りのかき氷を作ってくれませんか? 庭はパレードの観覧席になっていて、ギルドの招待客やお得意さんが集まります。そこでかき氷を一杯小金貨1枚で販売し、手数料で一割を商業ギルドに収めていただきたいのです」



 まぁ確かにそうでもしないと商業ギルドの儲けもないし、ミリアさんの顔も立たない。

かき氷が小金貨1枚の1万円で売れるかどうか疑問だが、それで良いならと返事する。



 最後にミリアさんから、商業ギルド会員の証明となるギルド証を渡された。

まだ仮登録だが、これから商業ギルドでの実績を積めば正式な登録になるそうだ。

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