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異世界ネットショップマスター  作者: グランクリュ
第一章 夏祭り屋台編
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第二十三話 知らない天井

 喉の渇きを覚え目を覚ますと、そこには知らない天井があった、

隣を見ると髭を生やしたおっさんというか、親方が眠っている。

一瞬何が何だか分からず、飛び起きるとそこは工房の中だった。

物音に気づいたのか、奥の部屋からアントニオさんが様子を見に来た。



「昨日はご馳走様でした。お水持ってきたんで良かったらどうですか?」



 そう言って水の入ったコップを渡し、水差しをテーブルに置く。

銀次郎は水差しにあった水も全部飲み干し、落ち着いたので感謝の気持ちを伝える。

しかし状況は掴めていない銀次郎。



「あの〜どうしてここで寝ているのか分からないんですが、何かありましたでしょうか?」



 恐る恐るお弟子さんに聞く。

確かウイスキーを呑んで、かき氷をたべた記憶はあるが……



「ギンジローさんと親方はお酒を何杯も呑んで、かき氷機のことについて語っていました。途中で生ハムってやつですか? あれを出してみんなで食べたじゃないですか?」



 全く記憶のない銀次郎。

ただ工房にあるテーブルの上には空になった何本ものウイスキーボトルと、骨だけになった生ハムの原木が残っていた。



「生ハムゲーム楽しかったですね。この素晴らしいナイフが作れるように、頑張っていきます」



 笑顔で腰につけたナイフを見せてくるが、何を言っているのかさっぱり分からない。

詳しく聞くと銀次郎は酔っ払って、おつまみに生ハムの原木を出したらしい。

確かにこの世界に来て、お金に余裕ができたからネットショップで生ハムの原木を買っていた。

36ヶ月熟成のスペイン産で、お値段もそこそこしていたと思う。

生ハムの原木と一緒にナイフもついていたが、このナイフで一悶着あったらしい。



 ナイフの質は良いが、鍛治職人から見ると仕上げがイマイチで親方が刃を研ぎ切れ味鋭いナイフに仕上げた。

そして誰が一番上手く生ハムを切れるかゲームをしたらしい。

目の前にいるアントニオさんが一番になり、銀次郎がナイフをプレゼントしたそうだ。

全く記憶がないが、何だか慕ってくれているので悪い気はしない。



 その後はお弟子さん達は席を離れ、親方と銀次郎だけで呑み続けていたらしい。

結局最後は二人して床で雑魚寝の流れだ。



 アントニオさんは、散らかっているテーブルの上を掃除していく。

空のウイスキーボトルが欲しいと言われたので、アントニオさんに引き取ってもらった。

こんな透明なガラスは貴重ですよ、いいんですか?と何度も聞いてきたが、大丈夫ですと伝える。

アントニオさんに客間を案内されたが、また眠りにつく銀次郎だった。



●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●●



「おい、起きるんじゃ」



 聞き覚えのある声だ。

目を開けるとそこには親方が立っていた。



「お前さんに頼まれたかき氷機、修理しておいたぞい」



 寝起きで何を言っているのか分からない。

しばらく考えたが、そもそも昨日は記憶を無くしていた。

親方がそう言うんだからたぶん頼んだのだろう。

銀次郎はお酒が好きで、自分でも強い方だと思っていた。

人に迷惑をかけるのが嫌で、記憶が無くなるという事は今まで殆どなかったのだが……

みんなが好意的に接してくれているので、迷惑はかけてないと思うが、ここ最近続けて記憶を無くしているので反省する。



「修理代はいくらですか?」



 修理を依頼した記憶は無いが、刃の部分が新しくなっている。

結構かかるかもと思ったが親方は金などいらんと突っぱねた。

親方が一度言った事を取り下げるとも思えなかったので、銀次郎はお金の代わりにウイスキーを一本渡す。



「馬鹿もんが、これもらったら仕事が手につかんじゃろが」



 言葉では怒っていたが、親方が笑っていたので喜んでくれていると思う。



●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●●



「あらギンジローちゃん、心配してたのよ」



ハングリーベアーに帰ると、クラーラさんが昨日帰ってこなかった銀次郎を心配してくれていた。



「すみませんでした。昨日はハートマン親方の所でお酒を呑んで、そのまま泊まったので昼帰りです」



 ここでも反省する銀次郎。

ただ自分の事を心配してくれるクラーラさんに、ありがたみを感じる。



「クラーラさん、ちょっと試してもらいたい物があるんですけどお時間いいですか?」



 銀次郎は親方達に好評だったかき氷を、ハングリーベアーのみんなにも試してもらいたかった。

もしここでも好評なら、夏祭りの屋台にいいかなと。



 アイテムボックスから、親方に修理してもらったかき氷機と板氷やシロップなどを取り出す。

ハンツやフランツは興味津々に見ている。

長男のルッツは手伝うと言ってくれたので、ぐるぐる回して氷を削ってもらった。

親方が刃の部分を新しくしてくれたおかげで、ふわっふわに削られたかき氷が出来上がる。


 

「このシロップをかけてたべて下さい。好みで練乳もどうぞ。バーニーさんは蜂蜜が好きだから、そのまま蜂蜜をかけても美味しいですよ」



 バーニーさんとクラーラさんは蜂蜜をたっぷりかけてかき氷を食べる。

手伝ってくれたルッツは、みんなが美味しそうに食べている姿を見てから食べ始める。

ハンツとフランツは口の中が冷たいってはしゃいでた。



 お代わりは練乳をたっぷりかけたり、果物を乗せてみたりしてかき氷を楽しんだ。

氷があれば食堂でも出したいとルッツは言っていたが、夏場の氷は貴重なので諦める。

銀次郎は手応えを掴んだので、夏祭りには屋台でかき氷を出そうと決めたのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「全く記憶のない銀次郎。ただ工房にあるテーブルの上には空になった何本ものウイスキーボトルと、骨だけになった生ハムの原木が残っていた」 若返って、若いうちからアル中になっていきそうだね。
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