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異世界ネットショップマスター  作者: グランクリュ
第二章 ダンスホール編
205/207

第百八十七話 君の板チョコの様な腹筋を食べたい

「ダンスがキレてるよー」



「ターンがデカい!ドラゴンよりデカい!」



「その立ち姿は皇帝ベッケンバウアー三世を超えた!」



「いいよーいいよー、その笑顔女神様級!」



 現在予選の最終ラウンド二組目。

社交ダンスの発表会が始まった時には、どうやって楽しんだら良いか分からなかった観客も、今ではボディービルの大会かってぐらいに掛け声が飛んでいる。



「ギンジローさん少しお話が……」



 レイノルド助祭から声をかけられた銀次郎。

社交ダンスについて司祭達に説明をして欲しいとお願いされる。

説明って言われてもなぁ……

申し訳なさそうにしながらこちらを見つめるレイノルド助祭。



「先生のレイチェルさんは審査中なので、生徒の誰かに説明できるか聞いてみますね」



 少し待ってもらう様に伝え控え室に行く銀次郎。



「カールさんいいところに。教会の人達に社交ダンスの説明をして欲しいのですが、お願いしても良いですか?」



「教会の人達ってまさか……あの司祭様達?」



 カールさんが驚いて大声を出すと、心配して奥様のレーアさんが近づいてきた。



「どうしたの大声を出して?」



 心配するレーアさんに事情を説明する銀次郎。

レーアさんも驚いたが、司祭様に説明する機会なんて今後一生ないと思うからと快く引き受けてくれた。



「カールさん、レーアさん助かります。それでは一緒にいきましょうか」



カールご夫妻にお願いして、レイノルド助祭と教会関係者のいる席へ向かうのであった。



「ギンジローさん待ってました。あなたは先程踊っていた森の妖精さんですね。パートナーの方は……」



「私はカールと申します。妻は森の妖精……レーアです。大声で叫んでいた観客は私達の息子でして、ご迷惑を掛けて申し訳ございません」



 カールさんが謝るが、レイノルド助祭はご迷惑をお掛けするのは私の方ですと伝え、司祭達への説明を依頼する。



「森の妖精レーアさんと、パートナーのカールさんに来てもらいました」



 レイノルド助祭がカール夫妻を紹介すると、司祭達は大喜びだ。



「カール殿、我々も掛け声を掛けたいのですが、どうやれば良いかさっぱりわからなくて。是非我々に教えていただけませんか?」



「掛け声ですか……」



 困惑するカールさん。

この掛け声での応援は、銀次郎が咄嗟にやった行動だ。

初めて経験した事に関して教えて欲しいと言われても、カールさんは言葉が浮かばなかった。



「あのー。どの様な言葉でも声を掛けられたら嬉しいですよ。声援は聞こえますし、身体が疲れていても応援されたら頑張ろうって思えますので」



 カールさんに代わってレーアさんが説明をする。

頑張れー、いいぞー、ターンがサイコー。

まずはこの三つを声に出して応援してみましょうと司祭達に提案。



「そうですな。まずはやってみないと始まらない。私はあのお二人を応援します。同じ様な年齢なのにダンスを楽しんでいて羨ましい」



 ヴェルナー司祭は何名かと一緒に席を離れて、推しの近くへと行ってしまった。

当然直属の部下であるレイノルド助祭もついていった。



「あやつの行動力は羨ましいわい。残った我々は先生と一緒に応援しますか、ギンジロー殿」



 急に名前を呼ばれてびっくりしたが、この人は知っている。

目が悪くて一時期引退を考えていたエカード司祭だ。



「エカード司祭は誰を応援しますか?」



 銀次郎が聞くと、エカード司祭は派手なドレスを着た御婦人と、そのパートナーを応援すると言った。

確かあの女性は、パワーストーンを縫い付けたドレスをエルヴィスに依頼したマダムだ。



「他の御婦人が身につけているネックレスの石を、あの御婦人はドレスにつけておる。妙に惹かれるんじゃよあのドレスが」



 聖職者ってやっぱりパワーストーン的な物に惹かれるのかな?

見えないパワー的な物を感じる能力があるのかもしれない。



「ドレスにネックレスの石があるのよく分かりましたね」



「ほっほっほ。このメガネのおかげですぞ」



 エカード司祭は笑っているが、その存在感と見えないオーラに銀次郎は圧倒されるのであった。



●● ●● ●● ●● ●● ●● ●●



「声に出すと更に楽しいな」



 最終ラウンドの第三組のダンスが終わり、席に戻ってきたヴェルナー司祭達。

ちなみに会場内では、ブラボーの声が鳴り止まない。

銀次郎が、ダンスが終わったら「ブラボー」の言葉でみんなを讃えましょうとエカードさん達に提案した。



 故郷では立ち上がってブラボーと叫んで拍手で讃えるのが、最上級の賛辞だと何となくの知識で銀次郎が仕込んだ。

ダンスと演奏が終わると、銀次郎と教会のお偉いさんがブラボーと声を出して立ち上がり拍手。

シンプルで力強いブラボーの言葉を一人、また一人と真似して、ブラボーが広がり選手が退場するまで会場内にブラボーが鳴り響く。



「ブラボーは良い言葉ですね。ブラボー、ブラボー」



「そうですな。声援が伝わって良かった。あんな激しい踊りをすれば疲れるはずなのに、最後まで笑顔で踊っていて感動ですぞい」



「今日は良い日ですね。この様な機会を与えてくれた神に感謝致します」



 司祭達も楽しんでくれているみたいだ。

最終組が入場するまでの間にカール夫妻による社交ダンスの技術的な事や、この瞬間に褒めてもらったり応援してもらえると嬉しいポイントを説明。



 銀次郎もこの発表会の審査をレイチェルさんがやっているので、レイチェルさんにアピールする為にも大きな声を出した方が良いですと付け加える。



 最終ラウンド最終組のダンスも大きな声援と掛け声、そしてブラボーに包まれて大盛況で終わり、決勝戦へ進むペアを決める審査が始まるのであった。

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