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異世界ネットショップマスター  作者: グランクリュ
第二章 ダンスホール編
202/207

第百八十四話 前日

「ギンジローちゃんおはよー」



 いつもより少し遅めの時間に起きた銀次郎は、庭に出て井戸水を頭からかぶる。

だんだんと気温が落ち着いてきたな。

今は過ごしやすいが、マインツは雪が降ると聞いている。

冬になったらどのくらい雪が降るのだろうか?

そんなことを考えながら食堂に行くと、いつもとは少し違う景色が広がっていた。



「今日は女性のお客さんが多いですね」



 クラーラさんの笑顔に癒されながらも、この状況を確かめる。

食堂内には見たことのないご婦人グループが三組おり、それぞれ食事を楽しんでいた。



 あれはルッツと一緒に作ったジャムだな。

よく見ると黒パンにジャムを塗ってたべている。

なるほどね〜 だからいつもと違うお客さんが来てるんだな。



「ねぇルッツ。今日は俺もパンでジャムも貰おうかな。バターもね。あとせっかくだから紅茶も貰っちゃおーかなー」



 喫茶店をやっていた銀次郎の本能が、王道のモーニングセットを激しく求めた。

あっでも王道といったら、ゆでたまご必須か……いや目玉焼きダブルのベーコンか? 

ソーセージも捨てがたい。

でもソーセージならスクランブルエッグだな。

ケチャップたっぷりで…… ってまたケチャップか。



 なんだかネットショップでケチャップをお取り寄せするのは、負けな気がする。

オリバーの作るトマトソースもうまいけど、ケチャップではない。

ケチャップとトマトソースの違いが分からないが、手軽に自分自身の満足期待度を超えていくケチャップって、実は大物だったのかもしれない。

なくなって初めて気付くありがたさに、銀次郎の頭の中はケチャップでいっぱいになっていた。



「はいギンジローちゃんどうぞ〜 私たちもお腹へっちゃったから賄いをいただくわね」



 クラーラさんは厨房内で、トーストした食パンにイチゴジャムをたっぷりでガブリ。

全身でおいしいを表現している姿に、なんだかほっこりとする銀次郎。

ハンツとフランツもよい表情だ。



 ルッツはリンゴジャムか?

パンに少量のリンゴジャムをつけている。



「ルッツはリンゴジャム? 量少なくない?」



「ギンジローさん、このジャムの価値を分かっていませんね? ジャムは贅沢なんですから」



 ふーん、意外とルッツって倹約家だったんだ。

まだ子供なのに偉いなぁ。

そんなルッツを横目に、銀次郎とクラーラさん、ハンツとフランツはおかわりパンにジャムをたっぷりでガブリ。



 やっぱりジャムはたっぷりの方がおいしいよなー



「ルッツ悪いけど紅茶ももらえる?」



 口の中の幸せ甘さ成分を流そうと紅茶をお願いすると、カウンター席の後ろ側から鋭い視線をいくつも感じた。

もしこれが戦場だったら、後ろから斬られていただろう。

油断してた……

鋭い視線を送っていたのは、カウンター席に座るご婦人グループだ。



「ギンジローさん砂糖はいらないんですよね?」



「う? うん。ねぇルッツ。あちらのお客さん達も食後に紅茶?」



「違うよ。あの人たちは友達のお母さんと近所の人。ギンジローさんと一緒に作ったジャムをお裾分けしたら、お金を払ってでも食べたいって来てくれたよ」



 本当の大物はルッツだったか。

銀次郎は視線に耐えきれなくなり、ご婦人達に一緒に紅茶を飲みませんか? と声を掛ける。



「あら? 紅茶なんて素敵ね。あなたはどうする?」



 ご婦人グループ達で話し合いの末、全員紅茶を注文。

ハングリーベアーの紅茶は銀次郎が譲ってるものだ。

今まで紅茶の販売もしていなかったので、今日の所は試飲としてサービスになった。



「紅茶なんていつ以来かしら?」



「えっ、お砂糖まで付いてくるの?」



「贅沢だわ〜」



「ウチの旦那が、いつも果実水のお店に仕事をサボって行くのよ。もしここで毎日紅茶が飲めるのなら、私も息抜きが出来るのに」



「そうなの? ウチの旦那も仕事をサボってばかりで仕方がないのよ。困った人だわ〜」



「ルッツくんありがとねー。こんな優しい子が、うちの娘と結婚してくれたら、おばさん幸せになれそうだわ」



「明日も来て良いかしら? 旦那を送り出したらこの時間自由に出来るし」



「そうね。そうしましょ」



 ご婦人グループはそれぞれ紅茶を楽しみ、満足な顔でハングリーベアーを出て行った。



「食事の話と、旦那さんの悪口が止まらなかったね」



 今の時間は、二つ目の鐘がそろそろ鳴る頃だから正午前だ。

ハンツとフランツはお昼寝に。

クラーラさんは空き部屋の清掃へ。

バーニーさんは夜の仕込みで、ルッツは食器洗って食堂内の清掃をしている。



「みんな楽しそうでしたね。ギンジローさんまた一緒にジャム作りましょうよ。そろそろなくなっちゃうので」



 ルッツからの申し出に、少し考える銀次郎。



「ルッツ、内職しない? 材料はこっちで用意するからジャムを作ってよ。報酬はジャムの現物支給で」



 ルッツからOKを貰ったので、砂糖と念の為紅茶セットを渡しておく。

果物はエデルに伝えておくので、明日の朝受け取ってもらう事に。



「それじゃぁルッツよろしくね〜」



 手を振って別れた銀次郎は、大聖堂に行ってエデルに果物の注文をする。

明日は社交ダンスの発表会もあるから、大量に果物を仕入れる事になるけど頑張って。

ハリーもいるから大丈夫だろう。

レイノルド助祭に挨拶をして、野菜屋台のお婆さんのところに向かう。



 明日のパーティーでは、またあの野菜スティックを作ってもらう。

お婆さんは稼ぐぞといっていたが、屋台販売はしないですからね。

明日はマインツ家の方が迎えに来るので、採れたて野菜で作る野菜スティック期待してますね。



 その後はレイチェルさんと会って明日の荷物を受け取り、親方の工房へ向かった。

実はエミリアから社交ダンスの発表会に招待した方が良いと、怒られたんだよね。

パーティーでお酒が呑めますよって伝えたけど、発表会から参加するらしい。

親方ダンスに興味あるのかな?

大聖堂前から無料馬車が出てるから、お弟子さんと一緒に来てくださいね。



 商業ギルドに行って、明日はよろしくお願いしますの付け届けをして最後はマニーさんとエルヴィスと合流。

かるく一杯のつもりが結構呑んだな〜。

明日は楽しい一日になりますように。

おやすみなさい。

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