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異世界ネットショップマスター  作者: グランクリュ
第二章 ダンスホール編
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第百七十七話 異世界に日本人はいませんでした

「依頼されてた煌めくマスカットです。ギンジローさんは運が良いですよ。今日のは艶があって香りも強いですから」



 エデルの笑顔に朝から癒される銀次郎。

仕入れ代金の他に、いちごみるくの飴をチップがわりに渡すとめちゃくちゃ喜んでくれた。

いや〜本当に癒されるわ〜



「ギンジローちゃん美味しそうね。一粒食べてもいい?」



「一粒とは言わず何粒でもどうぞ」



 クラーラさんは本当に? と言いながら煌めくマスカットを一粒、また一粒と口の中に入れていく。



「はぁ〜美味しい」



 クラーラさんの笑顔にも癒された銀次郎。

良い笑顔が見れましたのでと、そのまま煌めくマスカットを一房プレゼント。

今日のモーニングハンバーグの付け合わせが一品多かったのは、きっと煌めくマスカットのおかげだと思う。

楽しいモーニングが終わり、ハリーとエデルは大聖堂の納品へ。



「久しぶりに厨房をお借りしてもいいですか?」



「ギンジローちゃん、そんなの聞かなくても大丈夫よ。いつでも好きに使って良いから」



 バーニーさんも大丈夫だと言ってくれたが、親しき仲にも礼儀ありだ。

場所代としてハチミツのボトルを渡す。



「ギンジローさん見ててもいい?」



「ん? それなら一緒に作ろうよ。簡単だけどたくさん作っておきたいから、手伝ってくれると嬉しいな」



 ルッツと一緒にクッキング開始だ。



「それじゃルッツ、今日は甘いもんを作るからまずは井戸水を一緒に汲んでこよう」



 手をしっかりと洗い、念の為クリーンの魔法も使う。



「今日作るのは手作りジャム。まずは湯を沸かしてこのガラス瓶の容器を消毒するよ。クリーンの魔法でもいいのかもしれないけど、いつもこの方法だから」



 沸騰した大鍋にガラス瓶の容器を入れて、煮沸消毒をして清潔な布の上に置いていく。

容器の準備は整ったので、ジャム作りを進めていく。

煌めくマスカットは皮とタネを取り、半分にカット。

イチゴはヘタを取って半分にして、リンゴと梨は皮と芯を外して小さく切る。



「ルッツやるなぁ。その包丁でそれだけ出来るなら、これ使ってみなよ」



 銀次郎はデパートの実演販売で衝動買いしたペティナイフをルッツに渡す。



「有名なパティシエが監修していて、しかも実演販売の人に、今買えばもう一本おまけって言われたから買ったんだ」



 あれは良い買い物をしたと思い出す銀次郎。

ただ同じペティナイフが二本あっても使っていなかったので、手伝ってくれているお礼にルッツに渡す。

パティシエってなに? 実演販売ってなに? って聞かれたので、あの時の感動を思い出しながら説明した。



「……まだまだ語れるけど止まんなくなっちゃうから、ジャム作りに戻るね。まずはイチゴ。鍋にイチゴを入れてその上に砂糖をガバッとかけて」



「砂糖って高いんだよ。大丈夫?」



 ルッツはチラチラとこっちを見ながら、砂糖をひとつまみだけ入れる。

 


「もっと砂糖を入れて。おいしいジャムを作るのには砂糖にビビっちゃ(量・カロリー)いけないんだ」



「ビビっちゃいけないって(金額・価値)言われても、こんなの誰でもビビっちゃうよ」



 銀次郎はイチゴが半分隠れるぐらい入れてとルッツに伝える。



「イチゴはこの状態で少し置いといて、次は煌めくマスカットも同じ様にお願いね」



 ルッツからの視線を感じるが、それをスルーして銀次郎はレモンを絞ってレモン汁を用意しておく。



「ルッツありがとう。次はリンゴと梨のジャムを作るよ〜」



 それぞれの鍋にリンゴと梨を入れ、砂糖と先ほど作ったレモン汁を投入。

そして弱火で煮詰めていくと、いい感じでリンゴと梨のジャムが完成したのだった。



「ほーい」



 銀次郎はスプーンに乗せたリンゴジャムを、ルッツの口元に持っていく。



「あふっ、ングゥ、もぐぅっ」



 スプーンで冷ましたつもりだったけど熱かったかな?

心配してルッツを見つめる銀次郎だが、ルッツは目を輝かせる。



「今まで生きてきた中で一番美味しい」



 ルッツさんよ、あなたはまだ子供でしょ。

心の中でツッコミながらも、おいしいと言ってくれて嬉しかった銀次郎。

リンゴと梨のジャムの瓶詰めを行い、次はイチゴと煌めくマスカットのジャムを作る。

こっちは砂糖で漬けて放置していたので、果汁が出てきていた。



「弱火で焦がさない様にゆっくり煮込んで、トロトロになったら火から外してレモン汁を入れていくよ〜」



 弱火とはいえ厨房に立つと汗が出るほど暑い。

しっかりと水分補給をしながら、銀次郎とルッツは夕方までジャム作りを繰り返すのであった。



●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●●



「ギンジローさんお時間宜しいですか?」



 ハングリーベアーに訪れたのは、赤くて細長いフレームの眼鏡をかけたレイノルド助祭だ。



「ルッツにはジャムを二瓶ずつあげるよ。食パンとクラッカーも渡すね。また一緒に作ろうな」



 約束のグータッチをして、レイノルド助祭の馬車に乗せてもらう。



「申し訳ないんですけど、これを配ってから大聖堂に行ってもいいですか?」



 レイノルド助祭にお願いして、明日オープンのヴェリーヌさんのお店へ。

明日のグランドオープンは手伝う事を伝えて、次はカールさんの商会とユルゲンさんの家へ。

最後に商業ギルドに寄って、ミリアに説明会の打ち合わせを立ち会ってもらう。



「それでは始めましょう」



 眼鏡をクイっとして説明会の打ち合わせを進めるレイノルド助祭。

もちろんヴェルナー司祭も同席している。

説明会に参加する孤児達は三十名を超える事になりそうだと。



「思ったより集まりそうですね」



 こっちとしては人数が集まる事は歓迎だ。

養鶏場の他にも牛や豚も育てたいし、チーズや生クリームも作っていきたい。

仕事ならいくらでもあるし、生活も保障する。

家に関してはこれから建てていくので、しばらくは今の家か宿に住んでもらう事にした。

新しい家に引っ越すまでの生活費は、全てこっちで保障する。



「どう思う?」



 同席してくれたミリアに聞く。



「説明会ではどれだけの方が、独立して商会立ち上げを考えているのか確認して下さい。これだけの人数がいるのであれば、養鶏場なのか、牛や豚、チーズ等の生産品で独立を目指すのか確認しておいた方が良いと思います」



 最初は養鶏場で働いてもらい、身体が不自由な元冒険家の孤児達には、警備や配送の手伝いをしてもらおうと思っていたけど、人数が集まるのなら他にやりたい事も最初から始めた方が良い。



「畜産業に詳しい人を紹介って出来る?」



「はい。おそらく大丈夫かと。説明会に参加してもらっても大丈夫ですか?」



 もちろん大丈夫だと伝える銀次郎。

元冒険者の孤児達には、警備や配送関係をお願いしよう。



「希望者の中で、読み書きなどを教えられる方っていますかね?」



 家族の子供達が学べる場を作りたい銀次郎。



「孤児院で読み書きは習うので教える事の出来る者はいます。ですがこの件に関してご相談をさせてもらっても良いでしょうか?」



 レイノルド助祭は、多くの孤児達が集まるのであれば教会が必要だと。

そして教会を建てる許可を得れるのであれば、教会で読み書きを教えると申し出た。



「えっ? 教会を建ててくれるんですか? それならマインツ家で教会を建てる費用を出させてもらいますし、運営の為の寄付もさせて下さい」



 すると今まで黙って聞いていたヴェルナー司祭が、素晴らしいと拍手。



「だが教会を建てる費用はこちらで出させてもらいたい。生活や仕事に困っている孤児に、手を差し伸べてくれたのは貴方だ。教会としても貴方の行動に協力させてもらいたいと思う」



 立ち上がりこちらに歩み寄るヴェルナー司祭。

銀次郎も立ち上がり、差し出された右手を両手で包み込み感謝を伝えるのであった。

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