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異世界ネットショップマスター  作者: グランクリュ
第二章 ダンスホール編
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第百六十七話 ヨーグルトメーカー

「この線の所までお湯を入れれば、あとは待つだけですね」



 親方に作ってもらった魔道具の報告をしに、マインツ家に訪れた銀次郎。

エルザさんは来客中ということで、厨房でコーヒーを飲みながら待とうとしたのだが……



「オリバー、目の下にクマができてるけど大丈夫?」



「あぁ大丈夫だ……と言いたい所だが、少し寝不足でな」



 話を聞いてみると、ヨーグルトを作るのに徹夜をしているとの事だった。

確かに発酵させるには温度を一定に保たなくてはいけないが、人肌よりちょい高めの温度ならヨーグルトは出来る。

一度席を外し、人目のつかない所で電気を使わないヨーグルトメーカーをネットショップで購入してオリバーに渡しておいた。



「こちらへどうぞ」



 エルザさんの書斎に通されると、机には書類の山が出来ていた。



「相変わらず忙しそうですね。私に手伝える事があったら、何でもおっしゃってくださいね」



「そうね……書類の大半はミスリル関係の陳情や要望なのよね。政治的な話も絡むから慎重に対応しているけど、あなたが関係する事は手伝って頂こうかしら」



 エルザさんは眼鏡を取り出して、山積みの書類をいくつか取り出す。



「まずこれマインツハンバーグ関係ね」



 内容はとある貴族と王都の商会から、マインツハンバーグのレシピを買いたいといった手紙。

マインツ家の料理人には陰で引き抜きの話があったが、料理人は一枚岩で結束が硬いので誘いには乗らなかった。



「ハンバーグ自体は簡単に作れるものですし、そこは隠さなくても良いと思いますよ。貴族や商会が動いているなら、街の食堂で情報は仕入れてると思いますし」



 エルザさんは黙って頷き虎の目になる。



「ただし、前にも言いましたがマインツソースのレシピだけは絶対に秘密にしましょう。トマト煮込みハンバーグはどこでもたべれても、マインツハンバーグだけはマインツでしかたべれない。付加価値をつけて、マインツの街に来てもらい、お金をたくさん落としてもらいましょう」



 改めてハンバーグでの街おこしの話をして、エルザさんに納得してもらう。

実際にマインツの夏祭り後も観光客が増えているらしく、街おこしは効果を見せ始めているようだ。


 

「これは王都の冒険者ギルドから」



 マインツに住む人間国宝のハートマン親方に、武器や防具を作って貰えるように、お口添えをしてもらえないかと言った内容だ。

有名な冒険者達がこぞって依頼をしているのだが、親方は気に入った仕事しか受けない。

しかしどこで話を聞いたか分からないが、マインツ伯爵家とハートマン親方が懇意にしているらしいと王都で噂になり、王都の冒険者ギルドから非公式に話が来ているそうだ。



「これはマインツ家との関わりではないのにね。この話はギンジローさんあなたが決めて」



 エルザさんに言われても、王都の冒険者ギルドなんて知らないし、親方には他の事でお願いしたい事がたくさんある。

当たり障りなく断っておいて下さいと伝えると、エルザさんは羊皮紙に、マインツ家とは関係ないので直接はハートマンさんに依頼をして下さいと返答文を書いた。




「これもね。周辺の街と村から養鶏場について問い合わせが来ているわ」



 銀次郎が今進めている、養鶏場やブランド牛とブランド豚等の畜産業の事だ。

これに関しては孤児達の新たな仕事として、社会貢献活動の一環でもあるのだが、あまりにも条件が良いので問い合わせが来ているそうだ。



「教会に相談して、孤児達を援助し自立を促す社会貢献活動として考えていましたが、他の方も希望するのであれば一度検討したいと思います」



 銀次郎は羊皮紙を受け取り、アイテムボックスにしまう。



「後はさっきまでいた商会の話ね」



 エルザさんの友人であるアデルハイトさんが、お抱えの商会を切って別の商会を懇意にし始めたので、なんとか取引を戻して貰えるように話をしてくれないかと言った内容だった。



「なんで私に?」



 エルザさんが銀次郎に話をする理由がわからなかったので聞くと、この国一番の商会であるシュミット商会の商会長がエルザさんに相談をしに来たそうだ。

ある物を持って。



「これって砂糖菓子の入れ物よね」



 テーブルに置かれた小さなガラス瓶は、銀次郎がよく仕入れる銅貨8枚の金平糖の入れ物だった。



「これは空になった金平糖の入れ物ですね」



 銀次郎は思い出した。

ハリーにお願いして金平糖を王都の商会に持ち込み、反応を確かめた事を。



「アデルハイトは王都では美食家として有名なの。カールハインツ商会の商会長がコンペートーを仕入れて持ってきた事で、あなたと関係があると思ったんでしょ。他の商会の仕入れを減らして、この商会から殆ど仕入れるようにしたらしいのよ」



 それだけでと思ったが、詳しく話を聞くとアデルハイトさんは独自に情報をつかんでおり、値段を吹っかけて商売を続ける商会より、誠実で値段は通常価格で、質も変わらないこのカールハインツ商会を贔屓にする事を選んだそうだ。



「この透明なガラスの入れ物を作るのは、人間国宝のハートマンさんだけだと考えて調べたら、やはりマインツで出回っていた。私とアデルハイトが親しいのは知っていたから、何かしらあると見てマインツまで来たみたいなのよね」



 エルザさんはそんなの知らないと言ったが、商会にも面子があるので、ミスリルを高く購入するので話をしてほしいと食い下がったそうだ。



「まぁそんなのはどうって事ないけど、アデルハイトとソフィアからの手紙よ」



 エルザさんは、白い便箋をテーブルに置く。

これは銀次郎がソフィアに用意したものであり、一通はマインツ家の紋章が。

もう一通は一頭の跳ね馬のデザインで封印されていた。



 ドラマで見た事はあるけど、実際に受け取ってみると少しビビる。

セバスチャンが気を利かせてナイフを渡してくれたが、上手く切る事ができない。

危なっかしい手つきを見て、エルザさんが手紙を開けてくれた。



 ソフィアの手紙には、王都で元気にやっている事。

はやく銀次郎に逢いたいと、短い文章ではあったが純粋な思いが書かれており、それだけで幸せな気分になった。



 アデルハイトさんからの手紙には赤と白の化粧品SKーⅦが気に入ったから、王都に来る時は持って来て欲しい。

エルザがガイショーの事を自慢するから、うちでもガイショーをやって。

あとソフィアちゃんは何も言っていないみたいだけど、手紙は男性から書くものよ。

ソフィアちゃんはモテるんだから、早く王都に来た方が良いとアドバイスが書かれていた。



「なんて書いてあったの?」



「アデルハイトさんは、私がお詫びに贈ったアデルハイトさんに合う化粧品が気に入った事。エルザさんが自慢するから、アデルハイトさんもガイショーをして欲しいって書かれていました。ソフィアは会いたいって」



 今まで手紙を書いていなかった事を伝えると、男性はマメじゃないと振られちゃうわよ。

あの子意外と怒らせると怖いわよ〜と、エルザさんに脅されたが、よく考えたらソフィアはエルザさんの子だ。

肝に銘じておこう……

日本勝ちましたね。感動しちゃいました。

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