閑話 エルザ様
「どうしたの?」
メイド長のコーエンを見た時、思わず声が出てしまった。
だって急に若返っているんだもん。
お肌は艶々で思わず触っちゃった。
話を聞けば、娘のソフィアから『化粧品』をプレゼントしてもらったって。
あの娘何も言っていなかったけど、私には無いのかしら?
奥様、手を離して下さいってコーエンが必死だ。
別に奪おうとしている訳じゃないのに。
「あらセバスチャン慌ててどうしたの? えっ娘からのプレゼント?」
コーエンにお願いして、基礎化粧品と言うものを使ってみる。
何なのコレ。私のほっぺじゃないみたい。
珍しいわね、あの娘が親しくする男性なんて。
王都の学校では第三王子にアプローチをかけられてるって聞いたけど、あの娘全く興味がないみたいで。
まぁ第三王子は彼女の子供じゃないし、女癖が悪いって噂も聞くしね。
「ねぇセバスチャン。そのギンジローさんって方に一度お会いしたいわ」
黒目黒髪は珍しいけど、意外と普通なのね。
マインツ伯爵家と繋がりを持とうと必死になってくる人も多いのに、目の前の男性からは何の欲も感じない。
むしろ逃げようとしている?
何だか可愛いわね。息子二人はパパの補佐をしっかりやっているけど、全然構ってくれないんだもん。
孫達は可愛いけど。
ギンジローさんの反応を見てると、手に取る様に分かって楽しいわ。
化粧品の研究は、コーエンに頑張ってもらうとして、私もお仕事をしなきゃね。
この化粧品が世に出たら、きっと暴動が起きるわ。
まずは彼女に会って話をしないと……
「コーエン手伝ってくれるかしら? ギンジローさんからもらったシャンプーを試してみるから」
あなたが席を外した時、ギンジローさんに聞いてコーエンの分も貰ったのよ。
え? よくもう一つ貰えましたねって。
あの人の顔を見ればわかるじゃない。
この人まだ持ってるなって。