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異世界ネットショップマスター  作者: グランクリュ
第二章 ダンスホール編
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第百六十二話 整う

 銀次郎は無類のお風呂好きだ。

日本にいた時は週に一度のスーパー銭湯が何よりの楽しみだった。

ジャグジーから始まり、炭酸水の湯で毛細血管を活発にさせてから、檜風呂で殿様気分を味わう。

この三つの風呂で合格点まで気持ちを高める事はできるが、会員様価格千二百円を払ってスーパー銭湯に来たからには、百点満点を狙っていきたい。



 一口水を含んだ後、重厚感のある木の扉を開け大人の楽園へ。

自分を追い詰める為にあえて一番奥に腰を落とし、膝に肘を乗せて前屈みになり手を前で組む。

頭の中はできるだけ空っぽの状態に。




(他のお客さんが入ってきた)


(秒針がゆっくり進むな)


(運動不足で少し肉がついてきたかな)




 最初は雑念が頭の中に入ってきたが、何度か繰り返すと空っぽの状態が長く続く。



(今回はいい感じだったな)



 前で組んでいる手に意識を移すと、汗が指先から床にぽとりと落ちる。

しばらく経ってまたぽとり。そしてぽとり。

五回目のぽとりを確認したら、それは心と身体が整っているのサイン。



 部屋を出てかけ湯でかるく汗を流す、ありのまま、なすがまま。

身構えたり抵抗するのではなく、そのままの流れで水風呂へ入る事ができたら百点満点だ。



●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●●



 会員様価格千二百円のスーパー銭湯を思い出しながら、マインツ家の従業員お風呂を満喫した銀次郎をセバスチャンが出迎える。



「ギンジロー様ゆっくりされていましたね。エルザ様はまだ時間がかかりますので、その間コーヒーを飲みませんか?」



 コーヒーを誘ってくれたが、今は火照った身体を甘やかしてあげたい。

厨房に行ってセバスチャンはコーヒー、銀次郎はバニラのアイスクリームを堪能。



「冒険者向けのハンバーグを作ったから試してくれねえか?」



「冒険者向け?」



 オリバーは街の食堂から、冒険者向けのボリューム感あるハンバーグを作ってくれないかと相談されたそうだ。



 皿の上には二人前、いや三人前はあろうボリュームのハンバーグ。

合い挽きではなく牛肉だけで作っており、汗をかく冒険者向けに塩を多めに使っているそうだ。

銀次郎がハンバーグにナイフを入れると、中から肉汁がジュワッと溢れ出す。



「前に坊主が言ってたろ? 脂身を入れると肉汁が溢れるって」



 ボリュームのあるハンバーグは火の入れ方が難しいが、オリバーが焼き上げたハンバーグはどこを切り取ってもうまい。

肉の暴力とも言えるオリバーのハンバーグ。

見た目のインパクトもあり、冒険者ならたまらない一品になるだろう。

このクオリティで提供できるのなら……



「オリバー正直にうまいよ。このハンバーグなら冒険者達に人気になる事間違いなしだと思う。ただね。オリバーが作るからうまいんであって、街の食堂でこの絶妙な焼き加減にするのは難しいんじゃないですか?」



「それなら熱々の鉄板で出すか。好みの焼き加減に調整出来るからな」



 悪くない考えだと思う。

最後にお客さんが鉄板で焼き加減を調整すれば、自分が作った感が生まれて満足感が出る。

人は面白いもので、自分好みで仕上げる事が出来れば、それが脳内でおいしいに変換されていくのだ。

それにハンバーグで街起こしをする為に、マインツ家から食堂に塩が提供されている。

塩分が少し強めのハンバーグってだけでも、人気が出るのかもしれない。

それにエールとワインも良く売れそうだ。



「冒険者向けならあまり気にしないと思うけど、油はね防止用のこの木を削ったやつ渡しておきますね。演出用としても使えますし、もし気に入ったら安く売りますよって言っといて下さい」



 銀次郎とオリバーや他の料理人達で冒険者用のハンバーグを試食していると、賄いを取りにきたメイドさんが話しかけてくる。



「ギンジロー様申し訳ございません。メイド長からガイショーとなるものが開催されると聞いたのですが、いつ実施されるのか教えてもらえませんか?」



 すると他のメイドも集まってきて外商を催促される。

若い料理人達も特別給金で買い物をしたいと申し出てきた。



「この後エルザさんに会うから、そこで日程は決めさせてもらいますね。どんなものが欲しいか教えてもらえますか?」



 メイドさん達は靴を希望する人が多かった。

メイド長のコーエンさんがブランドの靴を大事にしており、自分も良い靴を手に入れたいと。

他にはソフィア専属メイドのアメリーが好きだったイチゴミルクの飴玉。

銀次郎がたまに袋であげていた物だが、みんなで分けてたべていたそうだ。



「飴くらいならあげますよ。安いものですし」



「あんなに甘くて美味しい飴が安く手に入るのですか?」



 一袋銅貨2枚くらいだと教えると、是非買いたいと圧強めでお願いされる銀次郎。

銅貨2枚なら個人で買って独り占めしたい。

貰えるのは嬉しいが、みんなで分けたらあっという間になくなってしまう。

それであればお金を払って買いたいのだそうだ。



 その他にはパウンドケーキも人気だった。

日持ちもするので両親に贈りたいと、泣かせてくれるじゃないですか。

銀次郎がマインツ家に提供している紅茶の要望も多い。

後はマインツ家の従業員お風呂で使っているシャンプーとコンデショナー。



 料理人達は海の食材を買って、料理の勉強をしたいと申し出る。

海の食材か〜

キーランドさんとローザちゃんが、故郷の港町に新婚旅行がてら買付に行く話があるので、それを使ったら良いのではないかな?

そういや話が止まっていたから、この話も進めないとな。



「セバスチャンは欲しい物とかないの?」



「私はコーヒー豆ですかね」



 安定のセバスチャンだけど、コーヒー豆が足りないならあげるから。

いつもお世話になってるし、前に渡したコーヒー豆がなくなったのなら言ってよー。



 そんな話をしているとメイド長のコーエンさんが厨房にやってきて、エルザさんのお客さんが帰った事を知らせてくれたのであった。

スーパー銭湯の話を書き始めたら温泉に行きたくなってしまい、今週三回も行ってしまいました。

ちなみに温泉と言っても旅行とかではなく、近所の銭湯みたいな温泉ですよ。

三百円台で入れる温泉でお肌ツルツル系です。


私は転勤が多いので各地の温泉に入ってきましたが、この温泉だけは別格です。

しかもそれが三百円台で入れるなんて、嘘でしょ?って感じでした。

都内に住んで居た時には味わえなかった贅沢を、今日も今から行ってきますね。

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