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異世界ネットショップマスター  作者: グランクリュ
第二章 ダンスホール編
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第百四十六話 アイドルは恋愛禁止です

「この間は来てくれなかったのに突然今日来るなんて。でも嬉しい。クーノさんにもらったドレスに着替えますね」



 この間? ドレス?

聞くのは野暮な事だと分かってはいるが、気になって仕方がない銀次郎。

小悪魔の様な笑顔を魅せたリンダちゃんは、クーノさんに腕を絡ませながらいちばん奥にあるVIP席へと案内する。



「今日はお二人なのですね。リンダちゃんがクーノ様に会いたいと言っていましたので、お店に来てくれて良かったです」



 魔性の魅力を持つマリアさんはクーノさんに深いお辞儀をした後、銀次郎の隣に座る。

近いなー、そして何だか良い匂いがするなー。



「マリアのネックレスって流行っているの? ウチにダンスの練習に来ていたマダムたちが同じ様なのしていたけど」



 クーノさんは知らないが、それはエルヴィスがマリアさんに贈ったパワーストーンのネックレスだ。

マリアさんが疑わないようにエルヴィスのフォローをしないと。



「それは私の友人とドレスの展示会を開いて、その時のお客さんにプレゼントした手作りのネックレスなんです。マリアさんの石はクンツァイトなので、無条件の愛、真実の愛へと導く石ですね」



 銀次郎はフォローしたつもりだったのだが、マリアさんに自分が贈った物だと勘違いされてしまった。



「石にそんな意味があるんだ。ギンジロー君もやるねぇ」



「ち、違いますよ。私が贈ったのではないですからね」



 クーノさんは内緒にしておくから大丈夫だよと、優しい笑顔を見せる。



「そんな意味があるのね。嬉しい」



 マリアさんも勘違いさせる様なこと言わないで下さいよ。

友人をフォローしようとして変な感じになっちゃった銀次郎だった。



「リンダちゃんが戻ってきたら、あの甘口のワインとフルーツの盛り合わせをもらおうかな。ギンジロー君はどうする?」



「では同じものを」



 支配人さんがVIP席にサングリアとフルーツの盛り合わせを持ってくると、リンダちゃんがピンク色の派手なドレスに着替えて戻ってきた。



「リンダちゃん可愛いね。リンダちゃんの好きなこのワインとフルーツの盛り合わせを頼んでおいたから乾杯しよう」



「リンダ嬉しい。クーノさん大好き。プロージット」



 リンダちゃんはマニーさんのお気に入りだが、マニーさんには見せない笑顔を見てなんとも言えない気持ちになる銀次郎。

女の子は仕事で、男は擬似恋愛を楽しむ場なのかもしれないが、この様な場に不慣れな銀次郎はサングリアをグイッと呑み干し、その事を考えない様にする。



「リンダ最近、歌とダンスを練習してるの。いつかクーノさんに見せてあげるね」



 リンダちゃんはクーノさんの腕を絡ませて、頭を胸に預けながらこっちを見てウインクをする。

マニーさんの事は黙ってての合図なんだろう。



「初耳だね。なんで歌とダンスを練習しているの?」



「歌とダンスでみんなを元気にするアイドルになるの」



「アイドル?」



 クーノさんがアイドルについて聞くと、リンダちゃんから説明を求められる銀次郎。



「えーっとですね。アイドルは友達以上恋人未満の女の子みたいなものです。劇場でアイドルのグループが歌って踊り、お客さんがそれを楽しむ。そんな事をやろうとしています」



「ダンスって一緒に踊るの?」



「お客さんと一緒にダンスをする事はありません。アイドルは舞台で歌って踊り、お客さんは客席でそれを応援します」



「応援?」



「そう、応援ですね。例えば掛け声をかけたり、一緒に歌ったりしてアイドルを応援します。アイドルの子とは恋愛は出来ませんが、応援という形でアイドルと関わりを持つ形です」



「恋愛は出来ないのに、応援なんてするのかな?」



「それは大丈夫ですね。アイドルは恋愛禁止なので、他の男の影が見えなければファンは応援してくれます」



 一応リンダちゃんにはジャブを打ちつつ、クーノさんにアイドルの説明をした銀次郎。



「ギンジロー君はいろんな事をやってるね」



 クーノさんは感心するが、銀次郎がアイドルを作ろうとしている訳でなく、プロデューサーがいる事を伝える。



「そのプロデューサー? ってのがギンジロー君の友人でその人がアイドルを作るんだ。まだリンダちゃん一人しかいないって言うけど、ボクからしたらよくリンダちゃんを見つけたね。見る目あるよその人は」



 プロデューサーはスケベオヤジで、リンダちゃんの事を気に入ってるだけなんですがね。

そもそも恋愛禁止ってマニーさんが守らないと、アイドル計画そのものが破綻するかもな。

そんな事を考えていると、クーノさんがプロデューサーに会わせて欲しいと申し出てきた。



「いやぁどうですかねー。会うのはちょっと……」



 ちらっとリンダちゃんを見る銀次郎。



「演奏活動やレッスンで忙しそうだから会うのは難しいかも」



 リンダちゃんの苦し紛れの右フックがクーノさんに当たる。



「そっかー。ボクも王都に戻るから手伝う事は出来ないけど、応援という形でお金を出しても良いかな? 劇場を作るのにもお金はかかるでしょ」



 クーノさんのスケールがでかい。

アイドルの劇場はいつか作りたいけど、小さな劇場を借りて始める事を伝える。



「いいよ。劇場作っちゃおうよ。そっちの方が面白そうだし」



 リンダちゃんの前で見栄を張っているとかそんなのではなく、クーノさんは純粋に面白そうだからお金を出してくれるみたいだ。

レッスン料や衣装代、グッズ作成費用などもあるから、相当お金がかかりますよと話すが、後はヨロシク〜と軽く流されてしまった。

結局お金は出資という形にして、利益が出たらちゃんと還元していく事を約束する。



「リンダ楽しくなってきちゃった〜」



「ボクもだよ〜リンダちゃん」



「恋愛は禁止ですからね」



 銀次郎は自分の事ではないが、秘密がまた増えたなと嘆きつつ、マリアさんに注がれたサングリアを再び呑み干すのであった。

いつも誤字脱字報告ありがとうございます。

ものすごく助けられています。


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